私見だが、ランナバウトのなかで、本当の意味での「ファントゥライド」を体感できるジェットスキーがSTX-15Fだと思う。「乗っていて楽しい」と、皆が口を揃えて言う。このモデルには、ジェットスキーを操る喜びが満載だ。
「より速く」「より思い通り」に走らせるには、ライディングスキルが必要となる。コーナリング時は船体を傾けず、水平に保ったまま曲がる。傾けすぎるとスピンする。スコープゲートが水面から空中に出て、水を噛まなくなるからだ。ライディングが上手な人ほど、「スコープゲートを水から離さない」技術に長けている。曲がる直前では前方に加重して、ハルのフロント部分が水を噛みやすくする。曲がり終わったら、今度は後方に体重を移動し、Gに耐えられる準備を自然に行っている。
メーカーを問わず、最近のランナバウトは、「マシンの進化」という名目のもと、「楽」に乗れるということに注目しすぎているような気がする。特にここ10年くらいは、それが顕著である。決まった位置に座ってハンドルさえ切れば、誰でも乗れるし、曲がれる。初心者にとっては、そのほうが安全でいいだろう。しかし、「楽」イコール「ファントゥライド」か? と問われれば疑問である。ライディングが上手くなればなるほど、「上手く乗れないから楽しい」と思えるようになるから、ジェットスポーツの奥は深い。
STX 160シリーズをアクセル全開で走りまわると、STX-15Fに乗っているときと同じ快感が得られる。そして、加速感が増している。
この「STX 160」シリーズで、普通に座って乗ると、STX-15Fとは全く違う別の乗り物だということが分かる。超が付くほど「楽」なのだ。ハンドルを切るのもSTX-15Fの半分以下の力加減でOKだ。電子スロットルも、握りが軽く負担がない。全くもって楽に乗れる。座って走ると最先端のミドルサイズモデル。
「STX 160LX」のオーディオは、サウンド音も申し分ない。私の個人的な感覚だが、この「STX 160」という機種は、最高速でぶっ飛ばせば「STX-15F」の楽しさや、走る喜びがそのまま味わえるし、普通に座って乗れば、全く新しいイマドキのジェットスキーである。
当初、メーカーから発表されたマシンスペックを聞いて、私と同じように「何だかなー」と感じていた人も多いと思う。しかし、声を大にして言いたい。「このジェット、かなり良いですよ」。
是非、機会があったら試乗してほしい。普通に乗ればニューモデル、アクセル全開だとSTX-15Fという走りの特性を味わって下さい。「STX 160」シリーズの試乗で、改めてSTX-15Fの楽しさを語るとは思ってもみなかった。「ファントゥライド」の名機である。
大変失礼な質問ですがと前置きをして、「ニューモデルといいながら、STX-15Fのパーツを流用してコストを抑えたモデルではないのですか?」と、開発責任者に聞くと、笑いながら「そうではありません。全く新しい船体を開発して、何種類ものハルをテストしていったら、最終的に残った形が、オールニューではなく、STX-15Fのハルを採用したものでした」と教えてくれた。カワサキが考える、理想の「エントリーパワフルモデル」を造っていったら、この形でこのスペックに仕上がったというのだ。その話を聞いて、非常に納得できた。
この「STX 160」シリーズは、コストパフォーマンスも非常に良い。「STX 160X」が1,452,000円(税込)、「STX 160LX」が1,628,000円(税込)。各社のフラッグシップが軒並み200万円を超えているなか、100万円台中間くらいでこれだけ完成度の高いモデルが入手できるのだ。
非常に燃費も良く、荒れた水面で1時間以上走り回って、ガソリンゲージは2目盛りぐらいしか減っていなかった。「STX 160」シリーズのガソリンタンク容量は78リットル。レギュラーガソリン仕様で、1日中余裕で遊べる。知れば知るほど、最初のイメージとは全く違う、とても良いモデルであった。
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