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社外品のインペラーを付けたら速くなるの? ジェットスキー(水上バイク)

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純正ノーマルのジェットに、社外品のインペラーを装着するのは「アリ」なのか?

もちろん「アリ」です!!

試しに、1度でも社外品のインペラーを装着して走ったら、純正インペラーには戻れなくなる。ただし、走行性能をそれほど求めないのであれば、純正のままで十分である。

今回、Kawasaki SX-Rを使って「社外品のインペラー」の検証を行ったが、もちろんランナバウトにもインペラーは装着されているので同じだ。ジェットスキーは、インペラーなしでは走らない。

純正インペラーと社外品では何が違うの?

純正インペラーもSOLAS製も、素材は同じステンレス。色が違うのは、社外品は研磨されているから光っている。両者の最大の違いは、ブレードの角度と厚み。計測してみると、純正インペラーが3.17mmに対して、SOLAS製は2.22mm。純正品のほうが厚くて角度がキツイ。SOLAS製のインペラーのほうが、純正よりも刃が鋭い。

形状は、インペラーのブレード(羽根)は、水中で水を切っていく構造だ。ブレードで水を切断し、回転することで後方に水を押し出して推進力に換えている。水を切断するのだから、刃は薄くて鋭いほうが切れ味はいい。ちなみに、藤江氏がインペラーの加工を依頼されたら、触ったら手が切れるくらいまで研ぐという。

しかし、耐久性を考えた場合、厚くて、あまり刃が立っていないほうが変形しにくい。インペラーにとって、水だけでも大変な抵抗なのに、水中にはプランクトンや小魚、海草など、抵抗となるものが多く混ざっている。当然、耐久性は低くなる。
純正品は、強度も含めてトータルバランスに優れていなければならないため、社外品よりもブレードが厚くなるのは必然である。

ブレードの厚みだけでなく角度も違う

純正品とSOLAS製の違いは、ブレードの角度だ。純正よりもSOLAS製のほうが、角度が緩やかである。同じエンジン馬力なら、角度が緩やかなほうが抵抗が少ないのでインペラーの回転数が増える。インペラーの回転数が上がると、エンジンの回転数も上がる。

例えば、純正品のインペラーが1秒間に10回転するとき、抵抗の少ないSOLAS製は12回転したとしよう。抵抗が多い純正のほうが、1回転で後方に押し出す水力は多い。SOLAS製のほうが抵抗が少ない分、1回に後方に押し出す水力は弱くなるが、1秒間で2回転分多く回る。なので一概に、純正インペラーのほうが水力が多いとは言いきれない。

30秒、1分、5分と時間が経過するほど、出力特性は変化する。これが、言葉でインペラーの説明をするのが難しい理由だ。数字と体感のイメージがしにくいのである。

写真左:SX-Rの純正インペラー。148径の3枚羽根、オーバルエッジを採用している。前側(入角)のブレードと、後側(出角)のブレードの角度が異なる「可変インペラー」と呼ばれるタイプである。羽根の角度は12/20~22(前側が12度で、後ろ側が20~22度。前の傾斜が緩く、後ろにいくほど角度がキツくなる。写真右:SOLAS製インペラー。純正と比べると、明らかにブレードの厚さが違う。ちなみにノーマル品は厚さ3.17mm、SOLAS製は2.22mmだった。

社外品のインペラーを取り付けたら、最高速はノーマルと同じか少しだけ下がった。しかし、「爽やかに加速する」

同じジェットスキーに、純正インペラーとSOLAS製を装着して比べると、最高速が同じでも、エンジンの回転数は純正品のほうが低い。純正品はブレードの角度がキツい分、抵抗が加わって1回転分の水力が上がるからだ。

あとで詳しく書くが、結果的にSOLAS製のインペラーに変更して、最高速はノーマルと同じか、少しだけ下がった。同じ最高速なら、エンジンの回転数が低い純正インペラーのほうが優れているのではないかと思う。

しかし、話がそう簡単ではないのは、「では、最高速に到達するまでの加速力はどうか?」という問題があるからだ。
私の体感では、SOLAS製インペラーは「爽やかに加速する」。純正のほうが、走り出しが重い感じがした。その違いは、私にも容易に感じ取れた。そして、1度「爽やかな加速」を味わってしまったら、どうにも純正のインペラーに戻すのが嫌になってしまった。

レジャーユーザーだからこそ、「爽やかな加速」「爽やかなエンジンフィール」を求めたい

ある場所から違う場所へ移動するためだけなら、社外品のインペラーなど必要ない。しかし、「走りを楽しむ」という観点からすれば、確実に交換したほうがいいと思った。私は、レースに出るわけでも、特別に加速を良くしたいとも思っていなかった。しかし、「爽やかな加速」「爽やかなエンジンフィール」というものが、これほどファン・トゥ・ライドに影響するのかと思い知らされた。

もし、この検証で「最高速が10km上がった」といわれても、きっと私はすぐにインペラーを交換しようとは思わなかっただろう。くどくど書いたが、ここでは「インペラーの交換のメリットを、数値的に説明するのは難しい」ということが伝わるだけで十分だ。体感すれば分かるからだ。

大量の水を取り込んでも、インペラーが処理できる量は決まっている

上の写真を見てもらえば分かるように、スコープゲートがどれほど水を取り入れやすい形状であっても、インペラーが処理できる水の量は決まっている。
スコープゲートから大量の水が入っても、処理しきれない水がインペラーの前とスコープゲートの入り口に停滞していたら動力にはならない。

例外として、フリースタイル艇がある。高さのあるバックフリップを1回行えば、飛び上がる過程でポンプ内の水は全て後方に吐き出される。着水時には、スコープゲートからポンプまで水が全くない状態なので、ロスなく水を取り込めるのだ。しかし、普通に走るのであればインペラーが後方に送れる量しか水を取り込めない。

インペラーの前後の向きは、口径の小さいほうが前になる。インペラーは、3枚のブレードがそれぞれ独立している。分かりにくいのでブレードの1枚だけ赤色の斜線を入れた。インペラーが回転することで、写真内の各羽根の「黄色の点線」が最初に水を切る。1枚の羽根が水を切り、その水が後方に押し出されることで推進力に変わる。ここで大事なのは、「1枚の羽根が1回に切り取った分しか、水は後方に出ない」ということである。

インペラーを社外品に交換するメリットを藤江氏に聞いた

WJS 具体的に、インペラーをSOLAS製に交換したら、何が違いますか?
藤江 エンジンの回転数が上がります。最高速も少しは変わるかな?

WJS 当然、速くなるんですよね?
藤江 遅くなるかもしれません。

WJS えっ!? インペラー1枚、4万~5万円のお金を出すのに、遅くなったら交換する意味がないと思うのですが?
藤江 アハハ。さらに、燃費は悪くなります。

WJS 悪いことばかりですよね。回転数が上がるってことは、例えば、マラソンで友達と同じ速度で走っているのに、自分だけ消費カロリーが高いってことですよね?
藤江だから、言葉でインペラーを説明するのは難しいんですよ。体感しながら理解してもらうのが1番なんです。

SOLAS製に交換して試走。純正とは「爽やかさ」が全く違った。取材協力/世界的レーシングマシンビルダー・藤江功一氏(K1 Racing Service代表)。

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