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フラッグシップモデルに装着されている「スーパーチャージャー」って何? ジェットスキー(水上バイク)

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馬力アップの要「スーパーチャージャー」THE SUPERCHARGER

ニューモデルの馬力が、今までよりも上がっている場合、スーパーチャージャーのパワーが上がっているケースがほとんどなのだ。

例えばヤマハのSVHOエンジンが、排気量は1,800ccのまま、馬力が210,250,260にパワーアップした場合、スーパーチャージャーのパワーを上げている。カワサキも同様に、エンジンの排気量は同じで、300馬力から310馬力にパワーアップさせている。

今回は、このスーパーチャージャーについて説明する。

上記の3つは、各メーカーのフラッグシップに使われている「スーパーチャージャー」である。色や形は違うが、役割は全く同じ。

スーパーチャージャーとは?

強制的に、たくさんの空気(酸素)を、エンジンに送り込むパーツ。エンジンのパワーアップの要諦は、「どれだけ多くのガソリンを燃やせるか」にある。しかし、いくら大量のガソリンをエンジン内部に送り込んでも、それだけでは燃えない。酸素が必要なのだ。パワーアップのためには、大量の空気を送り込む必要がある。その役割りを果たしているのが、スーパーチャージャーなのである。

例えば、排気量が1,000ccのエンジンに、通常の2倍の量の空気を放り込んだとしよう。すると、2,000ccの排気量を持つエンジンに匹敵するパワーを得ることができるのだ。 現代のエンジンのパワーアップは、「スーパーチャージャーありき」と言っても過言ではない。

水上バイクに使用されているスーパーチャージャーには、カワサキで採用されている「ルーツ式(写真右)」と、ヤマハとBRPが採用している「遠心式(写真左)」がある。

スーパーチャージャーには種類がある

スーパーチャージャーには「ルーツ式」、「遠心式」、「リショルム式」、「スクロール式」、「ベーン式」、「レシプロ式」の6タイプある。そのなかで、ジェットスキー(以下、ジェット)には「ルーツ式」と「遠心式」が採用されている。 左のカタツムリのような形をしているのが「遠心式」。ヤマハとBRPが採用しているものはこれである。右側の四角い箱は「ルーツ式」と呼ばれ、カワサキが採用している。

スーパーチャージャーはもともと飛行機の技術を転用したもの

エンジンの吸気に圧力をかけ、吸入する空気量を増大させる装置が「スーパーチャージャー」だ。もともとは、飛行機が空を高く飛ぶために開発された装置である。 飛行機は飛行高度が上がるほど、空気抵抗が小さくなり、速度が速くなる。高度を上げると飛行効率が良くなるのだ。しかし、高度が上がるほど空気中の酸素密度は減る。エンジン内部に同じ量の空気が入っても、ガソリンは酸素がないと燃焼しないので、パワーが出なくなる。
それを解消するために、スーパーチャージャーを使って大量の空気を強制的に多く送り込み、本来の酸素量を確保しているのである。

ヤマハ、BRPが採用する遠心式スーパーチャージャー内部にあるインペラー(写真左)。モデルが持っているのがヤマハが採用しているHKS製スーパーチャージャー。

遠心式スーパーチャージャーの解説

ヤマハ、BRPが採用。特徴は、中高速域でその真価を発揮する。
特徴
・部品点数が少なく、軽量でコンパクト。
・空気を圧縮してエンジンへと送り出す。
・加圧された空気は熱を帯びるので、必ずその空気を冷やすパーツ(インタークーラー)が必要となる。
・インペラーの回転力が弱い低速域では、パワーを出しづらい。
・エンジンの回転数が上がるほど、効果を発揮する。
・内部のインペラーの形状や大きさで、パワーを換えることができる。

構造
・エンジン(クランクシャフト)と連動して動く。
・内部にはインペラーが1枚入っている。
・エンジンの始動とともに、そのインペラーが高速回転を始め、空気を送り出す。

空気が圧縮される仕組み

遠心式スーパーチャージャーは、空気を強制的に送り出すだけでなく、スーパーチャージャ-内部で空気を圧縮している。

インペラーの回転によって、なぜ空気は圧縮されるのか?

コンプレッサー内部のインペラーが回転すると、内部の空気もぐるぐる回る。回転する物体には遠心力が働くので、空気は外側に向かって飛んで行く。すると、コンプレッサーの内壁には、遠心力によって押し付けられた空気が溜まり、圧力が高くなる。

遠心式スーパーチャージャーは、エンジン内部のクランクシャフトと連動して駆動する。スーパーチャージャー内部のインペラーの回転数が上がるほど効果を発揮する。スーパーチャージャーで圧縮された空気は高温化する。その空気をインタークーラーを通過させることで、冷却し、エンジンの内部に送り込む。

ルーツ式スーパーチャージャーの解説

カワサキ艇に搭載されている。特徴は、低速域から効果を発揮する。
特徴
・内部圧縮はせず、「送風機」としてのみの役割りを果たす。
・インテーク内は常に加圧された状態にあるので、 低回転から効果を発揮する。
・ある一定の回転域を過ぎると、ピストンの負圧による空気の吸入量が、スーパーチャージャーが送り込む空気の量より大きくなる。そのため、高回転域では効果が発揮できない。
・パワーを上げるのに、本体を大きくしなければならない。
・ルーツ式はベルトを介してクランクシャフトの動力をスーパーチャージャーに伝達する。

構造
・エンジン(クランクシャフト)と連動して動く。
・内部にある2本のローターが回転して、空気をエンジンへ送り込む。
・空気の吸入側と排出側が常に仕切られているため、停止状態でも、高圧空気が漏れることがない。

スーパーチャージャー内部での加圧はないが、インテークマニホールド側の空気は常に加圧状態であるので高温。その空気をインタークーラーを通過させることで、冷却し、エンジンの内部に送り込む。ルーツ式はベルトを介してクランクシャフトの動力を ス-パーチャージャーに伝達する。エンジンは常に加圧状態にあるので、低速域からでも高出力を生み出すことができる。

スーパーチャージャー内部は、空気の吸入側とは排出側が完全に仕切られている。このため、圧縮空気が外に漏れることがない。つまり、インテーク側には、常に高圧状態の空気が充満しているのである。だから、エンジンのスタートと同時に、加給の恩恵に授かることができるのだ。

2個のローターが、お互いに反対方向に回転することによって、ケースとローターに閉じ込められた空気が排出側へと移動していく。

内部にある2本のローターが回転して、空気をエンジンへ送り込む。空気の吸入側と排出側が常に仕切られているため、  停止状態でも、高圧空気が漏れることがない。

スーパーチャージャーから見える、各メーカーの思惑

ジェットに使われているスーパーチャージャーは、「ルーツ式」と「遠心式」の2タイプ。なぜメーカーによって異なるタイプのスーパーチャージャーを使うのか?
それは、各社が「何を重要視しているか」の違いである。

例えば、カワサキ艇に搭載されている「ルーツ式」は、ゼロ発進からの圧倒的な加速力を誇る。これは、アメリカでは最高速が67マイル(約107.2km/h)という自主規制があるからだ。トップスピードを伸ばすことができないなら、「加速に特化した」ジェットにしようとした。いかにも「男のカワサキ」らしい選択なのである。

ヤマハとBRPが採用している「遠心式」は、ルーツ式ほどの瞬発力はないが、中高速域でその真価を発揮する。基本的に遠心式は「マイルド」な特性だ。スーパーチャージャー本体がコンパクトでルーツ式より軽い。マシンの装重量が軽くなので、軽快なパワーフィールをユーザーに感じてもらおうという狙いであろう。

「ルーツ式」と「遠心式」では、特性の違いが分かりやすかった。しかし、それが変わりつつある。

「ルーツ式」のカワサキは、フラッグシップに「ECO」モードを採用している。「加速重視」だけなら必要ない機能である。それに加え、船体を軽量化。ルーツ式の爆発的加速力を生かしつつ、経済面でも配慮が見られる。ヤマハやBRPのような「マイルドさ」も、視野に入れているのだろう。

対する「遠心式」のヤマハやBRPも、スーパーチャージャーのインペラーを大型化し、従来よりパワーをアップさせている。「遠心式」の利点を残しながら、ゆるやかにハイパワー化に向かっているのだ。

つまり、ヤマハ、カワサキ、BRPの各社とも、アプローチの方向性は違えども、「経済的でハイパワー」という、方向性は同じであろうと思われる。

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