インタークーラーとは、スーパーチャージャーによって圧縮され、高温となった空気(吸気)を冷やすパーツ。空気の温度を下げることで、エンジンの性能を安定させる。エンジンのパワーアップの要がスーパーチャージャーで、その効果を最大限に活かすためにインタークーラーが必要なのだ。
熱い空気(混合気)は、エンジンの中で自然発火(異常燃焼)しやすい。混合気が自然発火すると、ノッキングという現象が起こり、エンジンの出力が低下する。シリンダーの内壁やピストンにも傷がつく。そこで、インタークーラーを使って、空気(吸気)を冷やし、ノッキングを防ぐのだ。
インタークーラーは大きければ大きいほど冷却性能が高い。しかし大きすぎると、空気がエンジン内に充満するのに時間がかかり、スーパーチャージャーの効果が出るのが遅くなる(アクセルを握ってから、スーパーチャージャーの効果が発揮されるまでの時間差を「SCラグ」と呼ぶ)。そこで各メーカーは、スーパーチャージャーの種類やインタークーラーの大きさ、形状を工夫することで、ノッキングとSCラグを減らし、エンジンのポテンシャルを最大限に発揮させようと考えているのである。
・インタークーラーの内部には、金属板が数枚入っている。
・金属板の内部に冷却水が流れている。だから金属板は低温。
・スーパーチャージャーによって圧縮された空気(高温)が、金属板と金属板の間を通る。
・高温の空気が、低温の金属板に触れることで熱交換が行われる。
・熱は温度の高いものから低いものへと伝播するので、空気の温度が下がる。
1. 冷却効率の向上
空気の通り道を空洞すると、冷却水の流れている金属板に触れない部分が冷えにくい。そこで、内部に波状のフィンを設置して、低温部分を増やすことで、ムラなく空気を冷やしている。
2. 整流効果の向上
インタークーラーの入り口では、乱気流が発生しやすい。それを防ぎ、空気をスムーズに内部へと送り込む。
3. インタークーラーの補強
インタークーラーの入口と出口の温度差は約100℃。あまりに大きな差のため、インタークーラーが「ひずむ」可能性がある。内部にフィンを設置することで、変形や破損を防いでいる。
カワサキ、ヤマハ、シードゥ、各メーカーのインタークーラーは、「空気を冷やす」という働きは同じだが、何を重視しているかで大きさや形が全く違う。そこには各社が採用しているスーパーチャージャーの特徴も大きく関係している。
エンジン本体とほぼ同じ、大サイズのインタークーラー。
「ルーツ式スーパーチャージャー」を採用しているカワサキの場合、インタークーラーに求めるのは「冷却性能」のみ。
ルーツ式は止まっていてもエンジンの中に空気 が充満しているので、スタートと同時にパワーを発揮する。つまりSCラグがない。だからインタークーラーをいくらでも大きくできるのだ。冷却性能の高さが伺える。
ヤマハのスーパーチャージャーは「遠心式」と呼ばれるタイプ。エンジンの回転数に応じてパワーが上がるのが特徴で、高回転域になるほどその効果が大きい。
一方、低速域ではパワーが出にくく、SCラグも発生する。そこで、ヤマハは圧縮された空気が少しでも早くエンジン内部に届くように、コンパクトサイズのインタークーラーを採用している。
シードゥの中サイズのインタークーラーは、船体の最後尾に装着されている。
シードゥはヤマハと同じ「遠心式」ス―パーチャージャーを使用。インタークーラーの大きさを見る限り、SCラグの低減よりも、遠心式の利点である、高回転域での性能安定を意識していることが分かる。
両サイド三角の部分は吸気口と排気口で、空気を冷やすのは、中央の長方形の部分。カワサキのインタークーラーを横にしたような構造となっている。エンジンルーム内のスペースを効果的に使用するために、特徴的な形となっているが、極めてオーソドックスなサイズである。
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