消費税法が施行されたのは平成元年(1989年)4月1日。導入されてからすでに33年経過している。最初の3%だった税率が、現在では10%になっている。
消費税が導入される何年も前から、消費税の導入に反対し続け、時の政府に働きかけて導入を何年も遅らせ、導入されてからも現在に至るまで「消費税廃止」を世に訴え続けて来たのが、元静岡大学教授で税理士の湖東京至先生だ。
今回、湖東先生に「消費税は、何がどう悪いのか。そして本来はどうあるべきか」を聞いてみた。
湖東―― 消費税は、「輸出企業への優遇税制」なんです。
税の基本概念とは「富める者から、苦しんでいる者への分配」です。
例えば、儲かっているクルマ屋さんがいたとします。そこが「利益の中から税金を納めて」、苦しんでいる他の会社や人を助ける。助けてもらい立ち直った人は、また助けてもらったクルマ屋さんから買う。そうやって、「経済を循環させる」のが基本です。
湖東―― 消費税は、赤字の会社からも「無理やり税金を徴収」するものです。そして輸出企業には、史上最高の売り上げと言われた年にも「還付金」を支払っています。
消費税の本質は、「輸出企業のための超優遇政策」です。赤字企業は税金を納めるのに、輸出企業は「海外で売った分だけ、消費税の還付」を受けます。
そのため、トヨタ自動車のある豊田税務署は、トヨタに支払う莫大な還付金のために赤字で喘いでいます。
父ちゃん母ちゃんで、少人数で何とかやりくりして必死で頑張っている零細企業は赤字でも納税する。でも、史上最強の売り上げと発表された巨大企業には、「高額な還付金」ってアンフェアだと思いませんか?
税の基本概念は「富める者から、苦しんでいる者への分配」のはずなのに、今は逆に「苦しんでいる者の税金を、富める者に差し出す」という状況が続いています。
3年前の2019年10月、消費税の税率が8%から10%に上がった。このとき「全ての商品」の価格が上がった。ここで言う「嘘」は、商品の値上げは「消費税分が、上乗せされたわけではない」ということだ。
消費税率が上ったことを「理由」に値上げされたのである。例えば、税率が10%上がったため100円のコーラが「110円」になったとしたら、普通、「10円分は国に納める」と思うが、実はこれが違う。
湖東―― コンビニやスーパーなどに行って買い物をすると、10%消費税が乗ってくる。あれは「自分が払っている消費税」だと思っている人が99%ですよ。でもあれは「消費税」ではない。
「消費税」という税金は、小売りの1個1個にかける税金ではないんです。
消費税を税務署に納めるのは事業者なんです。決算が終わったあと1年間の課税売上高を課税標準として計算します。
「1年間の総売上高×10%」から「1年間に仕入れた額×10%を引く」。そこには、物品の仕入れだけではありません。工場の建設費とか、クルマを買ったとか、社員のユニホームを買ったとか、家賃を払ったとかいろんなものをみんな引けるんです。それが1年間に納める消費税額になる。
例えば、お店を新築するときに工務店にたくさん払ったとすると、「払った分は引ける」わけですから、その年は「消費税を国に納めなくてもいい」ということも起こるわけです。 我々が払ったものは、そっくり税務署・国にはいかないのです。
「消費税」は、「消費者とは無関係」の税金なんです。
それを裁判所に訴えた人がいますが、その判決に「消費者が払っていると思っているのは錯覚ですよ。あれは“消費税”という税金ではありません。あれは“物価の一部”です」と言う内容が書いてあります。
つまり、値引き販売ならぬ「値増し販売」です。
コーラを販売した「企業」が、コーラ分の消費税の支払い義務を負うのだ。その会社が輸出関連の事業も行っていれば、海外販売分からは還付金が戻ってくる。
結局、国に1円の消費税も支払わず、逆に税金を還付されている企業は多い。
国民は“国に”は「税金が必要だ」と考えて10円を支払っているのに、国には1円も入らないというケースがまかり通っている。これは誰が考えてもおかしい。
こういうことを言うと、「企業は納税後、例えば消費税や法人税を支払い後に、還付分の支払いを受けているのだから、“納税していない”というのは間違いだ」という人がいる。
それは違う。2020年度は、トヨタ自動車をはじめ日本を代表する輸出大企業10社に、1.2兆円を超える還付金が支払われている。
湖東―― いろいろ勉強させてもらって、消費税っていうのは、ものすごく悪い税金。こんなに悪い税金が世の中にあってはいけないということ。今、世界では広まっている税金なんです。ところがたった1カ国、アメリカだけがやっていない。アメリカは、確信的にこの税金が悪いと指摘しているんです。
「付加価値税」という名前を聞いたことがありますか? 「VAT」っていうのを最初に考えたのが、アメリカの“シャウプ博士”。シャウプ博士は戦後の1950年(昭和25年)に日本に来て日本の税制を考えたときに、初めて日本に「付加価値税」という税金を入れようとしたんです。
シャウプ博士が作ったのは、今の消費税とスタイルが同じ原形ですが、違うのは消費者が払う「間接税」ではなくて、今日本にある「法人事業税」という税金を変えて、税金を作ろうとしたわけ。
それが日本の国会で通ったものの、4年間塩漬けになって廃案になった。日本ではこの税金はやれない、と。なぜかといえば、「この税金は、赤字でもかかる税金だ」と言って、事業者がものすごく反対した。
湖東―― それが、1954年(昭和29年)にフランスが「付加価値税」っていう税金を導入したんです。なぜフランスが導入したかと言うと、フランスは「輸出」が弱くて、アメリカ、日本、ドイツなどから輸入しなければならなかった。
それで悩んで考えた末に、「一生懸命やっている輸出企業を応援しようじゃないか」となった。応援するにはどうしたらいいかというと、「税金をまけること」ですよね。
しかし、「GATT(関税及び貿易に関する一般協定)」という協定があって法人税を下げることが禁止されている。
「じゃあ、間接税ならいいんじゃないか」っていうことで、本来、シャウプ博士が考えた「直接税」であった付加価値税を、「間接税」として導入したんです。これは「大企業に還付金を与えるために考え出したもの」なんです。
これは「輸出奨励税」という別名があるくらいです。これは、フランスのヒット商品なんですよ。「フランスが世界に輸出したものの中でも、最高に出来がいい」と評価されている。誰に評価されているかといえば、「大企業」です。
この税制を、世界140カ国くらいで実施しています。
実施していない有名なところがアメリカですが、アメリカは政府中心にこの税金をずっと検討して、結局、導入しないことにしたんです。
湖東―― 消費税導入前のフランスには、メーカーが蔵出しするときにかける「製造業者売上税」というのがあった。
小売りは関係なく、メーカーから出荷するときだけに納める税金があった。メーカーは「何で俺たちだけが納めるの?」「小売りが納めないのはおかしい」と考えていました。
税率も当時で10%だったから、非常に負担が大きい。これを何とかしないといけないと考えた。
クルマで例えると、メーカーが100万円のクルマを出荷した段階で10万円の税金を支払っている。しかし、タイヤを仕入れた段階でそのタイヤ分の税金は既に納めている。
ほかにも、クルマにはガラスや鉄が使われているから、それら全てに「税を支払っている」と大企業が主張した。
その主張が通って、10万円の税金から部品分の税金を差し引けるようになったので、メーカーの税の負担が激減したのです。
この方式を日本も採用しています。
本筋の話では、「課税は製品が出来てから1度だけが原則」です。アメリカでやっている「小売り売上税」というのは、「小売り段階だけで課税する」ものです。
税金の概念では「課税は製品が出来てから1度だけが原則」です。
本来であれば出荷時に10万円シンプルに課税していれば良かったのに、この方式になってからそうではなくなった。ある段階で「1回だけ課税」するのではなく、全段階に持って行ったら、「誰が得をしているか」です。
湖東―― 輸出大企業だけを優遇する、消費税を廃止して、昔に戻せばよいのです。法人税を昔の税率に戻すだけで十分です。
というのも、消費税を導入してから法人税をずっと下げてしまっているから。40%あった税率を20%代に下げたものを元に戻す。
国は、消費税の導入により、法人税や所得税の最高税率を下げた。相続税の最高税率も下げました。しかし、所得の低い人の税率は変わらなかった。
高額所得者や大企業は負担が減って、所得の低い者や、赤字の企業まで満遍なく税金を徴収できる消費税という制度が続けは、持てる人は“より富み”、中間層以下は“より苦しむ”ようになります。
日本では、社会保険料などは負担金の上限が設けられています。高額所得者は所得全体から差し引かれる割合がドンドン減り、逆に社会の中間層や平均賃金以下の人の社会保険料や税負担は増えていく。所得の低い人が、非常に重い税負担に喘ぎ苦しんでいます。
湖東先生の考える一番いい税金は、「あるところから取って、ないところから取らない」「あるところから取ったものを、ないところに分配する」という発想である。
今は「ないところから取って、あるところにまわす」だが、あるところから取るようになれば、ある程度は下にも回る。
低所得者からも“満遍なく”徴収された税金が国民に還元されるのであれば、少しは納得できるが、輸出大企業への還付金に変わるのはどうかしている。
消費税はこの先、必ず上がっていく。何度も書いたように、税率が上がると物価が上がる。行き着く先は、暴動や戦争、テロである。
資本家だけがどんどん富み、貧乏人にはどんどん税の負担が増え続けるようないびつな国は、いずれ破綻する。
消費税の導入前から、税の専門家として見続けてきた湖東先生。「こんなふうに税の仕組みを変えると、こんなふうに悪くなってしまう」という考察が、すべてその通りになっている。「これを何とかしたい」という。
消費税が上がったので「値上げせざる得ない」といって、物価は上がってきた。しかし、その値上げされた金額は消費税として国に入るとは限らない。輸出企業であれば、国内販売分と海外販売分の比率を自社で決められる。つまり還付金を自社で決められるのだ。
一般サラリーマンや、零細企業は、赤字だろうが、総収入が減っていようが、消費税、社会保険料は支払わなければならない。
消費税とは思想の問題である。
日本も含め、世界中の多くの国が、自国の大企業が繁栄することが、「自国の発展」と考えているからだ。
しかし、税の基本概念とは「富める者から、苦しんでいる者への分配」だと考えたとき、「赤字企業にも課税、大企業に還付金」という制度はおかしい。
そして、消費税の歴史は税率が上がり続けるというもの。現在、日本の消費税は10%だが、最高税率25%の国もある。
しかし、税率が上がると格差が広がる。
「貧しき人はより苦しく、富める人はより増える」がこれ以上続くと、より良き未来は見えない。
消費税は廃止して、税の基本概念に基づいた税法に戻すべきだ。そういうことを考える時期にきていると思っている。
湖東 京至(ことう・きょうじ)
【Profile】
元静岡大学教授。税理士。
1972年以降、税制・税務行政・ヨーロッパの付加価値税制の実態を学ぶため、フランス、ドイツ、アメリカ、カナダなどを歴訪、国際税制の研究を深める。東京税理士会理事など歴任。
「絶対におかしい消費税!【2】」税の基本理念が破綻している!「消費税は、弱い者いじめ税!」この“悪税”を廃止にしなければ国民の“幸せ”はない!
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