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市販艇最高馬力を誇るジェットスキー「カワサキ ULTRA 310」世界的コンストラクターが語る・その魅力とは! (水上バイク)

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「市販艇最高の310馬力」という言葉に惑わされない、カワサキULTRAの本当の実力とは

世界的コンストラクター、中田正樹氏(ちゅーた先生)が語る「ULTRA310R」のスゴさ

市販最大310馬力を誇る最強ジェットスキー(以下、ジェット)、それがカワサキの「ULTRA 310R」だ。しかし、馬力の大きさや加速の速さよりも、「走破性の良さ」に惹かれ、「波で荒れた海上でも、常に安定して走れるところがいい」と言う人がいる。

今回、ULTRA 310Rの魅力を、世界を股にかけて活躍するコンストラクター・中田正樹氏に語ってもらった。



大馬力=スピードではない
荒れた海でもグイグイ前に進む
波の衝撃に負けない。それがULTRAの魅力

ULTRAは、どんな水面でも、どんな速度域でも、常に安定して走れるそれが一番の魅力です

WJS ULTRA 310R(以下、ULTRA)といえば、「市販最大の310馬力」というイメージが強いですが、やはり中田さんも、この部分に惹かれるのですか?
中田 いいえ。正直なところ、馬力で魅力を感じるところはありません。「大馬力=スピード」でもないし……。実際、310馬力より小さな出力でも、速い艇はありますから。

WJS それでは、「これぞULTRAの真骨頂」と思うのは、どのような部分ですか?
中田 波切りがいいところです。他の機種に比べてULTRAは、どんな水面でも、どんな速度域でも、常に安定して走れる。それが一番の魅力ですよね。

WJS 波切りの良さを感じるのは、どんな場面ですか?
中田 荒れた海面です。波間を走るとき、必ずしも正面から波に入るとは限らない。例えば、右斜め前から波に入ったり、左斜め後ろから入って、波を飛び越えることもあります。このように、波を斜めに突っ切って走ると、普通のジェットは船体が大きく傾いて不安定になりやすい。
でもULTRAは、斜めの方向から波に入っても平気。月並みな言い方ですけど、波を切り裂くようにして走る。船体の傾きは最小限。波でノーズが振られない。荒れた海上でも、グイグイ前に進んでくれる。だから乗りやすいんですよ。

WJS 波の影響や水の抵抗を受けにくい、ということですよね?
中田 そうです。船体が受ける水の抵抗は、想像以上に大きいんです。分かりやすく説明すると、ナイフを下向きにして机の上に落とすと、まっすぐ下向きのまま刺さりますよね。でも水の中に落とすと、必ず左右のどちらかに曲がって沈む。何度やっても曲がってしまう。いかに水の抵抗が大きいか分かるでしょう?

WJS はい。ジェットの場合は、波が当たる面積が広いので、水の抵抗が大きな衝撃になりますよね。
中田 その衝撃に負けないのが、ULTRAのスゴイところ。波でグチャグチャに荒れた海面ほど、波切りの良さを体感できます。



エンジンパワーは十分なので、馬力をロスしないで水面に伝える「船底デザイン」が必要だと思います

WJS なぜULTRAは、波間の走破性に優れているのですか?>
中田 やはり、ハルの形状が一番大きいと思います。波を上手く逃がすというか、後ろにサバくというか、とにかく水の抵抗を受けにくい形なんですよね。恐らく、310馬力のエンジンパワーと船体形状のバランスが絶妙なんでしょう。むしろ、ULTRAの船体性能を上げるために、310馬力が必要だったのだと思います。でも波切りがいい理由は、ハルの形だけとは言い切れません。なぜかというと、純正と同じ形の軽量ハルの場合、波でノーズがもっていかれますから。

WJS ということは、船体の重さも、走破性の良さに関係あるのですね?
中田 はい。それだけじゃなくて、重心の位置、重量バランス、ポンプの水噛み性能、推進力の強さなど、さまざまな要素があると思います。

WJS 要するにULTRAは、トータルバランスに優れたジェットなんですね?
中田 初期の250馬力に比べたら、格段に良くなっていますよ。でも、本音を言えば、もっと船体性能を上げて欲しい。エンジンパワーは十分なので、馬力をロスしないで水面に伝える船底デザインが必要だと思います。船体の軽量化も望みます。まあ、これは一番難しい部分ですけどね。

ULTRA310Rは、余計なモノが付いていない、整備しやすい。至ってシンプルなジェットです

WJS ULTRAシリーズは310LXや310Xなどありますが、その中で、走りに徹した「R」モデルが好きな理由は何でしょうか?
中田 乗っていて疲れない。余計なモノが付いていない。整備しやすい。至ってシンプルなジェットだからです。一番好きなのは、ハンドルまわりがスッキリしているところ。他の艇にはカバーが付いていますが、ここもエンジンカバーと同じく、内部が塩まみれになりやすい。ハンドルカバーのない310Rは、整備するのに余計な手間がかからないし、見た目もいい。それが、たまたま「走りに徹したレーシングモデル」だったということです。

WJS ULTRAの魅力に「加速の速さ」を挙げる人が多いですよね?
中田 たしかに、加速性能は優れていると思います。船体重量が重く、水に深く沈んでいるわりには、素早く加速できます。ただし私の場合、加速の速さよりも、荒れた水面での走りやすさと安定性の良さに魅力を感じます。乗っていて、無駄に疲れないですからね。

WJS コーナリングはいかがでしょうか?
中田 はっきり言って、コーナリング性能は良いとは思いません。旋回速度は遅いジェットだと思います。速いスピードで曲がるには、チカラと体力が必要。なので、とても疲れるハンドリングだと思います。



故障やトラブルを防ぐために注意していることは、主に3つあります>

WJS マシンコンストラクターの目から見て、優れていると思うULTRAの部品はどれですか?
中田 スーパーチャージャー(SC)です。駆動方法がベルト式なので、波を飛んで、エンジンが高回転で空回りしても、他社のジェットよりダメージが少ない。ちなみに、シードゥとヤマハのSCの駆動方法はクラッチギア式なので、波をバンバン飛ぶと、ここが傷みやすいんです。

WJS メンテナンス性についてはいかがですか?
中田 整備性は他のモデルより良いです。ULTRAは、余計なモノが付いていないですから。まず、私が嫌いな「エンジンカバー」がない。これが付いていると、内部が塩害を受けやすい。エンジンを手入れするのに邪魔になるだけ。
それと、シードゥの「iBR」や、ヤマハの「RiDE」といった電化した減速システムが付いていない。不便だと言う人もいますが、私は減速機能の必要性を感じません。なので、ポンプまわりが整備しやすいというメリットになります。こういうシンプルな構造も、ULTRAが好きな理由のひとつです。

WJS 故障やトラブルを防ぐために注意していることはありますか?
中田 主に3つあります。1つ目は、乗っているとき、オーバーレブさせないこと。特に波間では、アクセルワークに気をつけて、エンジンにダメージを与えないようにしています。2つ目は、乗った後、しっかり水洗いして乾燥させてから保管すること。防錆対策は欠かせません。3つ目は、オイル交換をマメに行うこと。高出力エンジンはオイルの劣化が早いので、メーカー指定の交換サイクル(25時間使用または1年)より早めに交換してます。

マシンカスタムは、悩む時間も含めて面白いですよね

WJS 中田さんが、ご自身の趣味でULTRAをカスタムするとしたら、どういう味付けをしますか?
中田 レジャーユースなら、エンジンはスピードリミッターを解除するだけ。これだけで、十分すぎるほど速くなります。

WJS 船体は何をしますか?
中田 まず足まわり。スポンソンはR&D製。最高速と旋回性能がアップします。ライドプレートはTBM製。これは角度がいいですね。トップスピードが伸びます。スコープゲートもTBM製。水をよく食います。最高速は落ちますけど、これをスポンソンとライドプレートで補う感じですね。ちなみに、TBM製のスコープゲートとライドプレートは、RIVA製と同型なので、そちらを使っても構いません。

WJS ハンドルまわりは?
中田 ハンドルバーは、RRP製のファットバー。これは中央が太くなっていて、しなりが大きいんです。衝撃が緩和されるので、しんどくないんですよ。

WJS ULTRAは、純正のハンドルでも、結構、しなりますよね?
中田 ええ。でもファットバーのほうが純正よりも良くしなるので、疲れにくいんです。とても優れたハンドルなのに、レジャーでもレースでも、思ったほど普及していないのが不思議です。

WJS 本当ですね。で、それを付けるハンドルマウントは?
中田 TBM製のアジャスタブルタイプ。ハンドルの高さ(上下)と角度(前後)を調節できるので、自分の好きなライディングポジションになります。パーツを悩む時間も含めて、カスタムは面白いですね。

カワサキULTRAに乗り、世界の耐久レースで勝利を挙げているフランスのパステレロ選手。船体が重く、波をつぶして走れるULTRAは、耐久レースに向いているマシンでもある。

これほど「エコモード」が似合わないジェットは、他にないと思います。最大の褒め言葉ですよ、これ

WJS 最後に、ネガティブな質問です。「ULTRAは燃費が悪い」という声を聞きますが、それについてはどう思いますか?
中田 じゃあ、どのぐらいなら燃費が良く感じるの? って、逆に聞きたくなります(笑)。310馬力もあって速いんだから、普通のジェットよりも、燃料が早く減るのは仕方がないでしょう。

WJS 乗り方もありますよね?
中田 そうですね。ジェットうんぬんより、310馬力のULTRAを買う人は、往々にしてガンガン飛ばすのが好きですからね。スピードを出して走るということは、その分、アクセルを開けている時間が長いですから。

WJS 速く走ればガソリンの減りも早いという、単純明快な話ですね。
中田 そんなに燃費が気になるなら、アクセルを開けなければいいんですよ。ULTRAには、エコモードもしっかり付いてますし(笑)。

WJS それが笑いのネタになるんですから、やっぱりULTRAは、豪快なジェットなんですよね。
中田 そうですね。これほどエコモードが似合わないジェットは、他にないと思います。最大の褒め言葉ですよ、これ(笑)。



「ULTRA310LX」スペック

[スペック]

全長 3,370mm
全幅 1,195mm
全高 1,255mm
エンジン 4ストローク・4気筒/DOHC16バルブ(SC)
排気量 1,498㎤
最大馬力 221kW(300PS)/8,000rpm
[US表示:228kW(310PS)/8,000rpm]
整備質量 487kg
燃料容量 78ℓ(無鉛プレミアムガソリン)
カラー エボニー×メタリックカーボングレー
定員 3名
価格 2,343,000円


2021年に10月5日に発表された「ULTRA310X」ニューモデル。

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