現在、アメリカ・アリゾナ州レイクハバスで行われている、ジェットスポーツ界の世界ナンバーワンを決める大会、「ワールドファイナル」に、メカニックとして参戦しているちゅーた先生。タイチームのメカニックとして行っているのですが、今回も 一筋縄ではいかないようです……。
いつもは本誌で連載している人気コーナーが、Webに初登場です。
タイランドチームのコンテナがかなり早く開梱するので、アメリカに入るのが早くなった。ジェットスキーを引き上げた後、ハバスの知り合いに艇を預け、再びロサンゼルスに戻ってライダーを迎えに行く。空港でびっくり! ライダー1人なのに、何でこんなに人がたくさんいるの??
フルサイズピックアップの荷台に、ご一行様の荷物を満載して、いきなりタイ飯を食べに行くと言う~~。ロス在住の、タイレストランオーナーの店に、大勢で訪問~。
その後、レイクハバスに向かうのかと思ったら、ロサンゼルス観光すると!?! グリニッジ天文台と、ハリウッドのチャイニーズシアターあたりを引きずりまわされることになった~(笑)。そのまま、ハリウッドに1泊して、翌朝、やっとハバスに向かって出発するー。
途中、大型トラックの大事故があり、2時間も渋滞にハマっていた。大人数の移動なので、ちょこちょこ寄り道がありロサンゼルスからレイクハバスまで12時間もかけて走ることになってしまいました~。
翌日から、やっと本題のジェットスキーの仕事に戻ることができ、セットアップと調整に入る。たりない工具などを買い足しに行ったり、ボルトナットを探して、街に出ること数回……。最初のテストに向かいます~。
まだ、レース本番まで10日ぐらいあるが、ビーチは満員! みんな、早くから入って調整しているようだ。午後からのテストだったので、水面がかなり荒れていて、正確な回転数やスピードのデータが取れず本日終了。
明日、早朝7時から再テストをすることに~。しかし、レイクハバスの早朝は、かなり気温が低い、タイランドの人たちは寒いのが苦手……。みんな、「かなり早くからテストする」という言葉に、すでに震えていた(笑)。
翌朝、テスト開始~、やはり早朝は、水面がとってもフラット。正確な回転数と、スピードが測れる。データも良かったので、あっさりとテストは終わってしまった。
前日のようなラフな水面では「スピードが遅い」とライダーが言っていたが、私が乗ったときにはそうは感じなかった。実際、早朝にデータを計ると、かなり良いスピードが出ていて、全く問題ない。
ハンドリングに関しては、ライダーの言う通り少し修正が必要なようだ。いろいろライドプレートを交換してテストをしたが、ハンドリングとトップスピードを両立させるのはやはり難しいみたい。いろいろと、これからの加工が必要なようである。
そんなことをしているうちに、不穏な情報が入る……。ワールドファイナル特有の「レギュレーション・トラップ」にハマり始めた。
いつも、レース前になるとルールがコロコロ変わる。またまたスポーツクラス艇だ。前回は、いきなり過給器圧力の規制がかかったり、今回は船体の加工に関して新たな文面が追加され、それの対応に追われることに~。
レース前に、インスペクターに、再度、艇を持っていき、このマシンが使用できるかどうか確認を取る。インスペクターに「アウト」宣言されるとなれば、こちらで船体を購入して、エンジンを積み替えなくてはダメになる。大仕事だ。 結果、スポンソンのボルトの出すぎを指摘されただけで、船体自体は問題ないということで、胸を撫でおろす~。
この返事があった瞬間から、いきなりみんなが「観光モード」に切り替わってしまう~。
翌日の朝、グランドキャニオンに行く。さらにその翌日の朝に、ラスベガスに行く。その翌日の朝には、サンディエゴのシーワールドに行く~。
そこで、私は提案をした。「レーシングチームと観光チームに分かれて、レースをするメンバーはハバスに戻った方が良いのでは?」。結果、レースチームはレース会場に戻り、観光チームはサンディエゴに向かうことに~。ライダーもメカニックも、そのほうが何か落ち着くよね(笑)。
まだルールブックの上で新たに騒音規制が入って、「100デシベルを超えてはいけない」ように書いてあるので、サイレンサーを作って入れなければならない。残り1週間、地道に作業を続けて、良い結果が残したいものだ。
今回、ハバスのエンジンチューナーといろいろ話す機会があった。カワサキの4ストエンジンは、これからもいろいろな艇に積まれていくような予感~。それに向けて、エンジン開発が進んでいる。水面に出てみても、カワサキ4ストのエンジンが、いろいろなメーカーの船体に積み込まれて走っているのが見られました。
一時期、3気筒の2ストロークエンジンがいろいろな船体にスワップされたような状態になってきている。2ストローク3気筒エンジンのように、大きな改造が必要ないし、耐久性も非常に良い。中古エンジンもたくさん出回ってきているので、ますますこれからも積み替えが進んでいく感じである。
ECUの書き換えをして、燃料圧の調整さえすれば、かなりの馬力が出るようになる。それを知り始めているチューナーたちは、どんどん積み替えを進めているようであります。
中田正樹(なかだ・まさき)
【Profile】
元JJSFフリースタイル全日本チャンピオン。クリス・マックルゲージのメカニックを務め、2004年、2006年と、ワールドファイナルでのマックルゲージの優勝に大きく貢献した。2007年までアメリカのマックレーシングに在籍。現在は、フリーのコンストラクターとして、日本を拠点に世界中を飛び回る日々を送っている。ニックネームは「ちゅうた」、「ちゅーやん」。
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