「アワーメーター」とは、読んで字のごとく「時間計」である。エンジンが駆動している間だけカウントされる機器であり、エンジンの稼働時間のことを言う。
この「アワーメーター」の時間で、メンテナンス時期の目安にしたり、消耗部品の交換など、使用時間によって交換が義務付けられているパーツももある。
クルマのように走行距離メーター(オドメーター)のないジェットスキー(以下、ジェット)は、アワーメーターの稼働時間で、どれくらい走ったかの目安としている。
クルマを売買で、まず確認するのが「走行距離」だ。そのクルマの現在の状態の目安になるからだ。
では、中古ジェットを売買する場合はどうだろう?
普通のジェットには「走行距離メーター」は存在しない。その代わりとなるのが「アワーメーター」だ。エンジンの総使用時間(可動時間)がECU(コンピュータ)に記憶され、メーターに表示される仕組みとなっている。
今回は、この「アワーメーター」について調べてみたい。
果たしてジェットのアワーメーターは、クルマの「総走行距離」と同等の意味を持つのだろうか?
ジェットの売買において、どれほど「アワーメーター」が重要なのか?
総時間数をどのように解釈すればよいのか? を考えてみる。
本誌が信頼しているプロショップの店長たちや、プロのマシンコンストラクターに聞いてみた。
この質問に対して、プロ集団の答えは「違う」であった。
「総走行距離」が、査定に大きく影響する。総走行距離が「1万km」と、「10万km」では、中古車相場が全然違うのだ。
実例として、3年落ちの「トヨタ・プリウス」の場合、総走行距離が1万kmと、10万kmでは、値段に約100万円の差があった。
ヤマハ、カワサキ、シードゥの各フラッグシップを、クルマと同じように3年落ちで購入するとしよう。
「アワーメーター10時間」と、「アワーメーター100時間」では、取引価格の差は、せいぜい10~15万円ぐらいだと言う。クルマほど、使用時間による大きな差はないそうだ。
ジェットにとって、「アワーメーターに意味がないのか?」という質問に対し、プロ集団は「それも、違う」言う。
ジェットの場合、日常の使い方次第で状態が変わってくる。同じ新艇購入から1年後でも、大切に扱っている人とそうでない人のジェットは、痛み具合が全く違うのだ。
ジェットは水の上を走る乗り物だ。特に海水で乗ったあとにメンテナンスを怠ると、劣化具合が非常に酷いことになる。海で乗ったあと、何も手入れをしなければ、翌朝には錆が浮いていることもある。
だから、エンジンの可動時間よりも、「オーナーから、どれだけ大事にされてきたか」のほうが、中古艇価格に大きく影響するのだ。
それなら、「アワーメーター」に意味がないのかといえば、そんなこともない。
総使用時間が150時間を超えたジェットは、極端にユーザーからの人気が落ちるそうである。
この質問に対するプロ集団の答えは、アワーメーター100時間は、「大切に扱われた場合/車の5万km」、「普通に使った場合/車の10万km」相当だという。
今回、この「アワーメーター」について、大阪池田市のプロジェットショップ、シーゼットカンパニーの西村晋也社長に聞いたところ、より詳しく、分かりやすく答えていただいた。
インタビューは、現在、無料公開中の「ワールドジェットスポーツマガジン11月号」に掲載しているので、ぜひともご一読いただきたい。
「数字の解釈の違い」について、立場や経験によってさまざまである。どの解釈も間違いではなく、全て本当の話だ。中古艇を購入する場合や、自分の愛艇を売る場合、プロがどこを見ているのか知っておくのは良いことである。
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