夏にジェットスキー(以下、ジェット)に乗ってから、しばらく乗らない場合に最も気を付けるべきことは「錆」です。1年中乗っていれば問題ありませんが、海水が付着したまま放置すれば、最悪1日で錆びます。
だから、長期保管の前には徹底的な水洗いを行い、大切なジェットから塩分を取り除いておきましょう。エンジンルーム内部は、ジェットショップに持ち込んで、グリスアップなどの防錆対策を施しておくと安心です。
ジェットは、「乗り続けている時よりも、保管時のほうが劣化速度は速い」ということを覚えておいてください。ジェットショップに持って行く前に、水洗いはキチンとしておくことをおススメします。
ショップのスタッフだって人間です。キレイに手入れしてあるジェットを見たら「こんなに大切に扱っているのだから、もっとキレイにしてあげよう」と思うものです。
信頼できるプロのジェットショップにメンテナンスをしてもらうことを本誌は推奨しています。理由は、我々にはできない「ジェットが長持ちする方法」を知っていて、それを「安い金額」で行ってくれるからです。
ところで皆さんは、ジェットショップがどんなメンテナンスをしているかご存じでしょうか? ここでは、意外と知らないプロショップが行っているメンテナンスを紹介します。
作業をお願いしたのは、ヤマハ正規販売店「ビーチマリン(埼玉県久喜市)」です。あなたのジェットが、どんな整備をされているのか、知っておいて損はないですよ。
上記の作業は、自分でできるものもあれば、プロでなければできないものもあります。また、同じヤマハの正規販売店であっても、地域によって条件が異なります。
例えば、沖縄の海のように塩分濃度の濃い場所なら塩害対策が最重要事項になりますし、北海道や東北のように、凍結防止対策が必要な地域もあります。
日本は南北に長い地形なので、その環境によってメンテナンス内容も変わってくることを理解してください。
ユーザー自身が確認できる項目でも、プロの目を通せば、また違った見方もあります。不具合の発見と適切な処置は、数多くの症例を修理してきたプロショップでしかできません。
ジェットショップに持ち込まれたジェットに対して、最初に行うのは「外観の確認」です。一部のジェットを除いて、大抵の船体はFRP(強化プラスチック)製です。FRPは衝撃に弱く、ぶつかると割れたり欠けたり、破損しやすい。なので、ジェットの下に入って、船底もチェックします。
さらに、シートやデッキマット、ハンドルグリップも体を支える大切なパーツなので、痛みがないか確認します。
船底に潜って、スコープゲート周辺も確認します。このとき、スコープゲートから中を覗くとインペラーが見えます。羽根が破損していたり、ドライブシャフトに釣り糸などの異物が絡まっていないかもチェックします。
ドライブシャフトに異物が絡まっていると、他の部分に負荷がかかって故障の原因になります。「ポンプまわり」は駆動の要のパーツが満載なので、常に万全の状態にしておきたいところです。
この作業は、特別な工具と知識が必要です。ヤマハのマリンジェットの場合、「定期的にグリスアップを行う場所」が決まっています。
グリスアップも増し締めも、工具さえあれば誰でもできますが、フロントハッチの隔壁を外したり、ヒューズボックスを外したりといった作業が必要で、実は目的の場所にたどり着くまでが大変なのです。
だから、専門のショップで診てもらう必要があります。
オイルレベルゲージを抜いて、オイルの汚れと残量を確認します。
オイルの量を測るときは、船体を平行にして、エンジンを始動し、アイドリング状態で5分以上、暖気運転をします。陸上でエンジンを始動する際には、水道にホースを繋いで水を流し、エンジンを冷やしながら行ってください。
暖気運転が終わったら、エンジンを停止してそのまま5分以上待ちます。オイルが安定したら、オイルレベルを確認してください。
オイルの交換が必要な場合は、オイルチェンジャーを使って交換します。オイルフィルターも、年に1度は交換しましょう。
ユーザー自身でオイル量の確認はできますが、オイル交換やオイルフィルターの交換は専門店でやってもらった方が安全です。
オイルがこぼれていないか、ビスが緩んでいないか、コード類が抜けていないかなどを確認します。
プラグの確認は、最初にエンジンカバーを外します。4気筒の場合、プラグは全部で4本あります。プラグキャップを抜いて、中にあるプラグを外します。このとき、プラグ孔に水や異物が入らないように気を付けてください。
外したプラグを点検し、異常があれば新品に交換します。
プラグは意外ともろいので、外れないといって無理に回すと簡単に折れます。
固着している可能性がある場合、無理に外そうとせず、ジェットショップに持って行きましょう。プラグを折ると、大がかりな修理になって修理金額も高くなります。
バッテリーの電解液には、強い毒性と高い腐食性を持つ硫酸が含まれています。誤って触ったり目に入ったら、火傷や失明の危険があります。くれぐれも取り扱いには気を付けてください。特に小さな子供がいるそばでは、作業をしないようにしましょう。
最近のバッテリーは、電解液が漏れない「密閉式メンテナンスフリータイプ」もあります。バッテリー液の補充の必要もないので、ビーチマリンではこのタイプを薦めているそうです。
エアフィルターは、空気をキレイにして、クリーンな空気をエンジンに供給するためのパーツです。目的は「空気のろ過」。エンジン内部にゴミや砂が入らないようにするのがエアフィルターの役割です。
エアフィルターが目詰まりしたままだと、十分な空気が送り込めず、燃焼のバランスが崩れてエンジンの不調や燃費の低下に繋がります。定期的に交換したほうがいい部品のひとつです。
今回、紹介している内容は、ワールドジェットスポーツ2020年6月号で、写真入りで詳細な解説をしています。自分では「不具合もないし快調!」と思っていても、プロの目から見たら「これはヤバい」というケースも多々あります。
ショップで診てもらったら、アナタのジェットが今よりもっと快適になるかもしれません。
決定的なトラブルが起こる前に診てもらっておけば、修理費も格段に安くすみます。ショップによって値段は違いますが、メンテナンス費用は意外と安く設定されています。
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