
フロントノーズの中央に「カワサキの総合的技術力の象徴」である「リバーマークエンブレム」を配した。2022年の「JET SKI」のフラッグシップモデル「ULTRA 310」シリーズが発表された。国内で販売されるのは、「ULTRA 310LX-S」と「ULTRA 310LX」の2機種。今回は上位モデルである「ULTRA 310LX」を解説する。
「ULTRA 310」シリーズは、レースシーンで培ったさまざまな技術をフィードバックして開発されている。高い走破性能と、ラフウォーターにも強い船体に、PWC業界最大馬力のエンジンを搭載。他の追随を許さない「カワサキ独自のライディングフィール」を楽しめる。
従来モデルの乗り味を維持しながら、アッパー デッキ部分を一新。アンダー ハルは、従来から定評のある「ULTRA」用のハルをそのまま使っている。フロントのバンパー部に取り付けられた「アクセントライト」が、独特の存在感を放っている。
さらにULTRA 310LXには、前後にポジション調整が可能な「エルゴフィット ラグジャリーシート」を採用。自分に合ったライディングポジションにすることが可能となった。
またコックピットには、新たに「TFTカラー液晶スクリーン」を導入、さまざまな情報が"非常"に"見や"すく"表示"されるようになった。
ULTRA 310 LXの新装備として、「イージーアクセス ストレージ」「リヤビューカメラ」「4スピーカー オーディオシステム『JETSOUND 4s』」などが採用された。
JET SKIモデルとして初めて、「リバーマークエンブレム」が使われてているのも特徴のひとつだ。
燃料タンクも、従来の78Lから80Lに増量した。「たかが2L」と思うかもしれないが、ツーリングによく行くユーザーにとって、この「2L」は非常に大きな違いなのである。
発売は「ULTRA 310LX-S」「ULTRA 310LX」ともに、2022年春を予定。価格未定となっている。
「ダイナミック・ラグジュアリー」をコンセプトに、アッパーデッキを全面的にリニューアル。従来までのダイナミックなスタイリングに立体的なデザインを取り入れ、高級感に溢れたエクステリアに仕上げている。
アッパーデッキはデザインが一新した。全長が209㎜長くなり、全幅は同じで、重量が7㎏増えた。フロント・バンパーと、リヤ・デッキを装着したことでの全長UP。アンダーハルは変更なし、なので”長さ”の変更はない。重量は7㎏増えた。インストゥルメント パネルには、大型で見やすい「7インチ フルカラー TFT液晶 スクリーン」を採用。複数の表示モード、Bluetooth接続、さらにインフォテイメント機能が搭載されている。「ジョグ ダイヤル」による、直感的な操作が新しい。
ジョグ ダイヤル コントロール、Bluetooth接続に加え、複数の表示モードを搭載。情報の表示方法は、3種類のモードから選択可能(デジタル スピードメーター、デジタル スピードメーター+JET SKIイメージ、アナログ タコメーター)となっている。
画面の背景はライダーの好みに合わせてブラックまたはホワイトに設定可能。高級感を演出するスタイリッシュなメーター バイザーを装備している。
・スピード メーター(GPSベース)
・タコ メーター
・燃料計
・ギヤインジケーター(F/N/R)
・ブースト圧
・時計
・パワー モード(FPO/MPO/LPO/SLO)
・コンパス
・トリム
・選択表示:デジタル タコメーター、トリップ メーター、トータル タイム、トリップ タイム、油温、エンジン冷却水温、バッテリー電圧、吸気温計、診断コード、外気温、外水温
・Bluetoothインジケーター
・電話着信表示(iOS搭載のスマートフォンのみ対応)
・メール着信表示(iOS搭載のスマートフォンのみ対応)
・エコノミカルライディングインジケーター
・クルーズ
・エコノミカル ライディング インジケーターの点灯を維持するようにライディングすることで、ライダーは燃料効率を最大限に高めることができる。
Jet Ski用オーディオシステム「JET SOUND」の進化版。4つのスピーカーが付いており、ジョグダイヤルコントロール、Bluetooth接続を備えている。
JETSOUND 4s「4スピーカー オーディオ システム」を採用。従来モデルよりもスピーカーが2個増えて、さらに音質が向上した。
ボンネットと、両サイドの「イージーアクセス ストレージ」を開いた状態。鳥が羽を広げているようだ。
「イージーアクセス ストレージ」は、防水の収納スペースを確保。収納システムを一新し、総容量168.5Lの完全新設計の収納システムを実現した。
ボンネットに大容量124Lの防水収納スペースがあるほか、ハンドルの下に左右どちらからでもアクセス可能な40Lの「イージー アクセス ストレージ」を装備。使用頻度の高いアイテムを収納するのに便利である。
また、右側のイージー アクセス ストレージ内部には、USB電源ソケットを備えた1.7Lの防水コンパートメントを作った。ここに、スマホなど濡らしたくないものを入れておける。
さらにリヤシート後部には、2.8Lの「イージー アクセス・リヤ ポケット」が付いた。新しいULTRAシリーズは、レクリエーション用品の収納に十分な容量を確保している。
写真右下:右側のイージー アクセス ストレージ内部には、USB電源ソケットを備えた1.7Lの防水コンパートメントがある。ここにスマホなど濡らしたくないものを入れておける。クラス最高の性能を持つ新フラッグシップ「ULTRA 310シリーズ」には、JET SKIとして初めて、カワサキの総合的技術力の象徴である「リバーマークエンブレム」が付与された。
「川」の字をモチーフとしたこのシンボルは、創業者の川崎正蔵氏が自ら考案したもの。『川崎重工は、創業以来120余年もの間、陸・海・空はもとより、宇宙そして深海と広汎な領域において、テクノロジーの頂点を目指してきました。リバーマークはさらに先へ、さらに上へと極限に挑み続けてきたその証しです』と紹介されているように、「川崎重工」の象徴である。
ボンネットのド真ん中に付けられた「リバーマークエンブレム」。JET SKIとして、初めて「リバーマークエンブレム」が付与されたモデルである。マリンレジャーに便利な広い「ULTRAデッキ」を採用。(前モデルよりも200㎜)
水中から乗り込みやすいリアのデッキスペースは、装備品などの持ち運びにも便利となった。
新たに、2本の「マルチ マウント レール」をデッキに設置することで、リア ラックやバッグ類のオプション装備を取り付けることが可能となった。
2本の「マルチ マウントレール」をデッキに付与することで、リア ラックやバッグ類のオプション装備を取り付けることが可能となった。


タイダウンキット、牽引用ではなく荷物を固定するためだけに使用する。耐荷重が88ポンドライダーの足元のデッキを、よりフラットになるように再設計された。デッキを35mm低くしたことで、足元のスペースが広がり、快適性が向上。
シートの膝部分が80mm細くなった。立って乗るときシートが干渉しないので、ライディングがしやすくなっている。
デッキを35mm低く、ハンドルグリップの高さを10mm低くしている。全体的に低重心化が進んだ。5段階に調節可能なハンドルは、ライダーの体型やライディングスタイルに合わせて変更できる。立ち上がって乗っても、座って乗ってもいいように、両方のライディングポジションに対応している。
ハンドル グリップの間隔をやや広めの設計とし、扱いやすさを向上した。
デッキ デザインの変更に伴い、グリップの高さを10mm低くしている。スロットル レバーは、操作がさらに軽くなった。
シートは、3名用の広々とした2ピースシートで、膝部分を80mm細くすることで、立って乗るとき格段にライディングがしやすくなっている。
また、フロント バンパー先端、リアのデッキを高くして、低速前進・旋回および後進時の水はねや、フット ウェルへの水入りを抑えた。
5段階に調節可能なハンドル、ライダーの好みに合わせて変更できる。立ち上がっても、座って乗ってもいいように対応している。
35mm間隔で、3つのポジションを選択できるシート。写真の赤線で囲んだ部分で調節できる。
2022年モデルには、エンジンカバーが装着された。カバーに固定されているピン(凸部)に、上図赤線の凹部を差し込むことで、ポジションの変更ができる。Jet Ski初の前後調整式シート。クルージングの快適性を高めつつ、3名が快適に座ることを考えて設計されている。シートの裏側に、ピンスタイルの取り付けシステムを採用。70mmの範囲内で、35mm間隔で3つのポジションが選択可能となっている。
また、直射日光に照らされた後でも、シートが熱くなりにくい新素材を使っている。
ピンを差し込むだけで位置を変更できるので、壊れる心配がない。二分割シートの前部分(黄線)が、70mmの範囲内で、前後に移動できる。
赤線部分が「リヤ ビュー カメラ」。カメラの後方視界は「水平方向115°±5°」「垂直方向115°±5°」と、広範囲な視野を確保している。後部座席の後方に「リヤビューカメラ」を内蔵。
ちなみにこのカメラは、クルマに設置されている「バック・モニター」ではない。同じように鮮明な映像が見られるが、バック時に自動で映らないので。使用時は、「7インチ フルカラー TFT液晶 スクリーン」の表示モードを「リヤビューカメラ」に選択する。
このカメラは、主にトーイングスポーツ時に使用するもので、水上スキーやウェイクボーダーを曳航しているときに、カメラの映像を液晶スクリーンで確認できる。ドライバーは後ろを振り返らなくても、ウエイクボーダーの動きをスクリーンで見ることができるのだ。
「7インチ フルカラー TFT液晶 スクリーン」(スピード メーター)部分に映しだされた「リヤビューカメラ」の映像。かなりハイ クオリティ。バンパーに組み込まれたスタイリッシュな「LEDアクセントライト」は、ジェットに新鮮な表情を与え、他とは一線を画す独特なイメージを確立している。「アクセントライト」は、ブルーに発光する。
「アクセントライト」は、ヘッドライトではない。このように、天候が悪い日には、“存在を知らせる”役目を果たす。バンパーに組み込まれているので、走行中にガタツキや破損の心配がない。スタイリッシュでお洒落だ。「なぜ、今までなかったのだろうか?」と思うほど、水上で存在感を発揮している。
写真上段が「アクセントライト」が消えている状態。下段がライトが点灯した状態。将来的に、「アクセント ライト のないジェットなんて……」と言われる日が来るかもしれない。
アクセントライトの電力消費量は、約1.16A。エンジンを切った後、約3分で自動的に消灯する。これはメーター(カラー液晶スクリーン)も同じで、約3分後に消灯する。
このバーに、GO PROやカップホルダーなどを装着できる。ハンドル前部に、利便性の高いマルチマウントバーを装備している。このバーに、GO PROやカップホルダーなど、ユーザーのニーズに合わせてオプションを付けることができる。
前から見た「マルチマウントバー」。フロントバンパーを50mm高くすることで、水しぶきからのプロテクション効果を強化した。また、バンパーのチャネル形状を変更、ボンネットにかかる水を外側に飛ばす構造で、ライダーの快適性を向上させている。
リヤバンパーは最も高い場所で100mm高く設計(従来モデル比)されている。船体を傾けてタイトな旋回を行うときに、デッキに水が上がりにくくなっている。
アクセルを開けている限り、水しぶきが顔にかかることはない。停止時や低速時では、リヤバンパーが長く高く設計されている関係上、フロントが下がっている印象を与える。従来はセンター コンソール上にあったキー スロットを、ハンドルの中央に配置。イグニッション スイッチは、左ハンドルに設置した。
キーは、出力を制限する「SLOキー」とフルパワーの「FPOキー」の2種類が用意されている。今回、特別に「FPOキー」にリバーマークを付加し、高級感を演出。SLOキーは従来通りのイエローとなっている。
FPOキー、SLOキーともに盗難防止のため、イモビライザー機能を搭載。
黄色いキーが、出力を制限する「SLOキー」。これを選択する場合は、イエローキーを差し込む。フルパワーモードや、通常走行時のミドル パワーモードの場合は、リバーマークの付いた、高級感あふれるブラックの「FPOキー」を差し込む。桟橋に係留する際に便利なクリートを、船体前方の左右に装備した。
船体前方の左右に装備されたクリート。係留する際は、ここにロープを通すと便利だ。基本性能は従来モデルと同様だが、以下の機構が加わった。
・4段階のパワーモード(FPO、MPO、LPO、SLO)の設置。始動時はMPOになっている。
・7ポジション設定可能な、「エレクトリック・トリム・コントロール」
・システム作動状態で加速すると、速度に合せて自動的にトリムが調整される「ローンチコントロールモード」
・リバースバケットを電動で展開する「KSRD(カワサキ・スマート・リバース・ウィズ・ディセレーション)」。
・艇をトレーラーから下ろす際にサポートする「リバースアシストモード」
左側ハンドルの「MODEボタン」で、モードを切り替える。、「TRIM(トリム)ボタン」で「ジェットポンプ」のノズルの上下角度をコントロールする。「ジェット ポンプ」のノズルの上下角度を電動でコントロールできる。合計7ポジションの設定が可能で、ライダーは水面の状態や「ライディング スタイル」に合わせて船体の姿勢を簡単に調整できる。
水面が荒れていたら、ジェットポンプの角度を上向きに調整する。フラットな水面では、コーナリング性能を高めるために角度を下げ船首を低く調整するとよいだろう。
荒れた水面を走るときは、「ジェットポンプ」のノズルを上げるとフロント部分が浮き上がって波に刺さりにくい、フラットウォーターなら、「ジェットポンプ」のノズルを下げると曲がりやすい。システムが作動している状態で加速すると、速度に合わせて自動的にトリムが調整される。「シングル モード」と「リピート モード」の2つのモードを搭載。
シングル モード:一度目の加速時にのみ、ローンチコントロールモードが作動する。
リピート モード:低速から加速するたびに、ローンチコントロールモードが作動する。
赤い点線の「リバース レバー」を、右手親指で押し込むとバックする。「リバースバケット」を、電動で展開する機能。右ハンドルの「リバース レバー」で起動し、バックや減速が可能となる。片手で簡単に操作できるので、安全に運転できる。
「フォワード」と「リバース」に加えて、「ニュートラル」モードを搭載した。
「スロットル レバー」を離し、「リバース レバー」を緩やかに押して離すことで「フォワード」モードから「ニュートラル」に移行する。「リバース」モードでは、リバースレバーを離すだけで「ニュートラル」移行する。
「リバースレバー」を押してバックした状態。このとき「リヤビューカメラ」は自動では映らない。このカメラは、クルマに設置されている「バック・モニター」とは違うので、モニターに映像を映したければ、表示モードを選択して「リヤビューカメラ」の映像を表示させる。「リバースレバー」を完全に押し込んだ状態で、「トリムコントロール ボタン(UP/DOWN)」を使用すると、エンジンの回転数を調整でき、推力をコントロールできる。
「リバースレバー」を離すと、「ドライブモード」はニュートラルに切り替わり、エンジンはアイドリング状態になる。
パワーモードは、「フル(FPO)」「ミドル(MPO)」「ロー(LPO)」に加え、ビギナーライダーが操縦しやすい「スマート・ラーニング・オペレーション(SLO)」モードから選択可能。
「フルパワーオペレーション」(FPO)キーを使用しているときは、左ハンドルの「モードボタン」で、簡単に「パワーモード」を切り替えることができる。「フル(FPO)」モードなら、エンジン出力が制限されず、業界最大馬力エンジンのポテンシャルをフルに体感できる。
「ミドルパワーオペレーション(MPO)」モードでは、FPOモードの約80%、「LPO」は約60%に出力を制限できる。
エンジン始動時の初期設定は、初心者にも扱いやすいMPOとなっている。
通常、乗る場合は、「MPOモード」だが、これでも十二分にパワフルだと感じる。
フルパワーオペレーション「FPOモード」なら、エンジン出力が制限されず、業界最大馬力をフルに体感できる。従来のモデルより、加速力が格段に上がっていると感じる。艇のスピードを時速約8km(5mph)に維持して走ってくれるので、引き波を立ててはいけない場所で走る際に便利である。速度は、「8km/h~10km/h」の間で設定ができる。
アイドリング時に右側ハンドルのボタンを押すことで始動し、起動するとドライブモードインジケーターに「5mph」と表示される。
クルーズコントロールのUPボタンを押すと、3段階でエンジンの回転数を上げることが可能。再度ボタンを押すか、スロットル レバーを握ることで、システムは解除される。
港内徐行などの標識がある場所で重宝する。
センターコンソールには2つのカップホルダーが装備されている。ペットボトルなどが固定できないので、波の荒い場所で乗るときには飛び出さないように注意しよう。2022年「ULTRA 310 LX」には、エンジンルーム全体のフタをする、エンジンカバーが装着された。マシンの剛性という部分において、かなりの影響を与えていると感じた。
写真左:カバーを外したエンジンルーム。写真右:カバーを付けた状態。
エンジンカバーは、6本のボルトで留められている。
エンジンカバーの透明な部分(黄線)から、エンジンルーム内が見える。
この日、荒れた海の中を3時間近くハードに走ったが、エンジンカバーを外してみると、エンジンのフロント部分の一部だけにしか塩分が付着していなかった。こんなに乗って、これだけしか塩分が付かないのかと、逆に驚いた。
2022年 Kawasaki 「ULTRA 310 LX」の完成度は限りなく高い。| 全長 | 3,579mm |
|---|---|
| 全幅 | 1,194mm |
| 全高 | 1,240mm |
| 整備質量 | 494kg |
| エンジン | 4ストローク・4気筒/DOHC16バルブ(SC) |
| 排気量 | 1,498㎤ |
| 最大馬力 | 221kW(300PS)/8,000rpm [US表示:228kW(310PS)/8,000rpm] |
| 燃料容量 | 80ℓ(無鉛プレミアムガソリン) |
| カラー | エボニー×ゴールド |
| 定員 | 3名 |
| 価格 | 266万2000円 |
前モデルとの違い
全長 +「209 mm」
全高 -「15 mm」
重量 +「7 kg」
燃料容量 +「2 ℓ」
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