これから水上バイクを購入しようとしたとき、「新艇」にするか、「中古艇」にするか悩むところです。 結論から言ってしまえば、初心者ほど『新艇』を買うことをおススメします。逆にいえば、自分で責任が取れる上級者なら、何を買ってもいいでしょう。 最初の購入でつまずかないために、プロの水上バイク専門店・スズキマリンに話を聞きました。
WJS 水上バイクを購入する場合、「新艇」と「中古艇」がありますが、どちらを買った方が得だと思いますか?
鈴木 上手くいけば、と前置き付きで「中古艇」と言いたいところですが、間違いないのは「新艇」です。
WJS それはどうしてですか? 程度のいい中古艇なら、お得な気もしますが?
鈴木 お客さんにも同じ質問をされることが多いのですが、中古艇を買って「正解」「不正解」の答えが出るのは、実は「水上バイクを売却したとき」なんです。 それまで「調子が良い」と喜んでいても、ある日突然、「エンジンがかからない」なんてことになったら、「購入は失敗」ということになるでしょう。
WJS 鈴木さんのショップにも、程度が良さそうな中古艇が販売されています。同じ金額で、新艇だとエントリーモデルしか買えないのに、中古だと少し前のフラッグシップが買えますよね? このお店のような、信用のおける販売店から買うのなら中古艇で良いのではないでしょうか?
鈴木 私のお店では、中古艇を下取りして販売する場合、できる限りのメンテナンスを施してからでないと販売しません。それでも、中古艇は何があるか分からないのです。
WJS 話を聞いて思うことは、プロのジェットショップの人のほうが、「水上バイクが壊れる」と思っている気がします。実際の話、鈴木さんのショップで中古艇を買って、「すぐ壊れた」なんていうクレームは滅多にないのでは?
鈴木 滅多にありません。でも1回でもあっちゃダメだと思うんです。もし仮に、走行距離が1万km以下の自動車を買って、すぐに「エンジンが壊れた」なんて話、聞かないでしょう? でも、ジェットにはそれがあるんです。
WJS 新艇でも不具合が出る場合もあるのでしょうか?
鈴木 ごく稀にですが、あります。でも、新艇には「メーカーの1年保証」が付いています。これが大きい。メーカーの責任で起こった不具合は、タダで直せる。ウチのような正規販売店で購入した場合、少しぐらい疑わしい故障でも、メーカーは手厚く対応してくれるケースが多いです。というのは、買ってから半年くらいで不具合が判明したとき、お客様の乗り方が原因なのか、初期不良なのかが判断しにくい場合があるんですよ。
WJS 鈴木さんは常日ごろから、お客さんに余計な修理代を払わせるのをとても嫌がりますよね。
鈴木 だって、「余計な修理代」ほど、ジェットをやめる原因になることはないからです。
WJS だから、より壊れるリスクが少なく、保証がある新艇を勧めるわけですね。
鈴木 はい。かといって、ウチも中古艇の販売には力を入れています。新艇のほうが儲かるうんぬんという理由でではなく、あくまでも中古艇は「現状渡し」が原則。売る前にテストでエンジンをかけたり、実際に乗って問題がなくても、売った翌日、エンジンがかからなければ、買主の全額負担で直すことになります。
WJS でも鈴木さんのような優良な販売店から買えば、そういうケースは少ないのでは?
鈴木 はい。そうそう壊れません。下取り後、全て確認してメンテナンスを施し、疑わしい消耗品は全部交換してから販売します。それでも、エンジンをバラして、中身まで確認したりはしません。そこまですると工賃と時間がかかり、中古艇のメリットである「割安感」が出せなくなるからです。
WJS 大げさかもしれませんが、「ジェットスキーは壊れやすいもの」。新艇でも中古艇でも、壊れるリスクがある以上、メーカー保証が付いていて壊れにくい新艇が良いということですか?
鈴木 その、「ジェットは壊れやすい」という言い方には語弊があります。「ジェットは壊しやすい」という言い方が正しいと思います。
WJS どう違うのですか?
鈴木 キチンとした使い方をしていれば、ノートラブルでずっと遊んでいられます。なかには、自分は正しい使い方をしていると思っていても、ダメな使い方で壊してしまうケースも多いです。例えば、お客さんには「水深の浅い場所ではエンジンをかけないで」と、再三、言っているのに、エンジンをかけてしまいポンプに石を詰まらせる人がいます。「あれだけ言ったじゃないですか」と言うと、「俺は深いところで乗っていた」と言う。本人にとっては、十分な深さのある場所だったんでしょうけど、それでは浅かったということです。でも、1度そんな思いをすると、皆さん、2度目はやらないですね。
WJS 結論として、すごく程度が良くて、安い中古艇を購入できた人は、新艇を買うより、得をしたということになるのですか?
鈴木 先ほどもいいましたが、中古艇で「得をした」というのは、納得した金額で売却したときに、初めて言えることです。購入した中古艇のアワーメーターの時間が少なくて、調子が良くても、良い買い物をしたとは言い切れない。前のオーナーがどんな乗り方、使い方をしていたかは、誰にも分りません。先ほどのお客様のように、正しい使い方をしていると本人は思っていながら、実は間違った使い方をしているということも考えられます。だから、「安心を買う」という意味においても、私は新艇を勧めています。
WJS 勉強になりました。ありがとうございました。
新艇、中古艇、という話から少し逸れるが、「壊れる」ということに対する意識が、ユーザーと販売店でずいぶん違うことに驚いた。
修理、故障のトラブルは本当に嫌だ。高い金額を払って買ったのに、原因不明の不調といった事態に陥れば、自分の不幸を嘆き、悲しみ、なかなか受け入れられないだろう。ユーザーの不満や不幸の行き着く先が販売店なのだ。
だから、ショップは「壊れる」ということに対する意識が高い。文句を言う側よりも、聞かされる側の方が嫌なのだ。新艇か中古艇かを迷っている段階では、故障やマシンの不具合を経験していない。未経験のユーザーと、クズな水上バイクを買わされて嘆いている人を知っているショップとでは、「マシントラブル」に対する意識がまったく違うのである。
鈴木雄生氏(スズキマリン店長)
〒293-0021 千葉県富津市富津2401-315
Tel.0439-87-8455
URL:https://suzukimarinejet.com/
関連記事