ヘルメットのデザインは、その人となりを映す鏡。よほど、決まったデザインのヘルメットを被らなければいけないのでなければ、唯一、「その個人」を主張できるアイテムなのです。F1などでも、マシンはスポンサーをアピールをするためのもの。ヘルメットは、そのレーサー個人をアピールするためのものと考えられています。だからこそ、「格好良く」なければいけない。 時代ごとに、流行のデザインも変わってきます。
最先端のデザインヘルメットを紹介する本コラムも4回目。今回は、今年のヒロキックスデザインの最新トレンド、清野泰二選手の最新モデルです。この塗装はトップのクリアに100%艶消しクリアを吹いて仕上げてあります。どのようにペイントをしていくのか、仕上がるまでの製作過程をご覧ください。
清野泰二選手の場合、デザインは「全てお任せ」なので、「ヒロキックスデザインの最新トレンドを作る」というコンセプトで塗っていく。
このヘルメットの要諦は「星を見せたい」。最初に、下処理を施した白地の帽体に、大小100個以上の星を描く。その星に対して「何色が似合うか」を考え、ブルーのラインに決めた。そのブルーも、キャンディ塗装の派手なブルーと、ソリッドな水色の2色を使うことにした。
「星」と「ブルー」が決まったところで、それに合う色を決める。候補は暖色系のオレンジや黄色、ピンクだが、今まで清野選手に使ったのことないオレンジを選択した。
TAIJIと描かれた文字の周りのデザインが、佐々木氏が「ブラッシング」と呼んでいる、今年のトレンド。優しげで、温かみがあって、素敵な絵柄である。
最初、100個以上描いた星は、上から他の色を重ねたためにずいぶんと数が減ってしまった。そこで、星を目立たせるために、後頭部の赤いラインを互い違いにした。こうすることで、さらに星が際立つ効果がある。サイドからフロントにかけては、佐々木氏が「ブラッシング」と呼ぶ手法で塗られている。ペンキの刷毛で刷いたようなラインには、9色以上の色を使っている。
ジェットスキー以外のメジャーモータースポーツで、「ブラッシング」ペイントを施したヘルメットをちらほら見かけることからも、これが2020年のトレンドになると佐々木氏は予想している。
清野選手は、「どんな色でもどんなデザインでも似合う」と佐々木氏は言う。だから、その年のヒロキックスデザインイチオシのデザインを描く。2020年は「100%艶消しでカラフル」という相反する要素を融合させた会心の仕上がりとなったという。この色違いのヘルメットの製作も、構想しているという。
もしこれが、艶消しではなく、通常の艶のあるヘルメットだとしたら、バイクショップで売られている「ちょっと派手めな吊るしのヘルメット」に見えてしまい、「高級感がなくなる」と佐々木氏。艶消しにすることで、ラグジュアリー感が出るという。「艶消しのヘルメットというのは、持つ人が限られる」。理由は、艶消しのヘルメットは手入れが難しいから。艶のあるヘルメットは汚れたら磨けばいいが、艶消しヘルメットの場合、汚れても、せいぜい濡れたタオルで拭くくらいしか手入れの方法がない。キレイに磨いても拭いてもいいが、そうするとヘルメットに艶が出てしまうので、高級感がなくなるという。
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