大人気のイベント 「Out a Time Sports」も今回で5回目だ。
この550クラスはエントリー数が多いので、3つのカテゴリーに分けられた。
現役ライダーや、日ごろからジェットに乗っている選手は「550A」クラス、昔、レースに出ていても、現在はそれほど乗っていない人や大会に出ていない人が「550B」となる。エントリークラスはあくまで本人の希望制なので、どちらに出場してもいい。
そして、最高峰の「グループGP」は、「腕に自信があるメンバー」がエントリーした。現役スタンドアッパーや、ベテランスタンドアッパーなど、腕自慢の8名がしのぎを削る。
午前中に1stアタック、午後に決勝トーナメントが行われた。
1stアタックのトップタイムを出したのは小原 聡将選手(42秒50)だが、昼に行われたヤングチーム vs アダルトチームのリレー競技でアダルトチームが勝ったため、2位の芳賀 毅選手(43秒95)がマイナス2秒のボーナスを獲得。芳賀選手が1位で1stを通過した。
決勝トーナメントは、1位小原選手、2位は芳賀選手、3位が加藤 豪選手、4位が大畑 雄一選手で、この4名が準決勝に進む。
準決勝は、小原選手が41秒25で圧巻の1位通過。2位は芳賀選手の43秒35で、この2人による決勝となった。
皆が注目するなかでの決勝は、両者とも引けない戦いだ。ワンミスが勝敗を決める緊張感のなか、小原選手が41秒02、芳賀選手が42秒34と、接戦の末に小原選手が優勝を勝ち取った。
選手たちを苦しめた「くるりんぱブイ」は、手練れのGPライダーたちも苦しめた。
一番スピードが乗ってくるブイで、小さく1周しなければならない。速度を出しすぎれば大回りになるし、慎重に行きすぎればタイムが落ちる。何とももどかしいブイだ。
「このブイをどうまわるか?」が勝負の分かれ目となった。わざと大きく回ってスピードを落とさないようにする選手や、ブイに対してできるだけ小さくまわる選手など、それぞれに工夫を凝らしていた。
ここでいかに速く回れるかが、タイムとなって表れた。
この大会のひと月ほど前、コースを決める主催者の会議に編集部も参加していた。
試行錯誤しながらコースを作っていくのだが、「普通に走るだけではドラマがなくてつまらないよね。どこかのブイで360度ターンをするようにしようよ」と、加藤店長がアイデアを出した。
編集部は、過去に別のスラローム大会でこの「360度ブイ」を採用し、多くのプロレーサーが非常に苦労していたことを話した。
360度まわるブイは、上級者ほど苦労する。普段のレースコースに、そんな回り方をするブイはないからだ。とことん練習しているレーサーほど、マシンも人間もそんな仕様には作っていない。
「上級者が苦労する」と聞いた、加藤 豪選手、村尾高明選手、芳賀 毅選手の主催者の3人は、顔色が変わった。
急遽、私を含めて4人でテストライドを始めたのだ。今、この時点では、私を除く3人は、グループGPクラスの優勝候補でガチのライバルである。しかも全員、極度の負けず嫌いときた。
コースを決めるための集まったはずが、「勝つ」まで誰も止めようとしなかった。
結局、この日は何も決まらず日没により終了。ただ、皆の意識の中に、「最終ブイを360度まわる“くるりんぱ”ブイが面白い」ということだけは植え付けられた。そしてイベント当日、見事に「くるりんぱ」するコースが設置されたのだ。
WJS 結局、最終ブイが「くるりんぱブイ」で決定したのですね。
村尾 芳賀さんは、最後の最後まで反対していましたけどね。
WJS 初めてテストしたときは、村尾選手が最速タイムでした。特に「くるりんぱブイ」は一番速くて上手かったです。
村尾 レーサーは苦手ですよね。フリースタイラーはこういう動きをしますから。フリースタイルをすればいいんですよ。
WJS でも、本番の大会では、芳賀選手の「くるりんぱブイ」がとても上手くなっていて驚きました。
村尾 実は、昨日も芳賀さん「くるりんぱブイ」をメチャクチャ練習していたんですよ。
WJS 芳賀選手が、最後まで、くるりんぱブイを反対していたと聞きましたが?
村尾 はい。でも、「くるりんぱブイをなくすんなら、主催者の僕がやる気が出なくなります」とまで言って、何とかOKを出させたという経緯があります。
WJS それは大変でしたね。何か勝てないような要因でもあったんでしょうか?
村尾 はい。超負けず嫌いですから。
どんなマシンでも本当に上手に乗りこなす小原 聡将選手。天性のジェット乗りだ。
MCの村尾高明選手が「トシ(小原選手)は、何であんなふうに曲がれるんだ?」と、マイク越しにつぶやいた! 見ている全員が、それに頷いた。
非力なJS 550で、こんなスピードで最初のブイに突っ込んで行ける。
ジェットスポーツの神様から恩恵を受けている選手だと思う。小原選手は、子供のころから国際大会に出場していたので、実はレース歴も長い。
レースでも、借り物のジェットに乗ることが多いのでマシンが遅くても、それで戦わなければならなかった。どんなに遅いマシンでも、「いかに速く走らせるか?」というテーマと常に向き合っていたのだ。さらに競艇選手になったことで、その力が磨かれた。だから、今は何でも完璧に“乗りこなせる”!
キチンと勝利の挨拶をする。こういうところが素晴らしい!
芳賀 毅選手のすごいところは、「どんな相手でも、緊張せずに自分の実力を最大限に出し切れる」ところだ。ベテランのなせる業。
550時代に培った技術は健在。ミスなくブイをまわる。
小原選手(写真右)と争うのではなく、「自分自身が最高のライディングをすることだけを考えた」という芳賀選手(左)。その結果が、僅差の2位だ! 年齢は親子くらいの差があるのに、芳賀選手は凄い!
練習の成果!「くるりんぱ」も完璧に攻略。「ミスターOut a Time Sportsは、X-2クラスでも優勝を決めている! 「これ以上勝ったら、来年の出場禁止」と、MC村尾選手に宣言された! ある意味、このクラスで勝たなくて良かったかも!?
優勝候補の1人、加藤 豪選手。
加藤選手は選手であり、主催者でもある。言い訳はしないが、彼の普段の走りではなかった。少しだけ集中力が足りなかったような気がする。自分の成績よりも、「みんなが無事に1日を過ごせる」ように心を配っていた。
選手兼、記録係兼、進行係兼、裏方全般。アザーす!
集中力MAX! 本気の加藤選手!
大畑 雄一選手も速かった。芳賀選手とのタイム差は「くるりんぱブイ」。あきらかにタイムロスしていたのが残念だった。当日にイキナリ360度ターンをするのだから、フォームの修正は難しい。優勝争いをしているからこその苦労だった。
ガッツ溢れるライディング。
海老原 祥吾 選手は、普段「プロフォース」という1500ccエンジン搭載の最新鋭・世界戦略モデルで戦っている。さらに、日本の最上位クラスで3位の実力を持っている。それがイキナリ「ヴィンテージマシンに命を懸けた“おじさん”たち」とガチで戦うのだ。この世代間のギャップもこの大会ならでは。
爽やかな笑顔の海老原選手(写真右)と、ウィメンクラスで活躍する上田 真利奈選手(左)。ある意味、完全にアウェイのヤングな2人。お疲れさまでした。
MC・ 村尾“DEVIL”高明選手曰く「絵になる男・石田先輩! なぜだか分からないけど、速そうに見えてタイムは伸びず!」と、誉めてるのか、けなしているのか分からない。
石田選手が走ると、会場が盛り上がることだけは間違いない!
本来のタイムは7位の佐藤 舞旺選手より遅かったが、リレーでアダルトチームに勝ったので、ボーナスのマイナス2秒を獲得。6位に繰り上がった。
エントリーした選手の中で、最も「次に記録を伸ばしそうな選手」だ。佐藤選手も、「くるりんぱブイ」に苦戦していた一人である。理由は、「1位になろう」と攻めたからだ。若者はこうでなくっちゃ!
タイガーの野望! 『1度も乗ったことのない「加藤 豪選手のマシン」を借りて、彼より速いタイムを叩き出し、自分の偉大さを見せつける!』。しかし、攻め過ぎてまさかの転倒。夢は潰えた! 現実は甘くないが、そのチャレンジ精神はお見事!
優勝の盾を手に、晴れやかな笑顔の小原選手。
順位 | 選手名 |
---|---|
1位 | 小原 聡将選手/BESTタイム:41秒25 |
2位 | 芳賀 毅選手/BESTタイム:43秒35 |
3位 | 加藤 豪選手/BESTタイム:44秒98 |
4位 | 大畑 雄一選手 |
5位 | 海老原 祥吾選手 |
「Out a Time Sports」の始まりは、ヴィンテージ・マシンのドレスアップコンテストであった。
「時を超える(Out a Time Sports)」をテーマに、村尾高明氏が自分が大切にしているマシンを展示し、多くのジェットユーザーに喜んでもらおうと企画したことが始まりであった。
彼のポリシーは、「ジェットは走らせてナンボ」。いくら大切なジェットでも、走らせなければ意味がないと思っていた。そこで、ジェットショップ55HEAVENの加藤 豪店長と芳賀 毅氏に相談したところ、今の「スラローム・タイムアタック」の形が出来上がった。
「ジェットは素敵だ!」「何年経っても、自分のマシンを大切にしたい!」「乗りこなせる自分が素敵!」「ジェットを盛り上げたい!」といったコンセプトが、今も続いている。
2019年11月24日に行われたイベントに、ヴィンテージマシンのドレスアップコンテストとして参加。
このときの優勝マシン。
スラローム・タイムアタック。優勝は加藤 豪 選手。この大会から、今のようなタイムアタックになった。
優勝は小原 聡将 選手。
優勝は加藤 豪 選手。
このイベントの主催者・加藤店長のJETショップ「55HEVEN」。ジェットフィールド湘南の敷地の中にある。素敵なポスターが目印だ。
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