「フリースタイルの楽しさは何ですか?」。「フリースタイルに人生を懸けている」ような、フリースタイラーたちに問いかけた。正直な答えの中に、それぞれの考え方が明確に表れていた。
ジェットスキーには、これほどまでに人生を変える力があります。魅力に満ち溢れた、フリースタイラーの「生の考え」をお楽しみください。
WJS 山本選手にとって、「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか?
山本 全部です。ギャラリーが自分の技を見て楽しんでくれたときなんか……。
WJS 現在、世界タイトルを目指して猛特訓されている日々だと思います。失礼ですが、今日、少し鼻が腫れているようですが、どうしたのですか?
山本 ダブルバックフリップの練習中に、マシンが顔の上にきて……。やってしまいました。
WJS ヘルメットは、被っていなかったのですか?
山本 被っていたのですが、ちょうど開口部がハルに当たってしまいました。怪我をしてから、開口部が小さなヘルメットに変更しました。
WJS そういう事故は、山本選手でも防ぎようがないのですね。
山本 普通の技なら、瞬間的に「今の動き」が把握できます。マシンが顔に当たりそうになったら、腕に力を入れて防いだりといったことができるのですが、ダブル技は、強烈な高速回転をしているので、マシンがぶつかってから気が付くみたいな感じなのです。
WJS 衝撃で、気絶することはないのですか?
山本 それはなかったですが、鼻の骨が折れてました。そのときは、興奮してアドレナリンが出ていたせいか、痛くなかったんです。でも、病院で鼻を真っ直ぐにする矯正治療されたときは、マジで痛かったです。
WJS 山本選手は、何歳からフリースタイルを始めたのですか?
山本 22歳で始めて6年目。現在、28歳です。
WJS そのころのことは、よく覚えています。22歳でBUN FREESTYLEに来て、初めてフリースタイルマシンに乗った日にバックフリップを成功させたのは驚きました。
山本 メチャクチャ楽しいですよね。初めてで、いきなり回れたんですから。あのときの喜びは忘れられません。
WJS 改めてお伺いします。「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか?
山本 原点。やはり、一発のバックフリップが僕の原点です。バックフリップができたときの喜び。あれが楽しさの原点です。
WJS 10月にアメリカでワールドファイナル、12月にタイでワールドカップ(キングスカップ)がありますが、1番勝ちたい大会はどちらですか?
山本 もちろん全ての大会で勝ちたいですが、あえて言うなら「ワールドファイナル」です。
WJS それは、なぜですか?
山本 2年前に、ワールドカップ(キングスカップ)で優勝してトロフィをいただきました。それでも、世の中で「フリースタイルのワールドチャンピオン」とは言われなかった。やっぱり、「ワールドファイナルで勝たなければ」という気持ちが強いです。
WJS 桐谷選手にとって、「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか?
桐谷 こうやって、大会で仲間と会えることです。
WJS フリースタイルを始めて、どのくらいですか?
桐谷 今、51歳で、27歳くらいから始めたので、もう24年くらい経ちます。普段は飽き性なんですが、フリースタイルだけは続いている。楽しいです。
WJS フリースタイルを始めたきっかけは何ですか?
桐谷 家の隣に住んでいたお兄さんに連れて行ってもらったのがきっかけですね。そのときに乗ったのが、ヤマハFX(1人乗りのスタンドアップ)です。すっかり夢中になって、そのFXを25万円で譲ってもらいました。バレルロールはできなかったけど、必死で練習して、エアターンやサブマリンをして遊んでいました。それから、スーパージェットを買って、リミテッドに改造して練習していました。
WJS 当時も今も、とてもフリースタイルが楽しそうですね。
桐谷 はい。それでも、今が一番楽しいかな。6年ほど前に広島に旅行に行ったとき、BUNさん(渡部文一氏)のハルを買いました。それからBUNさんのマシンに乗ってますが、もう他のフリースタイル艇には乗れません。自分の中で「カーボンぼけ」している部分もあると思います。
WJS 「カーボンぼけ」というのは面白い表現ですが、良いマシンに乗りすぎたということですか?
桐谷 はい。この前、スーパージェットに少し乗ったんですが、安定が悪くて、水の上で自分が「マッチ棒」になったような気がしました。FXからスーパージェットに乗り換えたとき、「なんて乗りやすいんだ」って感じたことを思い出して、愕然としました。マシン的には、もう戻れません。
WJS 福田選手にとって、「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか?
福田 うーん……。何と答えたら良いか……。しばらく考えさせてください。競技をしていると、楽しいことだけではありません。苦しいことも多いですからね。
WJS フリースタイルを始めてどれくらいですか?
福田 25歳くらいから始めて、今、49歳です。もう、24年になりますね……。
WJS 人生の半分は、フリースタイルと関わってきたのですね。
福田 だから、その時々で感じ方も変わります。一言で「楽しさ」を言えません。ただ、これだけは言えるが、「大会、競技というものがあったから、これだけ長い間、続けてこられた」。それは、事実です。
WJS フリースタイルを始めたばかりのころは、楽しかったのですか?
福田 単純に、「楽しい」ってことだけなら、フリースタイルを始めたころ、何にもできないくせに、仲間とワイワイ言いながらやってたときが一番楽しかったのかもしれない。でも、それだけだとすぐに飽きたと思う。
WJS やっぱり、大会に出場するモチベーションは大きいのですね。
福田 プレッシャーやお金の問題もあるのですが、この年齢になっても、ドキドキ・ワクワクすることって、あまりないでしょう。大会にはそれがあります。
WJS 大会に出場することは楽しいですか?
福田 楽しいです。こうやってフリースタイルを続けてこられて、つくづく「自分は幸せやなー」って思っています。だけど、それだけじゃない。苦しさ、辛さ、楽しさ、いろいろある。何なんでしょうね。答えを探すために、続けているのかもしれません。
WJS 渡部志都子さんにとって、「フリースタイルの楽しさ」とは何ですか?
渡部 はぁー、何て言えばいいんでしょうね(笑)。
WJS 何歳からジェットを始めたのですか?
渡部 29歳です。36歳くらいまでやったから7年間ぐらいやりました。
WJS 現在は、渡部文一氏の奥様でいらっしゃいますが、現役時代(旧姓:八木)は、ウィメンクラスの全日本チャンピオンを何度も獲得しているトップフリースタイラーでした。フリースタイルは楽しかったですか?
渡部 とっても楽しかったです。
WJS 同性のフリースタイラーの、憧れの存在だったと思います。ご自身が、フリースタイルを始めたきっかけも、「憧れ」という部分があるのですか?
渡部 そうですね。やっぱり、見てカッコいいですから。怖さはあるけれど、「あの技をやりたい」、「自分があの技をやったら、絶対、カッコいい」と、見た人に思われる。それをするのが楽しい、みたいなところですかね……。
WJS 今のようなマシンパワーがない時代、バックフリップもされていましたよね。怖くなかったのですか?
渡部 怖さはありました。でも、できるようになりたかったし、できたら、それ以上に、嬉しくて楽しかったです。
WJS 渡部さんにとって、「フリースタイルの楽しさ」は、「できなかった技が、できるようになる」ことですか?
渡部 はい。それと、「結果」も大事です。30歳を超えて1番を獲れるものって、なかなかないけれど、「もしかしたら、タイトルが獲れるのでは」と、考えてやっていました。
WJS 今と違って、大会ではウィメンだけのクラスもあり、ライバルの女子選手も多かった時代ですよね?
渡部 はい。5人くらい。何か、恥ずかしいですね。