「Pro Runabout GP」「Pro Sports GP」。「GP」クラスのマシンの意味を知っていますか?
ランナバウトクラスの最高峰である、「Pro R/A(ランナバウト)GP」クラスと、スポーツクラス最高峰である「Pro SPORTS GP」クラスのクラス名に付く「GP」について少し解説をしておく。
簡単にいえば、「GP」と付いているクラスのマシンは、”改造できる範囲” が非常に広い。レギュレーションの範囲内なら、「船体」と「エンジン」が ”別メーカー” のものでも構わないし、ハルも ”社外品” を使ってもいいことになっている。
砂盃の乗るマシンは、マリンメカニック特製 ”軽量ハル” に、推定600馬力超の ”ターボ・エンジン” を搭載しているといわれている。世界戦を戦うためのマシンだ。
スポーツクラスの片野艇も同じく、世界で戦うためのマシンである。スポーツクラスは「シードゥのHX」をベースにすることが多いが、片野はそこにK-1 Racing特製の ”1,500cc” エンジンを積んでいる。それだけに、スピードも速く、迫力のあるレースとなる。

砂盃(ゼッケン87)と生駒(ゼッケン86)のトップ争い。
Pro R/A(ランナバウト) GPクラスレース結果

満面の笑み! こんな表情が見れるのも、レース後の醍醐味だ。第5戦の勝者・田村眞沙充。念願の「Pro Runabout GP」クラスで初優勝。嬉しさ爆発! 日々の努力が喜びに変わる。見ているほうも嬉しくなる笑顔だ。
今大会、絶対王者の砂盃 肇が、第1ヒートがマシントラブルで失速したということもあるが、次はガチで勝って喜んでください。成長著しい田村から目が離せない。

今シーズン、「速さ」を見せつけている田村。「打倒・砂盃 肇」で頑張れ。25歳の田村!
上位陣が総崩れ、波乱の第5戦
第1ヒート、スタートで飛び出したのは、砂盃 肇と生駒 淳だった。それぞれインとアウトのホールショットを獲得し、合流で、僅差で生駒が前に出た。
水面はベタだ。もし、この状況で砂盃が前に出たらそのままゴールすることが多いのだが、生駒が前にいると、何回か「息をのむシーン」が必ず見られる。
これは、見る側にとって「手に汗握る ”理想的” な展開」か? とワクワクした瞬間、砂盃のマシンがペースダウン。このまま生駒の圧勝かと思ったら、次に生駒のマシンも失速した。
失速の原因は、2台とも「排気パイプが外れた」という。万全の状態で臨んでいても、モンスターマシンは何が起きても不思議ではない。過酷なサバイバルレースなのである。
トップ2人の相次ぐマシントラブルで、残りの選手が奮い立つ。熾烈なバトルは、見ていても非常に面白い。結局、このヒートは後方から追い上げた田村眞沙充がトップフィニッシュ。
第2ヒートも、生駒は同じマシントラブルで下位に沈んだ。1日2回も排気のパイプが外れてしまったのは、気の毒であった。メカニックの殿井氏も汗だくで頑張っていが、それでも「予期せぬトラブル」は起こる。それがレースなのだ。
結果、第1ヒートで優勝した田村が、第5戦を制した。

第5戦 第1ヒート。トップを走る生駒。マシントラブルで無念……。
第5戦 レースリザルト

第5戦 表彰式。1位の田村と2位の船戸が、良い笑顔を見せてくれた。
順位 |
ライダー名(チーム名) |
1位 |
田村眞沙充(SMD Racing) |
2位 |
船戸大輝(TEAM KEY WEST) |
3位 |
砂盃 肇(マリンメカニック) |
※上位3位までを掲載
第6戦 レースリザルト

第6戦 表彰式。田村の憮然とした表情と対照的に、落合の内に秘めた嬉し気な顔が印象的であった。
砂盃は「勝って当然だろう」という表情だが、表彰台の ”てっぺん” で、すでに次のレースのことを考えているのかもしれない。
順位 |
ライダー名(チーム名) |
1位 |
砂盃 肇(マリンメカニック) |
2位 |
田村眞沙充(SMD Racing) |
3位 |
落合英友(BELL FACTORY) |
※上位3位までを掲載
第5戦で優勝した「田村眞沙充」

第5戦で優勝した田村眞沙充。

国内のランナバウトクラスで、1位は砂盃、2位は生駒か田村だと思っている。この ”3位” というポジション争いが、最も熾烈な戦いだ。

初の優勝に笑顔の田村。
第6戦で優勝した「砂盃 肇」

第6戦で優勝した砂盃 肇。

圧倒的な実力を持ち、水面状況を見極めて戦い方を変えている柔軟さが砂盃の強さだ。本当にフラットな水面なら、驚異的な集中力でホールショットを獲得し、そのまま逃げ切る作戦を取る。冷静に、さまざまな角度からレース展開を分析している。
見ていれば分かるが、全てのライダーの中で、最も丁寧な走りをしているのが砂盃だ。攻撃的に走っているときでも、勢いに任せたライディングはしない。現在、彼に勝つのは至難の業だ。

年々、「強さ」をパワーアップさせている世界チャンピオン。心技体、全ての部分で他を圧倒している。他の日本人ライダーには、大きな壁であり、大変良い目標だ。彼を倒さなければ、世界も狙えない。
「最強の男」が、最も努力を続けているのだから、チャレンジャーは、それ以上の練習をしないと勝てないのは当たり前である。
第5戦で2位となった「船戸大輝」

第5戦は、田村に次いで2位の船戸大輝。

決して諦めない走り。

船戸大輝選手の「親衛隊」。一筋縄ではいかない、メカニックの辻村氏。視線が眩しい!
第6戦で3位の「落合英友」

第6戦で表彰台に上がった落合英友。

マリンメカニック製マシン「ガーコ」は、モンスターパワーだ。

丁寧な走りで、上位に食い込んでくる。

レース後、「ガーコのお陰です」と、コンストラクターの今﨑氏(写真左)に感謝を伝える落合(右)。

最高峰の「Pro Runabout GP」で表彰台に上がるのは大変だ。「支えてくれるまわりの人々に感謝です!」と落合。
中野崇寛

第1ヒートは2位でゴールしている中野。第2ヒートが5位で総合4位。表彰台が目の前だった。

「思い通りのマシンに仕上げ、思い通りのレースがしたい」と中野。

駐車場に置いてある、素敵なデザインのトレーラーが中野のピット。レース会場のビーチに移動中。
国内屈指の実力を持つ「生駒 淳」

第5戦は、排気パイプが外れて結果を出せなかった生駒 淳。彼の目を見たら、いかに集中しているかが一目瞭然だ。

不運! 第6戦も、マシントラブルに見舞われた。

アクセルを緩めない生駒のコーナリング。

生駒の強みは「鉄のメンタル」だ。本人は「自分は普通です」と言うが、まったくめげない ”超スーパーポジティブ思考” だ。 第5戦は両ヒートとも排管が外れて結果を出せなかった。翌日の第6戦は、クランク折れるという大惨事にみまわれた。
しかし、本人は「いやー、惜しかった。あのまま戦えたら、何とか出来たと思うんですよね。砂盃さんに並んだとき、マシンが跳ねて、変な着水をした瞬間、クランクが折れたのが分かりました」という。
「いやー、もったいない。悔しい」と話すが、この ”もったいない” は「エンジンが全損」ではなく、「勝てなかったこと」が ”もったいない” なのだ。あれだけ強いメンタルなら、怖いものはないだろう。

生駒艇、傷だらけのガーコ。
千木良真之

レース前日にマシンが壊れた千木良真之。下のクラスのライダーからマシンを借りて参戦した。

本来の千木良艇。シーズン前の春先には、「体とマシンが出来上がって良い状態」と言っていたが、シーズン直前に怪我をしてしまった。苦しい戦いを強いられているが、奮闘を期待したい。

普段は、優しい社長さんの千木良だが、レースではイケイケだ。

彼の調子が上がると、混戦になってレースが面白くなる。
釘﨑真治

このクラスに参戦するのは、久しぶりの釘﨑真治。

スタンドアップで練習しているだけあって、フォームがキレイだ。
Pro SPORTS GPクラスレース結果

第5戦、第6戦の勝者・片野丈一郎。

国内のこのクラスでは、片野以外に本格的に世界戦で戦うレーサーはいない。実力もそうだが、文字通り、”相手がいない”という状況となっている。幼馴染でもある田中嘉純の参戦で、久しぶりのレースに臨んだ。
片野丈一郎と田中嘉純は「竹馬の友」
このクラスで走る片野丈一郎と田中嘉純は、共に22歳。保育園からの付き合いが今も続いている。スポーツクラスは、圧倒的に片野が速い。表彰式でも田中は「ジョー(片野の愛称)は速いです」と言っていたのが印象的であった。
しかし、今はまだ届かないが、「いつかは……」と感じさせてくれる田中の言葉だった。気心の知れた友人でもガチンコ勝負。すべてのヒートで、実力に勝る片野選手が勝利した。
第5戦 レースリザルト

第5戦 表彰式。
順位 |
ライダー名(チーム名) |
1位 |
片野丈一郎(BELL FACTORY) |
2位 |
田中嘉純(BELL FACTORY) |
第6戦 レースリザルト

第6戦 表彰式。
順位 |
ライダー名(チーム名) |
1位 |
片野丈一郎(BELL FACTORY) |
2位 |
田中嘉純(BELL FACTORY) |

最近は他のクラスにも出場し、才能を見せつけている片野。スリムな体なのに体力がスタミナが優っている。最近では、そこに技術が加わっている。トリプルクラウンホルダーでもあり、世界から認められるレーサーである。

チーム・ベルファクトリーの監督で片野丈一郎の実父・宣之氏。息子と一緒に戦っている。

第5戦、第6戦で優勝した片野。

第5戦、第6戦ともに2位の田中嘉純。

片野と田中は保育園からの友人だ。
Yeah! Racing gallery!

人懐っこい誰かの飼い犬。頭をなでてから、他のライダーにインタビューを始めたら、「俺をかまえ!」と言わんばかりに、私の脛を前足で蹴ってきた。可愛いから許すが「痛てえ」し「気が散る」から、やめてケレ!

レース会場。

天気予報は”大雨”のはずが、第5戦、第6戦ともに真夏日。これも日ごろの行いがいいのか悪いのか……。

スキークラスのライダー・向井加寿子。夏の太陽のような笑顔だ。

MCの嵐 みずえさん。

暑さで汗が止まらない。熱中症には気を付けて!

いつ見ても仲がいい生駒夫妻。

チーム・ベルファクトリーの監督・片野宣之氏。炎天下の中でも率先して働いている。

生駒艇。今回はトラブルが続いた。

砂盃のマシンを整備するチーム・マリンメカニック。写真中央がコンストラクターの今﨑真幸氏、左隣が生駒艇のメカニック・殿井久悦氏。落合艇も殿井氏が整備している。

片づけることも含めてレースだ。撤収作業は絵になる光景だが、砂浜での作業は暑くてしんどい。当事者はやっていられないだろう……。

片野艇のコンストラクター・K-1 Racingの藤江功一氏。

マリンメカニック代表・今﨑真幸氏。
【JJSF 第5戦・第6戦関連記事】「Pro SKI GRANDPRIX」JJSF 全日本選手権大会 2021 Round 5 & Round 6 蒲郡大会
「Pro R/A STK」「 R/A 1100 STK」「A R/A SLTD」「A R/A STK」「M R/A STK」 「Pro Ski Open」
JJSF 全日本選手権大会 2021 Round 5 & Round 6 蒲郡大会
「A SKI STK」「A SKI-X SLTD」 JJSF 全日本選手権大会 2021 Round 5 & Round 6 蒲郡大会
「Pro R/A OPEN」「W SKI STK」 JJSF 全日本選手権大会 2021 Round 5 & Round 6 蒲郡大会
「愛JSBA shindy CUPクラス」 JJSF 全日本選手権大会 2021 Round 5 & Round 6 蒲郡大会
【関連記事】
他では聞けない、ジェットを長持ちさせるワンポイントアドバイス
2021 水上バイク国内全モデルラインナップ
2021年 BRP SEA-DOO(シードゥ)ニューモデル 国内全モデルラインナップ
2021年 ヤマハ マリンジェット ニューモデルラインナップ
2021年 カワサキ ジェットスキー ニューモデルラインナップ
全国の良いジェットショップだけを紹介するコーナー「シーゼットカンパニー」
良いジェットショップの選び方