「 今、世界最強 の レースマシンは どれですか? 」と 聞かれたら、編集部の答えは ダスティン・モツリス選手が 造る 「 FAST POWER SPORTS( 旧KOMMANDER )GP1R(以下、GP1R) 」と答える。
その理由は簡単だ。ここ数年のレース結果が、全てを証明している。
■2018年~2023年までの「国際レース」で勝利した「 GP1R 」
・2018年 ワールドファイナル:チャンピオン/クエンティン・ボッシュ選手
・2019年 ワールドファイナル:チャンピオン/コレ・クレーマー選手
・2020年 ジェットスキーワールドカップ:チャンピオン/クエンティン ボッシュ選手
・2022年 ジェットスキーワールドカップ:チャンピオン/クエンティン・ボッシュ選手
・2023年 ジェットスキーワールドカップ:チャンピオン/ケヴィン・ライテラー選手
この結果を見ても、「世界タイトル」を獲得するために必要なマシンは、「 GP1R 」であることは間違いない。
ご覧の通り、「 GP1R 」は、世界チャンピオン を獲得しているが、今シーズン、「 GP1R 」の 後継機種として「 FAST POWER SPORTS F1( 以下、F1 ) 」が発表された。
最大の特徴は、「 GP1R 」よりも、「 船体が 大きく 」なったことである。
もちろん、国内でも発売が決定している。今回、元全日本チャンピオンで、日本総代理店「 FAST POWERSPORTS Japan 」 代表・佐々木 宏樹 氏 の全面協力のもと、「 F1 」の 詳細な紹介と試乗インプレッションを報告する。
上の写真は、 『 世界チャンピオン マシン「 GP1R 」』と「 F1 」の ライディング・イメージを 陸上で行ってもらった。
明らかに「 GP1 」の方が姿勢が低く、“超”が付くほどの攻撃的な フォームに見える。
これで、“楽しそう”に、“攻撃的”に水の上を走ってくれた。
対象的に「 F1 」は、棒立ち気味のライディングフォームで、明らかに楽そうである。
これは、あくまで編集部の私見だが、「 F1 」に乗っている佐々木氏は、何か「 物足りない」表情をしていた。
その理由を佐々木氏に聞くと、『「 F1 」は簡単すぎる 』という。
「自分で、マシンを操っている感覚がない! これでは、“ランナバウト” みたいに、誰でも乗れてしまう」と、少し不満げに言うのだ。
生粋のスタンドアッパーである 佐々木氏にとって、ジェットの楽しさは「 思い通りに乗れないマシンを、自由自在に操るために 努力すること 」だという。
その信念に基づけば、「 もっと速く走れるようになるために、マシンが よりハードになる分には 納得できる。しかし、 これほどまでに"乗りやすく"なるのは、頭では理解できても 感情的に承服しかねる」部分があるそうだ。
編集部も新しい「 F1 」に試乗させてもらったが、非常に " 優しい " マシンであることに非常に驚いた。
「ちょっと待って、スタンドアップが こんなに簡単でいいの?」というのが、編集部の 偽らざる本音である。
「F1」に乗った最初の感想は、「 全くクセのない マシン 」である。
コーナーも楽に曲がれる。
世界レベルのレーシング・マシンに試乗したとき、よく言われる“ツライ言葉”がある。
それは、「 その先が 美味しい のに…… 」だ。
要するに、私の限界を超えたレベルのスピードで走り切ったその先に、そのマシンの「 本当の良さ 」が あるということだ。
例えば、『 世界チャンピオン マシン「 GP1R 」』がそうだ。
「 GP1R 」が、まだ「KOMMANDER GP1」と呼ばれていたころ、国内では まだ、カワサキSX-R が 主流だった。
当然、国内の実力者たちは、皆、SX-Rに乗っていた。
そんな時代に、当時、A級から昇格したばかりのルーキーだった佐々木氏は、国内で1番最初に、「 GP1 」に乗り換えた。
しかし、いかにモンスターマシンと呼び声が高いレース艇であっても、昇格したてのルーキーが、いきなり実力者たちをブッちぎれるとは、全く思っていなかった。
本来の「 GP1 」のポテンシャルならば、スタートから飛び出して、ホールショットを狙えるはずだが、デビュー戦で 佐々木氏は、「最初から飛ばすと、途中でバテる」と考え、様子を見ながら、SX-R勢に付いて行く戦い方をした。
これが大失敗だったのだ。
軽くて船体が小さく俊敏に動く「 GP1 」が、重くて大きなSX-Rと同じように走ると、安定性のなさから、数倍も疲れるのだ。
SX-Rに合わせると疲れるだけで、結果も悪い。まさに、"踏んだり蹴ったり"で、「何のために、自分は高性能なマシンに乗り換えたか分からない」という状況だった。
佐々木氏は、「自分が情けなくて、その年の冬(オフシーズン)は、トコトン体力作りをしました」と言う。最後まで、アクセルを握り続けられるように、練習に明け暮れた。
そして翌年は、玉砕覚悟でスタートからブッ飛ばして勝利を重ね、2年目にして国内チャンピオンを獲得したのだ。
国内で1番最初に、「 GP1 」に乗り換え、2年目にして国内チャンピオンを獲得した、佐々木 宏樹選手。
国内チャンピオンを獲得したレース直後。
話が逸れたが、要は「レーシング・マシン」は「 自分の快適な 速度域で走っていたら、本来の良さがなくなってしまうケースもあるのだ。
残念ながら、“編集部の試乗”ごときで、世界レベルのマシンの良さが完全に理解できるとも思えない。さらに、貴重なマシンを壊しでもしたらお詫びでは、とても済まないので、いつもとても緊張して乗っている。
しかし、新しい「 F1 」は 全く違った。
超高速域でも、少しペースを落としたスピード域でも、すべての領域で“快適”に“簡単”に走ることが出来るのだ。
これには心底驚いた。
陸上に戻ってから、佐々木氏に「これ、すごく簡単で快適です!」と伝えると、なぜか不満気に佐々木氏が大きく頷いたのだった。多分、佐々木氏にすれば、「簡単なスタンドアップ」というのが、気に入らないのだろう。
FAST POWER SPORTS F1。
Pro Force3.0。
INTERCEPTOR JP-1。
「F1」の他に、本誌が現在、「 世界チャンピオンが 獲れる マシン 」として 注目している レース艇 が2台ある。「 Pro Force( プロフォース ) 3.0」と 「INTERCEPTOR JP-1( インターセプター・ ジェイピーワン、以下 JP-1 ) 」である。実はこの3艇の船体サイズは同じで、レースレギュレーションぎりぎりの大きさとなっている。
この3つマシンの 開発 コンセプトは いずれも「 レースで 勝てる マシン 」だ。
そのために “何を考えたか?” というと、「 簡単に乗れる 」である。
例えば、FAST POWERSPORTS社の代表、ダスティン・モツリス氏は 「 F1 」の開発について「 より 寛容(優しく)に した」と、本誌に語っている。
ダスティン・モツリス氏に、「 勝てる マシン 」の定義を聞くと、「 簡単で 安定していて 優しい 」 という答えが返ってきたことに驚いた。
才能に恵まれた 一握りの “選ばれし者だけ”でなく、誰もが 練習さえすれば 結果を 出せる マシンがいいのだという。
より"簡単"で、ミスをしないマシンということだ。
何より、“いいマシン”は ライダーに 自信を与えてくれる。自分の テクニックに 自信を持つことは、 トップライダーにこそ 非常に重要となる。自分自身を信用できなければ、勝つことはできないからだ。
レース中は、 考える 時間などない。だから、素早く瞬時に 決断しなければならない。
そのためにも、100個コーナーがあれば、毎回、“自信を持って曲がれるマシン”でなければならない。
勝ちたければ、 自分のマシンを 信頼し、自分自身も信用する。
再度言うが、それは、「 簡単で 安定していて 優しい 」 マシンということになるのだ。
クリス・ハゲス氏に「今、勝てるマシン」に求めているものを聞くと、「 目指したのは、ライダーフレンドリーなマシン 」であると答えてくれた。
人間工学に 焦点を 当て、デッキの高さと、ハンドルポールの ピボット位置を最適なものにして、ライダーの疲労を 最大限軽減させたという。
さらに船体は、ハルの安定性と旋回性能、最高速度の向上、ノーズが刺さらない などの 性能アップを行っている。
安定性と グリップ力の 良さ、それと コントロールが 容易なことを目指した末の形が、現在の「 Pro Force 3.0 」なのだ。
「 INTERCEPTOR JP-1 」というマシンは、今回紹介したマシンのなかで “最も新しい” 船体である。
製作したのは、アフターパーツメーカー「 CRAZY-HOUSE ( クレイジーハウス ) 」代表で、日本の プロスキークラスのトップライダーである 山本 陽平 氏である。
このマシンは、山本氏が 「理想とする走り」を 追求するため、一から作り上げたものだ。
山本氏が一番こだわった点は、乗り方を覚えれば、誰でも「簡単に乗れる」こと。
「 JP-1 」は、両サイドの デッキを 使いやすいように、 絶妙な“低さ”に 設計してある。「 両サイドの デッキに、左右の 足を 押し付けて 固定させる。 そうすれば、簡単に 乗れますよ 」という。
「 手は、ハンドルに 軽く 添えているだけ 」で、極端な話、「 手は 離してもいい。下半身だけで 乗る つもりで ライディング」すればいいという。
「 JP-1 」の 重心は、船体の センターにあるので、「マシンの 中心」で 乗ったほうが、JP-1の良さが 体感できるような設計になっている。自分で思っているよりも「前」に乗る方がいいのだ。
「インターセプター JP-1」というマシンは、「乗り手」を 選ばない。
「山本理論」によって作られた 船体は、予想通りの 動きをする。
誰もが、「簡単に速く」走れるように作られている。
今回取り上げた「 FAST POWER SPORTS F1 」「 Pro Force 3.0 」「 INTERCEPTOR JP-1 」の3 艇の「 船体サイズ 」が、全て 同じなのには理由がある。
それは、GPスキークラスのマシン レギュレーションの最大値に合わせたからだ。もともとこのクラスのレギュレーションは、カワサキ SX-R が 基準となっている。
そのため、アフターパーツメーカーの マシンは、全長が SX-Rよりも“8インチ以下” と 決められている。その 範囲内で マシンを作ることになる。
これは、SX-Rでも アフターパーツメーカーのマシンと 同等の走りが できれば、「金銭的に 余裕のない人でも 参戦できる」という 配慮からだ。
当初は、そのレギュレーションで 良かったが、毎年、進化を続ける アフターパーツメーカー製のマシンと、進化のないSX-Rとの間には、埋めようのない 差が できてしまった。
当然のことながら、「アフターパーツメーカー製でなければ、“勝負の土俵”にすら 上がれなくなってしまった。
現在のGPスキークラスでは、SX-Rはスターティンググリッドに並ばなくなった。今後は、この 3艇 でしのぎを削ることになるだろう。
『 世界最強「 RACE マシン 」特集 ! 』最速マシン の "3 台 "は 何が どう 違うのか?
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