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なぜ、マリン関係者の話を無視するのか? 兵庫県の見解をトコトン聞いた! 「水上バイク対策ルール」決め方に疑問?(ジェットスキー)水上バイ

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「悪質水上バイク撲滅」のため、現在、兵庫県が新しい条例を作成中。今年6月の県議会に提出し、来年(2023年)夏からの適用を目指す

今月2日、斎藤元彦兵庫県知事が、水上バイクの危険運転などに対する新たな対策を発表した。兵庫県が現在進めている「条例改正案」は、「水上バイクの危険行為について、最大20万円とする罰金の上限を引き上げる」、「酒を飲んでの操縦について、新たに罰則を設ける」ことを新たに盛り込んだ。

条例とはいえ、罰則規定のある「法」なので、県議会の承認を得る必要がある。今年6月の県議会に提出し、来年夏からの適用を目指すという。

兵庫県が発表した「条例改正案」

兵庫県は、昨年8月、明石市で起こって大きな社会問題となった水上バイクの危険走行と、同年9月には淡路市で起きた水上バイクによる衝突事故で、3名の方が亡くなった事故に対し、県民の不安がかつてないほど高まっている。そこで県条例の改正を進めているが、内容が検討されている条例は、次の2つである。

1 危険行為に対する罰則の強化

現行ルールでは「罰金20万円以下」となっているが、罰金の上限を引き上げる

2 飲酒操縦に対する罰則の創設

現行ルールでは「罰則なし」となっているが、これに罰則規定を設ける

罰則の詳細は、今後、公安委員会で検討を進めることになっている。

今、一番水上バイク業界が問題にすべき『兵庫県の「独自ルール」』とは

上記の条例改正のほか、全国で初めて「県内の海域すべてを対象とした独自ルール」を設けることが検討されている。これは、「優良ユーザーの拡大」を望むもので、県内すべての海域を対象としたルールの設定は全国初となる。
いくつか対策案が立てられているが、このなかで特筆すべきは以下の3つである。

区域沿岸から概ね100mは徐行区域とする

安全性等の観点から適当でない場合は、当該地域において、ローカルルールを設定することも可能

速度徐行区域では時速8km以下

遊泳者などが近い場合には、時速5km以下

遊泳者などの安全確保のため、概ね100m以上離れて航行

やむを得ず100m以内に近づく場合は、時速5km以下
※地域により状況が異なるため、上記の3項目の距離や速度は「概ね」の目安となる

「独自ルール」が、善良な水上バイク乗りが「守れないルール」となっている理由

水上バイクユーザーなら分かると思うが、この独自ルールは、「守りたくても、守れない」内容が含まれている。

区域沿岸から概ね100mは徐行区域とする

【守れない理由】 誰もいない、危険のない場所を徐行する意味がない

速度徐行区域では時速8km以下

【守れない理由】 アクセルを握らないで進む速度(アイドリング速度)は、市販艇の場合約10km/h。アクセルを開けていなくても、それ以上の速度が出てしまうマシンが多い

遊泳者などの安全確保のため、概ね100m以上離れて航行

【守れない理由】 水上バイクで走行中に、100mも離れた遊泳者は認識できない

罰則規定のない独自ルールが決まった。改正条例は決まっていない。

なぜ、「守れないルール」が作られたのか?

今回、兵庫県が進めている「自主ルール」が、あまりにも水上バイクユーザーが「守れないルール」になっていることに疑問を持ったので、直接、兵庫県の担当者に話を聞いてみることにした。

兵庫県の「独自ルール」は、どのように作られたのか?

WJS 悪質水上バイク問題に関しては、「待ったなし」で取り組む最重要課題だと、我々マリン業界も考えています。伺いたいのは、会議に参加しているマリン関係者が「守れるルールを作って」と発言しても、それが反映されていないのでは? という疑問があるからです。
兵庫県 今回の「独自ルール」に関しましては、ある程度「分かりやすい数字を明記したい」ということがあります。

WJS それは理解できますが、「兵庫県の海域全てを徐行」にするのではなく、「危険を抑止すべき場所」に特定すべきだという意見もあります。
兵庫県 兵庫県の場合は、今回の事故が起きた地域以外からも苦情が来ております。そのため、「日本海も含めて全域を対象にすべきだ」という声が前提としてあるからです。

WJS 現実問題として、誰もいない海で、岸から100m徐行することが守られるのか、またそれを「守る意味があるのか?」と疑問に思います。
兵庫県 そこは「ローカルルール等を定めて走れるようにする」ことも、ケースによってはできます。100mも「概ね」って書いておりますから。

WJS 本来であれば「ローカルルール等」で徐行すべき場所を定めるべきはないのですか? 参考事例として挙げられている「天の橋立」は、日本有数の観光地です。ナンパ目的で近づいてくる水上バイクも多いので、「100m以内は徐行」にしなければならないのは当然です。
理由がある場所だから徐行させるのは分かりますが、「県内全域で徐行」というのは、実質的な「水上バイクの禁止」と同じではないのですか? 「水上バイクとの共存」と兵庫県は言われていますが、アクセルを握らないでも時速10km出る乗り物に対して「徐行速度8km/h」というのは、前提からして無理があると思います。
兵庫県 そこがなかなか分かっていただけないところだと思います。だから「概ね」って書かせていただきました。「何が何でも」ではありません。あくまでも目安なんです。

WJS それと、遊泳者から100m離れなければならないというのも、水上バイクの走行中は、100m先に泳いでいる人は見えないです。
兵庫県 それらにも必ず「概ね」って但し書きを入れております。「100m以内に近寄っても、遊泳者に気づいたら徐行してね」っていう話なんです。数字を分かりやすく入れないと、県民には伝わらないからです。

WJS 大変失礼な言い方ですが、本気で危険な水上バイクを撲滅させようというよりは、「兵庫県は、こんなに頑張っています」というためのルールにしか聞こえません。
兵庫県 そんなことはありません。すべて「概ね」と但し書き等を入れてあります。

あくまで「自主ルール」であり、「罰則規定はない」と言われても不安は残る

WJS 第1回、第2回の検討会議の場で「誰もが守れるルールを作って欲しい」と、マリン関係者が発言をしました。それで条文が変わったのは「概ね」といった但し書きが加えられただけと聞いているのですが、そうなのですか?
兵庫県 これは「条例ではありません」。罰則規定の発生しない「自主ルール」の話です。

WJS それでは、なぜ守ることのできないルールを作るのですか?
兵庫県 一般的に「100mくらい離れていれば安心できるだろう」という声が会議の中で出ていたものですから。会議の意見を集約してこうなりました。「県民に分かりやすく伝える」という立場の視点があります。

WJS 岸から100mは徐行、遊泳者から100mは徐行、徐行速度は8km/h以下。非常に分かりやすいのですが、実際には守りたくても守れないルールになっています。
兵庫県 ですから「概ね」とか「但し書き」を入れさせていただいています。

WJS 守りたくても守れないルールを決めたのは、県民に安心してもらうためということですか?
兵庫県 それはもちろんあります。水上バイクユーザーのためだけにやっているわけではありませんから。水上バイクユーザーも県民も「兵庫の海を利用するすべての人々が共存共栄できる」ように、対策会議で意見をしてきたってことなんです。

WJS それは良く理解できますし、心から「ご尽力に感謝します」と言いたいです。でも、「県内全域で岸から100m徐行」というルールだけは、どうにも理解できません。
兵庫県 それは、「ここと、ここと、ここと、ここは徐行です」と言われても、分かりにくいんです。それをやっていくとなると調査など、かなり大変なことなんです。条例ではそういう調査をするべきですが、今回は「罰則規定のない」兵庫だけの「自主ルール」なんです。

WJS 「100m徐行のルール」は、条例ではないし罰則規定もないから気にするなということですか?
兵庫県 気にするなとまでは言いませんが、そこまで厳格に「これをするな」「あれをするな」と仰ると何も決まらなくなります。危険な水上バイク対策の初めの第一歩、これから始まるルールなんです。

悪質水上バイクを撲滅するため「何が何でも守れるルール」を作ってもらうことを期待する

WJS 例えば明石市のように「危険走行に懲役刑」というように、罰則を強化することはできないのですか?
兵庫県 明石市のように、特定の場所は個別のルールを作っていけばよいのですが、県ですから「共通の守れるルール」でないといけないのです。

WJS 「兵庫県の海域は、全て岸から100mは徐行」というルールについて、昨日(2月2日)の斎藤知事の発表では、今年6月の兵庫県議会で条例案を通して、来年夏の施行を目指すと聞ききました。6月までには3カ月ほどありますが、再考の余地はあるのですか?
兵庫県 何度も申し上げていますが、この「100m」というのは違うんです。罰金刑などの条例に関しては議会を通さなければなりませんが、この「自主ルール」に関しては、リーフレットを作成する予算もいるので2月中に対策を確定するということです。

WJS ではもう、この内容は変わらないと言うことですね?
兵庫県 ですから、「概ね」というように「但し書き」を加えて、「この方向で、第一歩から進めましょう」という話なんです。実際の対応に関しても「概ね」と書かれているので柔軟な対応が取られるであろうと考えています。

WJS 違反しても罰則規定がなく、しかも「概ね」と書かれているので柔軟な対応をしていただけると仰られますが、我々水上バイクの業界は、そんなことは望んでいません。行政側も大変な思いをしていることはよく理解できました。しかし、悪質水上バイクは断固として許せませんし、兵庫県が決めた条例は何が何でも順守させたい。だからこそ「守るべきルール」にして欲しいと思っています。
兵庫県 「危険な水上バイクをなくしたい」という気持ちは同じです。

WJS 「条例」と違い、「自主ルール」には罰則規定はないと仰いますが、2月2日の斎藤知事が発表されたあと、各メディアの報道を見ると「罰金と100m徐行」という文字が一緒に並んでいました。あれを見た普通の人は、どちら条例でどちらが自主ルールかなんて違いが分からないと思います。
兵庫県 マスコミには、キチンと自主ルールと条例との話は伝えてあります。

WJS 「罰則規定がないから県全域」というのではなく、将来的には「この場所は危険だから徐行する」という地域を指定して、違反者には厳しい罰則を科せるようにすれば良いと思います。我々も順守させることに協力したいと思っています。
兵庫県 罰則というのは、いろいろなことが複雑に絡んでいて、簡単に決められはしません。お話を聞いて考え方は十分に伝わりました。だからと言って「そうします」と言えませんが、ひとつの意見、考え方として理解をしました。いずれにせよ、良くするための第一歩であるのです。

昨年の社会問題化した水上バイク問題に対して、兵庫県はすみやかに県民に安心を提示する必要があった。

一般の人たちを「不安」にさせるような悪質水上バイクは、今すぐいなくなって欲しい

兵庫県の担当者は、「悪質・危険な水上バイクと戦っている人」であった。会話をしていて何だか同志と話しているような気分になった。
今回、話をして分かったことは、我々水上バイク関係者に対して、多大な配慮をしていただいたということだ。本来、「県独自のルール」を決める会議に、マリン関係者の意見を聞く必要もなかったのである。

昨年夏、死亡事故など危険な水上バイクが社会問題化したことで、兵庫県は県民の不安をなくすための努力を示す必要があった。そのためには、皆が分かりやすく安心できるルールや条例を作る必要があったということだ。本誌と親交のあるマリン関係者の話が通らなかったのは、兵庫県は「県民に安心してもらうルール」を提示することが最優先の事項であったからであろう。

確かに、「陸から100mは徐行」と具体的な数字を提示するほうが、万人に分かりやすい。さらに条例ではなく「自主ルール」とすることで、罰則規定も設けていない。しかも「概ね100m」と書かれているのだ。水の上の「概ね100m」とは極めて曖昧な表現なうえ罰則規定もないルールなのだ。
つまり極端な話、誰も罰せられないルールなのである。「皆様、岸から100mは徐行にしました」というフレーズを聞くと安心感を覚える人が多いはずだから出来たルールなのだ。

私にも理解できるように、懇切丁寧に説明してくれる担当者の話を聞いていて感じたのは、「悪質な水上バイクの存在が、県民に不安を与えている」からこその条例であり、独自ルールなのだ。

今回の兵庫県のルール作りの目的は、県民から「危険な水上バイクによる不安」を減らすということが優先されたから”この”ルールなのだ。しかしこれが前例となって、「臭いものには蓋をしろ」とばかりに、日本全国で「100m徐行」と言われれば、水上バイクに乗る人が激減するのは目に見えている。それは、我々水上バイク業界の望む未来ではない。

話し合いの中で、兵庫県よりも、むしろ「優良な水上バイクユーザー」の方が、ルールを守ることにコダワリがあるということに気が付いた。ルールを作る側は、ある少数の違反者は出るという考えがあると思うが、水上バイク側は「もうこれ以上、最低なイメージの更新」は嫌だという強い意志がある。

できれば、常識的に守れるルールを作り、キチンと罰則化し、違反者には相応の罰が下るようなシステムが全国的に作られることを望む。そして、「優良なユーザー」が白い目で見られるのではなく、「悪質水上バイクが悪い」という認識を、全ての皆さんに持ってもらいたいと心から願っている。

飲酒運転に罰則規定がなかったことが驚きだ。


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