「2021年モデルのシードゥ艇のなかで、最も高額な機種は?」と聞かれたら、「GTX LIMITED 300」と答えます。
このフラッグシップモデルには、「7.8インチフルカラーLCDディスプレイ高画質メーター」や「オーディオ」、新開発の「iDF(異物除去ポンプシステム)」など、他のモデルにはない特別な装備を備えています。
「Rotax 1630 ACE-300hp」は、シードゥのフラッグシップに搭載されているエンジンです。シードゥ最大級のパフォーマンスを発揮する”インテリジェンス・モンスター”と呼ばれているパワーユニットが搭載されています。さらにこの「GTX LIMITED 300」のエンジンは、「with iDF」となっており、異物除去ポンプシステムが装備されていることを示しています。
「Rotax 1630 ACE 300エンジン(1,630cc)」+「スーパーチャージャー」の搭載により、300馬力のパワーを叩き出します。
同じ「Rotax Engine 1630 ACE-300」エンジンを搭載するRXT-X 300は、停止状態から、わずか3.8 秒で96.6 km/h(60 mph)に達することを考えると、このGTX LIMITED 300の加速性能も、推して知るべしです。
「GTX LIMITED 300」の船体は、「ST3ハル」です。この詳細な説明はあとで行いますが、「ST3ハル」を一言で言えば「世界最高の直進安定性を持つアンダーハル」です。
「GTX LIMITED 300」というジェットを説明するなら、「シードゥ最大のパワーユニット(エンジン)」が、「シードゥ最高の直進安定性を誇る船体(ST3ハル)」に搭載されているのです。初心者でも、「アクセル全開にして、直線を走れる」というのが、GTX LIMITED 300といってもいいでしょう。
「GTX Limited 300」の新機能として「7.8インチフルカラーLCDディスプレイ、以下・LCDディスプレイ」が標準装備されました。このLCDディスプレイは、業界初の新機能が ”てんこ盛り” です。
モードを切り替えることで、さまざまな情報を呼び出すことができます。また、自動的に減光するバックライトも備え、あらゆる光源のなかでも、高い視認性を確保します。大きな画面と見やすいデジタル数字により、走行時の視認性が向上しました。文字にすると大したことに聞こえませんが、実際に使用していると、ありがたさに震えます。
そして、何より驚くのはGPSが連動しているので、現在地や航行軌跡がすぐに分かります。現在の残存燃料であと何km走れるか? という航行可能距離がLCDディスプレイに表示されるのです。燃費も、当然、表示できます。
主な機能は下記の3つです。
1. 7.8インチのワイド画面で、鮮やかで美しいカラーを表示します。
2. ハンドルバーに装着されたスイッチを操作することで、アプリや情報を呼び出すことができます。ハンドルを握ったまま操作できるので、安全性も確保できます。
3. スマートフォンのアプリとの連携が可能。地図、天気、音楽など、好きなアプリを選べます。
このディスプレイのすごいところは、スマートフォンと連携できるところです。
写真のように、液晶メーターのスクリーンを2分割し、左はスピードメーター、右はナビゲーション用の地図を表示させながら走ることも可能です。まさに「水上バイク最高峰のスピードメーター」と呼べるでしょう。
全長 | 3,451mm |
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全幅 | 1,255mm |
全高 | 1,138mm |
エンジン | Rotax Engine 1630 ACE- 300 with iDF Supercharged with external intercooler |
最大馬力 | 300hp |
排気量 | 1,630cc |
乾燥重量 | 385kg |
燃料容量 | 70リットル |
カラー | Liquid Grey Metallic & Beach Blue Metallic(リキッドグレーメタリック×ビーチブルーメタリック) |
定員 | 3名 |
価格 | 2,560,000円 |
直線走行中に、船体が右に傾こうとしても、上写真の赤い線部分が波に当たり、船体を水平に戻してくれます。例えるなら、小さな子どもが乗る「コマ(補助輪)付き自転車」です。赤い斜線の部分が、コマ(補助輪)の役割をします。バランスを崩して横転してしまう場面でも、船体が自動で傾きを補正してくれます。
これが、世界最高峰の直進安定性を生む理由です。自分でバランスを取らなくても、船体形状で水平になってくれるのですから、「水平にバランスを保つ」という、ライダー側の作業が必要なくなります。
以下に、コーナリング性能に特化した「T3ハル」と、直進安定性を求めた「ST3ハル」の特徴を記します。
コーナリングのきっかけを作るのは、アンダーハルのフロント部分です。フロント部が水に接していないと、いくらハンドルを切ってもジェットは曲がりません。だから、「世界最高のコーナリングマシン」と言われる「T3-Rハル」を採用している「RXP-X 300」は、常にアンダーハルのフロント部分が水に接しています。
しかし、フロントが接水しているデメリットとして、「アクセル全開で直進している最中でも、波によってはハンドルが取られて恐い思いをする」ことがあります。それだけ、水面に対してハンドリングがシビアなのです。
「ST3ハル」の船体は、直進の場合はフロントが浮き上がり、曲がるときは、減速してフロントが水に接してからハンドルを切ります。このため、直進時に変な波とぶつかってもハンドリングに影響はありません。
先ほど説明したように、船体が左右がふらついても、ハル形状で傾きが自動修正されます。
「ST3」ハルは「RXT-X 300」と「GTXシリーズ」で採用されています。
シードゥは考え方に「固定観念」がないように思えます。「思い通り、自由自在に操ることが出来る船体」が、「良い船体」という信念で、ジェットの開発を行っているのだろうと推測しています。
しかし、実際に思い通りに操ろうと思ったら、ライダー側にもスキルが必要ですし、例えば、船体が長ければ曲がりにくいし、幅が広ければ小回りがきかないなど、船体側にも制約も増えます。
シードゥの発想はユニークで、とことんユーザー目線です。ジェットで釣りをするなら、「専用のフィッシングモデル」を開発します。その際、「釣りには、高速走行時の旋回性能など必要ない」と割り切っています。
ウェイク専用モデルには、大きな引き波を作るために後部を重くするなど、専用の機能を付けたりすることもあります。これは、ジェットの機動力を削ぐ以外のなにものでもないため、他メーカーでは、「○○専用モデル」というジェットを造ることはありません。「ウェイクボードをするなら、波が大きなほうが楽しい」というユーザーの要望があって初めて実現するものです。
この「ST3ハル」も、シードゥだからこそ開発・発売ができたのでしょう。どのメーカーも、「開発」自体は可能でしょうが、「思い通り曲がる」という部分を、ここまでスパっと切り捨てられるのは、シードゥ以外では考えにくいものです。
「プロレーサーのように旋回したければ、RXP-XのT3ハルに乗ればいい」と、メーカーが言っているようなものです。
レジャーでランナバウトに乗るユーザーの大半は、「曲がることよりも、直線をぶっ飛ばして」走ることのほうが多いです。レースコースのブイをまわるような、細かくターンを繰り返すよりも、友人と「直線で最高速を競い合っているとき」にどれだけ快適に走れるかのほうが重要視されがちです。それなら、「ST3ハル」に勝るものはありません。
普通なら、「釣りも、レースも、ツーリングも、トーイングでも、この1台で何でもできます」と言いたいところを、シードゥは「○○をするなら、この機種です!」と言い切ることが、最もすごいところです。
ランナバウト最大級の広さを誇るリアデッキは、業界で初めて、リアデッキをフラットにして、より広く使えるようにしました。広いリアデッキは、非常にバランスが良く、静止時でも安定しています。まるでラウンジのようにくつろぐこともできます。
後部座席(パッセンジャーシート)を取り外して走行することも可能なので、1人で乗るときは、さらに広いスペースが確保できます。シュノーケリングや、トーイングチューブで遊ぶときにも快適な広さがあります。
「LinQ Attachment System(リンク・アタッチメントシステム、以下「リンクシステム」)」は、2005年にATVに装着されたのが始まりです。このシステムが作られてから、すでに10年以上も経っており、実績は折り紙つき。
リアデッキの2つの取り付けポイントを利用して、ワンタッチでクーラーボックスやバッグなどの専用アクセサリーが固定できます。激しいライディングでも、絶対に外れません。
小さめのクーラーボックスや、防水バッグなど、さまざまなオプションが用意されており、好きな組み合わせでリアデッキに取り付けられます。
ロングツーリング時に、ガソリン携行缶を装着していけば、ガス欠の心配がなくなります。別売のFISH PRO用クーラーボックスを取り付ければ、GTX LIMITED 300でも、快適なジェットフィッシングが楽しめます。
一度でも「リンクシステム」の便利さを体感したら、「ないことは考えられなく」なります。リンクシステムがない機種の場合、ロングツーリングに行く際、リアデッキにガソリン缶を縛り付けて出かけていました。「予備のガソリンを積む」という効果は同じですが、走っている最中に、ガソリン缶が落下するかもしれないと、いつも気を使っていました。落下リスクのないリンクシステムは、それだけで「心の重荷」が、ひとつ減ることになります。
私にとってリンクシステムは、トイレの「ウォシュレット」のようなものです。(※温水洗浄便座「ウォシュレット」はTOTOの登録商標)
その存在を知らなければ、従来の方法でも何の不自由もありませんでした。しかし、一度、お湯が快適に洗い流してくれる快適さを知ってしまったら、もう紙だけで拭いていたころには戻りたくありません。
「リンクシステム」の登場により、ジェットの遊び方が変わるかもしれません。ジェットに乗りながら、常に冷蔵庫を持ち歩いていようなものだからです。灼熱の砂漠を走り続けたあと、ほど良く冷えた飲み物が、すぐ手の届く場所にある。この事実は、想像以上に画期的な出来事です。
2009年、世界で初めて「ハンドルから手を離さず、左手のレバーを握るだけで、ブレーキとバックができるようにしたのがシードゥです。今では「なかったことが考えられない」とまで評価されているシステムです。(2015年から、ヤマハのマリンジェットにも、「RiDE」という、iBRと同じような機能が装備されました)
従来のランナバウトでも、「バック機能」はありましたが、ハンドルから片手を離して、別の場所にあるリバースレバーを引っ張ってバックをするものです。わずかな時間でも片手運転になるため、ジェットの操船に慣れていないと、スムーズにバックできません。しかも、桟橋などへの着岸は、ビギナーにとっては難しいものでした。「iBR」はハンドルから手を離さずにリバース操作をすることで、そのわずらわしさから解放されたのです。
自動車やバイクでは考えられませんが、「iBR」が出るまで、ジェットにはブレーキが付いていませんでした。減速するときは、アクセルを離して、水の抵抗を利用して自然に止まるのを待っていたのです。それが、左側のレバーを握ることで、ジェットが自動的にエンジンの回転数を調整し、ジェット水流の噴射量を調整しながらリバースゲートが下がり、減速してくれます。ブレーキのないジェットよりも、かなり早く停止できます。
現在の「iBR」は第3世代で、さらに性能が向上。ハンドルバーを両手で握ると、ライダーは前進、ニュートラル、リバースを使用して、低速で安定した操船ができます。
水の上で、フロントストレージから荷物を取り出そうと立ち上がったはいいけれど、どんなに手を伸ばしても、身を乗り出しても、荷物に届かなかった……という経験をしたことがある人も多いでしょう。
シードゥのフロントストレージは、業界初、ハンドルバーアセンブリを上げるだけで、直接、フロントストレージに物が入れられます。もう、物の出し入れのために立ち上がる必要はありません。座ったままで全ての作業ができるので安心です。
一体型USBポートを搭載したハンドル下の防水ボックス。ジェットで走りながら、スマホやデジカメ、アクションカメラなどの充電ができます。ボックス内は耐衝撃性で、ライディング中でも中の機器を保護してくれます。
業界初の一体型防水オーディオシステムです。100ワット電力、完全防水性能、Bluetooth接続、外部再生コントロールを備え、どんな場所でも音楽を聴くことができます。スピーカーの指向性も高いので、他の人の迷惑になりません。
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