先日、エンジンではなくモーターで動くサーフボード「ウェーブシャーク・フォイル(WaveShark Foil)」という乗り物に試乗した。
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初めて乗った「ウェーブシャーク・フォイル」は過去に乗ったことのある、どんな“動力ボード”よりも工業製品としての完成度が高かった。オールカーボンの船体は高級感に満ち溢れ、ワイヤレスのアクセルレバーは「マジか」と感じるくらい高性能だった。
ボードの長さが私の身長ぐらいあり、幅も十分にあるので安定感は抜群だ。普通の人なら、立ち上がって真っ直ぐ走ることくらいなら、すぐにできると思う。しかし、ボードの下にある「フォイル(水中翼)」に、よって急に浮き上がると話は変わってくる。
初めて浮き上がったとき、相当な高さまで上がったように感じる。恐らく最高に上がっても高さはせいぜい70cm程度だと思うのだが、いきなりボードが浮き上がり、しかも安定感が急激になくなる。全然転びたくないのに、なぜか「転ばなければイケない」ような気になるから不思議だ。
初チャレンジのときは、フォイルが浮き上がると必ず転んだ。不安定? 乗り心地? それ以前に、恐怖感から「居心地」が悪かった。
その心の動きに、自分自身に「ビビるな!」「ふざけるな!」とムキになったとたん、電池の残量が切れてゲームオーバーとなった。バッテリーは約2時間持つといわれていた。このときは、55HEAVENの加藤店長と交代で乗っていたので、私自身が乗ったのは約1時間である。
それにしても悔しい。その悔しさが、「上手く乗れなかった」からなのか、「恐怖心を持った自分」に対してか分からないが、もう一度、挑戦したいと心から思った。そこで、メーカーにお願いし、再チャレンジさせてもらうことにしたのだ。
初挑戦のときは、自分の性格通り、力でねじ伏せる系イケイケ・アクセル全開で派手に吹っ飛んでばかりいた。
もともと、こういった「フォイル(水中翼)」は、サーフィンなどの動力がないボードに対し、魚が泳ぐように推進力に変えるためにある。しかし、この「ウェーブシャーク・フォイル(WaveShark Foil)」にはスクリューが装着されているので、アクセルを握ると自動で進む。
無理にボードを動かさなくても進むことに気付いてからは、強引に乗ろうとせず、バランスを重視してチャレンジした。
無理に浮き上がろうとせず、ボードの挙動を足の裏で感じながら緩やかに浮き上がってみた。すると、転ばないでゆったりと浮遊しながら走り続けることができることに気が付いた。
ある一定の角度で浮き上がると、驚くほど急激に上昇する。
ずっと浮き上がりながら走り続けたいのだが、これが意外と難しい!
緩やかに水面に着水して、また浮き上がるという動作を何度も繰り返す。そうこうしているうちに、だんだんボードの動きに慣れてきた。
「このくらいのスピードだと……」「この角度だと……」と、確認しながら走り、挙動に慣れていくと、だんだんと慌てふためくケースがなくなってきた。浮き上がっては着水、また浮き上がって、という練習しているうちに吹っ飛ばなくなった。
立って普通に乗れるようになったら、次は浮遊走行だ。
まだチャレンジ2度目の私には、意図的に「少しだけ」浮き上がらせることは無理である。
水中のフォイル角度によってボードが浮き上がるのだが、加減ができない。この浮き上がる瞬間、ボードに言いたいことは「そんなに上がるな!」である。
高く浮き上がらなければ、転ばないし安心して走っていられる。
しかし、体重のかけ方で、勝手に浮き上がってしまうのだ。最高速度が出ているときにMAXの高さに上がってしまい、コントロールできずにバランスを崩し、何度か派手に大きく吹っ飛んだ。
高い位置から、体を水面に叩きつけられるので、痛いし、転ぶのが嫌になった。どうしたらコントロールできるかを考えた。
それで思い付いたのが、「アクセルコントロール」である。いつでもどこでも「アクセル全開」にするのは愚かな方法だった。バランスが取りやすい、最適なスピード領域で浮き上がるようにした。最初は浮き上がってもゆっくりのスピードで走り、徐々にペースを上げていく。
この「ウェーブシャーク・フォイル」のワイヤレス・アクセルレバーは秀逸である。反応がすこぶる良いので、アクセル操作が簡単だ。
コツが分かるとMAXの高さでも転ばなくなった。そうなると浮き上がるのが楽しくなった。
最初に「ウェーブシャーク・フォイル」に乗って感じたのは、クルマの“テスラ”のように、無音でトルクフルだったことだ。体重83kgの私が乗っても、初速もパワーも十分だった。「モーターって、こんなにスゴイの!?」と驚いた。
2度目のチャレンジで感じたことは、「浮遊走行の楽しさ」だ。「浮き上がる」ボードの走行体験は、今まで味わったのことのない異次元の感覚だ。サーファーが使う、動力のないフォイルとはあきらかに違う。
「ウェーブシャーク・フォイル」で浮き上がると、水の抵抗が極端に減って、無音が際立つのだ。自分が浮かんでいる不思議な感覚に酔いしれる。まるでトンボになったような気分であった。望む限り、どこまでも浮遊したまま走り続けていたくなる不思議な乗りものである。
「ウェーブシャーク・フォイル」は、パーツごとに分解できる。各パーツは専用のソフトケースに納められており、組み立てに必要な工具は、六角レンチだけである。
ウェーブシャーク・フォイルの総重量が34.5kgだが、このうちバッテリー重量が18.5kgである。半分以上がバッテリーの重さなのだ。
「ウェーブシャーク・フォイル」は、バッテリーさえチャージしてあれば永遠に乗れる。今回、途中で電池切れを起こしたので、実際にチャージしてみた。
カタログデータでは、連続使用可能時間が3時間。フル充電に必要な時間は2.5時間だ。単純に考えて、充電器と予備のバッテリーが1個あれば、一日中ずっと乗り続けていられる。
最初、この「ウェーブシャーク・フォイル」に乗るときに聞いたのは、「楽しいですか?」「すぐに立てますか?」である。
担当者の答えは、「私は、立つのに1時間かかった。疲れたけれど、多分、楽しいと思う」であった。 私は即答した。「乗らせて下さい」と。
良くある話だが、メーカーの担当者が「本当の楽しさ」を知らないケースは多い。一番長く「ウェーブシャーク・フォイル」に乗り続けていた人が、最も楽しさを知っている。
私は、1度目のときに立ち上がって、「モーターで走る楽しさ」を知った。2度目となった今回は、「浮遊して走行する快感」を覚えた。スポーツは、上達すればするほど、たまらなく楽しくなる。
まだ、2回しか挑戦していないが、上手くなるほど、楽に乗りこなせるようになるはずだ。
国産の電気自動車でも、電池の表示には大きな疑問が沸く。連続可能な走行距離が、メーカーのカタログ数値通りだという話はほとんど聞かないからだ。
私が「ウェーブシャーク・フォイル」に乗ったのは1月中旬と2月下旬の2回である。場所は湘南で、日中の最高気温は7度であった。
普通、バッテリーは温度が低いと性能が落ちるといわれている。
当初、聞かされていたウェーブシャーク・フォイルの連続使用時間は2時間である。しかし実際に乗ってみると、1時間半(90分)で電池の残量がなくなった。メーカーの表記にも、「使い方で変わる」と書かれているが、気温7度で1時間半走れるのは素晴らしい性能だと思った。しかも、ずっとアクセル全開である。メーカー表記の時間は、ほぼ正確であった。
現在は、さらにバージョンアップした電池となり、連続使用が3時間可能だという。この企業の製品なら、真冬の日本の川でも、2時間半ぐらいは余裕なのではと考えている。
真冬の相模川で、アクセル全開で走っても1時間半は連続で走れる。この電池の性能は素晴らしい。
今回、2度目のチャレンジとなったが、「ウェーブシャーク・フォイル」に乗って、見て、感じるのは完成度の高さだ。いつの間にこのような未来から”やって来た”ような電動サーフボードが出来上がっていたのか? その理由は製造している企業にあった。
この「ウェーブシャーク・フォイル」を製造しているのが、世界的なAI企業として有名な「パワービジョン(PowerVision)」である。
本社は「中国のシリコンバレー」と称される「深セン市」にある。「世界で最も急成長を遂げた都市」と言われ、現在、上海市・北京市に次ぐ第3位の都市として君臨している。
深センに本拠地を置く企業には、「華為技術(ファーウェイ)」や「騰訊(テンセント)」がある。一大グローバル企業として成長しており、さらには数々のスタートアップベンチャーが誕生するなど、もはや中国国内ではなく、世界を代表するビジネス都市としての地位も確立しつつある場所だ。現在の深センは、ハードウェア開発のイノベーションの中心地となっている。
この「PowerVision(パワービジョン)」という企業は、水中や水上を走らせる高性能ドローンの分野で世界的なリーディングカンパニーとして脚光を浴び続けている。「未来を革新する」をミッションに掲げ、VR・AR/AI/ビッグデータ、スマート・ドローンなどの革新的な技術と斬新な発想でライフスタイルをより豊かにする製品の開発・製造を行っている。
「空飛ぶドローン(PowerEgg X) 」、「水上を走るドローン(PowerDolphin)」、「水中を潜水走行するドローン(PowerRay)」をはじめ、最新AIテクノロジー製品を開発している。
この「ウェーブシャーク・フォイル」の加速が“スゴイ”と書いてきたが、水上・水中を走る2種類のドローンと同じ「カーボン製のインペラー」が装着されている。世界に認められた「最新鋭のドローン」技術が、この「ウェーブシャーク・フォイル」にも惜しみなく使われている。だから、これほどまでのハイクオリティな製品が生み出されているのである。
今までに、この手の「サーフジェット系」の乗り物に試乗したことが何回かある。しかし、この「ウェーブシャーク・フォイル」には、新しい時代の到来を感じた。まさに、「人間を乗せるドローン」を作ったのである。
全長 | 1,680mm |
---|---|
全幅 | 670mm |
全高 | 1,000mm (フォイルの長さ) |
重量 | 34.5kg |
バッテリー | 2.6kWh |
バッテリー重量 | 18.5kg |
馬力 | 2馬力 (設定変更により、最大5馬力) |
連続使用可能時間 | 3時間 |
充電時間 | 2.5時間 |
定員 | 1名 |
価格 | 160万円 |
※メーカーの想定している最大積載体重は100kgまで。
素材はオールカーボン製
「ウェーブシャーク・フォイル(WaveShark Foil)」は、「人が乗る高性能ドローン」といえよう。
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