憧れのジェットスキー(以下、ジェット)を入手したからといって、毎日乗ることができる幸せな環境に置かれているユーザーは少ない。たいていの場合、週に1回、よくて2~3回乗れるかどうかだろう。特に冬の間は、気候的な問題で「乗りたくても乗れない」という人もいる。しかし、ジェットも「機械もの」である以上、動かさずに置いておくだけだと、コンディションを悪化させる要因のひとつとなる。
次にジェットに乗りに行くまでに3カ月以上、間が空いてしまうようなら、「長期保管メンテナンス」をおススメしたい。大抵、どこのジェットショップでも引き受けてくれる。ショップによってメンテナンスの内容が異なるので、料金などの詳細は問い合わせてみよう。
冬の間など、長期間乗らないことが分かっているなら、「いつでもジェットに乗れる状態」を保つため、然るべき方法で保管することが重要だ。プロショップの適切なメンテナンスを受けていれば、そう簡単にジェットは壊れないし、シーズンに入ってからのトラブルを未然に防ぐことができる。
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点検メニュー | 目的および整備事項 |
---|---|
水を通して陸上アイドリング | 異音や異臭などで各部の不具合を見つける |
ウォーターボックスの水抜き | エンジン内部への湿気上がりを防ぐ |
オイル&オイルフィルターの交換 | オイルをクリーンに保つ |
全ての可動部の防錆・潤滑 | スムーズな動きを保ち、固着を防ぐ |
シリンダー内部の防錆・潤滑 | 防錆剤でコーティングする |
スパークプラグの点検 | 汚れと劣化具合をチェック |
バッテリーの点検&充電 | 端子の汚れを確認。電圧を適正に保つ |
ポンプ内部&インペラーの点検 | 損傷、クリアランス、異物を確認 |
ホースクランプの増し締め | ホースの抜け防止。ホースの劣化も確認 |
ドレンプラグの点検 | 浸水防止。パッキンの損傷をチェック |
燃料の保全 | 燃料タンク内のガソリンの水抜き |
※上記は代表的な点検項目。実施内容と費用は、ショップやジェットの状態によって異なる。事前に見積もりを出してもらおう。
いくらカラカラになるまで水分を拭き取っても、ジェットの内部には水が残ってしまう。これは、ジェットの構造上、仕方ないことだ。この水がエンジンルームの各部を錆びつかせ、故障やトラブルを引き起こす原因となる。だから、できるだけ船体内部に水分を残さないようにしたい。
下記は、水分が残る代表的な場所だ。この箇所は、特に注意して水分を拭き取っておきたい。
「ウォーターボックス」とは、ジェット特有の排気系パーツである。エンジンの冷却水と排気が同時に通り、その役割は排気音の低減、水の逆流防止、排気と排気管の冷却などである。
ボックスの内部は、仕切り板やパイプが複雑に組み込まれ、迷路のようになっている。そのため、エンジンを空吹かしするだけでは中の水は完全に抜けない。1リットルぐらいは残ってしまう。
長期に保管しているうちに、中の水が蒸発してエンジンルームに湿気(水分)が浸入し、錆が発生する。最悪、ピストンやバルブなどが固着するといったトラブルも起きる。
できる限り、ウォーターボックス内部に残った水を抜き取りたいところだ。
ウォーターボックス内の水を抜くには、排気パイプを外し、細いバキュームチューブで水を吸い上げるのだが、これは専用の工具がないと難しい。無理せずショップにお願いしよう。
燃料タンク内では、気温の変化で膨張・伸縮を繰り返し、空気(湿気)と揮発したガソリンが混ざって水分を作り出す。また、タンクキャップ周辺の水分を吸い込んでいる場合もある。
水はガソリンより比重が重いので、タンクの底に沈んでいる。この水が、燃料をエンジンに送り込む「フューエルポンプ」を錆びつかせる原因となる。さらにその錆が、「フューエルインジェクター(燃料噴射口)」を詰まらせてしまうこともある。そのため、ガソリンタンクに沈んだ水を除去する必要がある。
水を抜く工程は、
① タンクから燃料を1滴残らず抜く。
② 「油水分離器」という専用の器具を使って、水とガソリンを分ける。
③ 水を分離したら、ガソリンをタンクに戻す。
これは、慣れれば自分でもできる作業だ。
長期間乗らないと分かったら、格納前にオイル交換を行う。厳密に言えば、保管中に多少は酸化するが、最近のオイルは昔に比べて高品質だ。
開封後1年経っても、ほとんど劣化しないので、格納前にオイル交換をしてもオイルの寿命が極端に短くなることはない。オイルの性能をシビアに追求したい人は、春先になってから交換したほうがいいだろう。
長期間乗らないとバッテリーは自己放電して、性能が低下する。ジェットに乗らない期間でも、1カ月に1度はバッテリーを充電しよう。電気不足に陥ってしまうと、バッテリーの寿命が極端に短くなる。
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保管中、シートをロックした状態だと内部に湿気がこもり、結露が発生しやすくなる。船体とシートの間にウエスなどを挟んで、少し隙間を開けて風通しを良くしておこう。船内に除湿剤を入れるのも有効だ。
冬場の格納前に、プロショップで適切なメンテナンスを受けていれば、そう簡単にジェットは壊れない。壊れてから修理に出すよりも、「壊れる前」に点検を受けておいたほうが、結果的に時間もお金もかからない。
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