


BRP社が2014年に発売した「SPARK(スパーク)」は、気軽に買って楽しく遊べる軽量コンパクトな4ストロークモデル。革新的なPWC(以下、ジェット)で、機能的にも申し分ない。市販のランナバウトで最も安価ということもあり、発売当初から世界的な旋風を巻き起こした。
現在、日本国内での販売は「SPARK TRIXX(スパーク トリックス)」のみとなっているが、程度の良い中古艇は数多く存在する。ジェットの購入を考えている人にとって、程度の良い中古のスパークは、最も現実的な選択肢のひとつであろうと編集部は考えている。

スパークが他のジェットと決定的に違うのが「船体の構造」である。ランナバウトは通常、シートの下にエンジンルームにアクセスするための開口部があるが、スパークにはそれがない。大きな穴を開けないことで、軽量素材のハルの強度をアップさせている。
驚くことにスパークの船体構造は、上半分と下半分がボルトで脱着できる、PWC史上初の「上下脱着式のボルトオン」システムを採用している。エンジンのメンテナンスをする際は、シートの座面だけを外し、複数のボルトを緩めて船体の上半分(アッパーハル)を外さなければならないのだ。
アッパーハルを外すと、下の写真のように「エンジン面」が姿を現す。船体の下半分に、エンジン本体をはじめ、燃料タンクやマフラーなどの補器類もすべて剥き出しで置かれているのだ。ちなみに他のジェットは、エンジンルーム開口部の真上方向からしかアクセスできないので、作業するときは、常に「船体(ハル)の壁」が邪魔をする。
アッパーハルを外したスパークは「船体(ハル)の壁」の制約がないから、整備性の良さは史上最強レベルだ。あらゆる角度から楽に手が入るし、工具の形やサイズの制限もない。思いどおりに使うことができる。大がかりな修理では、結果的に従来のジェットより作業時間が短くなるケースもあるだろう。
しかし問題は、「アッパーハルを外す」こと。はっきり言って、手間と時間がかかる。そのため、メーカーは「頻繁に洗わなくても壊れない」ことをウリにしている。エンジン各部の品質と耐久性に自信があることの表れだ。
SPARK TRIXX(2up)2022年モデル 価格1,307,900円 燃費は、1時間あたり7.34L(1.94 USガロン)と、非常に経済的。スパークは、「ポリテック」という軽量素材をジェットで初めて使用した。これを使うことで、乾燥重量は「2人乗りが184kg」「3人乗りが191kg」という驚くべき軽さとなった。各社のハイパワーランナバウトが平均400kg前後と考えると、その約半分の重さである。シングルモデルのカワサキSX-Rよりも50kg以上軽いのだ。驚異的な軽さである。
船体下部
エンジン
剛性補強リブ
ドレンプラグ
ポンプまわり
インペラー
ラジエーター
エンジンマウント
ボンドフランジ
ボンドフランジ 「ボンドフランジ部分1」船体前方部は、減速時や波浪の中でもノーズが突き刺さらないように、上を向いている。「ボンドフランジ部分2」ボンドフランジの最も低いところが、旋回の起点との真上となる。「ボンドフランジ3」リアデッキ部分は、船体の跳ね上がりを防ぐため、下降線を描いている。
浮力体
ECU
船体上部
シート
液晶パネル
ハンドルまわり
スロットルレバー&グリップ
ランヤード
オイルゲージキャップ
ウイリーが出来たり、楽しみ方も独特なスパーク。程度の良い中古のスパークを買うにはどうしたらいいのか、本誌が信頼するスズキマリンの鈴木雄生店長に聞いてみた。
鈴木店長 中古のスパークを買うときは、「懐中電灯」を持参して、サイドのパネルを外してエンジンルームの錆び具合を確認すること。
スパークの利点は、毎回、乗った後に洗わなくても良いことです。逆に、そのせいで錆びることが欠点です。1年に1度、キチンと防錆対策を実施していれば、ほとんど錆びることはありません。ただそれも、「誰がどんな防錆対策をしたか」で変わってきます。
ユーザー側の本音を言えば、上下のハルを外してエンジンルームを確認させてもらえば一番いいだろうが、それをやってくれるケースは少ないという。多少錆びていても、性能に問題はないそうだが、それも錆の程度によると鈴木店長は言う。

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