ヘルメットのデザインは、その人となりを映す鏡です。よほどスポンサー契約で、決まったデザインのものを被らなければならないというのでなければ、ヘルメットは、唯一、「その個人」を主張できるアイテムなのです。F1などでも、マシンはスポンサーアピールをするためのもの。ヘルメットは、そのレーサー個人をアピールするためのものと考えられています。だからこそ、「格好良く」なければいけない。
時代ごとに流行のデザインも変わってきます。ここで紹介するヘルメットは、その人に似あうデザインで、さらに流行も押さえているものばかり。そんな最先端のヘルメットデザインを紹介していきます。第1回目の今回は、竹野下正治プロと田中エミ選手のヘルメットです。竹野下プロのような日本を代表するレーサーのヘルメットは、毎年、デザインが変わり、我々の目を楽しませてくれます。
数年前のキングスカップで、初めて竹野下選手に依頼されました。「来年、ヘルメットを塗ってほしい」と言われた瞬間から、「黒いヘルメットを被って、トップを走る竹野下選手の姿」が、頭の中に浮かびました。それで塗ったのが、この「艶消しブラック」です。
「艶消しブラック」を塗った翌年のリクエストが、「とにかく派手に」でした。それでできたのが、この「ゴールド&ギラギラ」。世界中探しても、このヘルメットが似合うライダーは、竹野下正治選手以外いないと思っています。
世間話のなかから、相手の好みを推測します。竹野下プロの場合、好きな言葉を聞いたとき、「最強」と言われました。竹野下プロのイメージともピッタリ合ったので、ヘルメットに使っています。これが「ヘルメットに使うから、好きな言葉を教えてください」といったら、全く違う答えになっていたと思います。
田中エミ選手のことは昔から知っています。女性ですから、ジェットの上げ下ろしやメンテナンス、ガソリンの給油まで、まわりの人たちがサポートしています。僕が初めて田中選手のために塗ったヘルメットには、4人のサポートの真ん中に田中選手がいるイラストを入れました。キングスカップチャンピオンを取っても、「支えてくれた人たちを忘れるな」という願いを込めています。
この写真のヘルメットは、アメリカで行われるワールドファイナルで使うためにペイントしたものです。特徴は、田中選手が下のクラスから上がってきた、今までの歴史をたどる写真が入っています。
色も構図もバラバラな写真をデザインに組み込むため、「デジタル迷彩」という手法を使いました。所属チーム名は最も目立たせたかったので、その部分を浮き上がらせるため、金箔を貼っています。
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