ジェットの性能が驚くほど上がり、日本一周も可能となった。水上バイクのポテンシャルは計り知れない。ひと昔前の2ストロークエンジン艇のように、目の前の小さな水面だけで遊ぶ時代でなくなって久しい。
燃費も非常に良くなったおかげで、ガソリンを満タンにしておけば、ずいぶんと遠くまで行ける。高性能ランナバウトの最終的に行き着く遊び方は、ツーリングになるのだ。
「ジェットに乗ることは楽しい」と、誰もが快感できる遊び方なのだ。
この日、パルアップでは、夏の間、働いてくれた“若いスタッフ”のために、ツーリングを企画していた。参加した若手スタッフは4人で、そのうち3人が今年、船舶免許を取ったばかりだという。
今回のツーリングの趣旨は「若いスタッフに、ジェットの楽しさを知ってほしい」と、斉藤鉄人は言う。夏の忙しいシーズンが過ぎた今だから、「チーム・パルアップ」で、ゆっくりとジェットツーリングを満喫することになった。
大阪市在住の人が、海でジェットに乗ろうと思ったとき、「上下架の出来る場所」は、主に2カ所だ。関西国際空港の近くの水上バイク専用ゲレンデ「二色の浜公園・海浜緑地エリア」か、兵庫県西宮市甲子園浜のマリーナ「パルアップ」だ。
二色の浜公園は大阪府の管轄で、日本でも珍しい行政が管理しているゲレンデ。
パルアップは、「ツーリングの鉄人」こと斉藤智祐氏がオーナーのジェットショップである。
パルアップでは、「どこにガソリンスタンドがある」「どこは進入禁止」「食事をするなら、○○から上陸ができて、○×で食べられる」など、ツーリングをするうえで、貴重な情報を豊富に持っている。
今回、パルアップの若手スタッフを連れて遊びに行く「初めてのツーリング」に、飛び入りで参加させてもらうことになった。
人が“ワクワクしている顔”って素敵だ! メディアで、「ジェットは輩(やから)のスポーツ」と言われている昨今だが、この写真を見て“そう思う人”はいないだろう?
「輩(やから)」には、「仲間、連中、同類」という意味のほかに、「良くない連中」という意味がある。ジェットの話題で引き合いに出される「輩」は、間違いなく後者のほうだ。ごく一部の悪質水上バイクユーザーと一緒くたにされるのは、“冗談じゃねえぞ!”と、怒り心頭する。
ツーリングビギナーの若手スタッフが4名。サポートとして、パルアップスタッフで元全日本チャンピオンの新生さんと、ミニ鉄人ことダーさん、そしてショップスタッフの計7艇で出発。斉藤鉄人は、取材艇の操船をお願いして出発した。
行先は、パルアップ・ツーリングでおなじみの「神戸港」→「明石海峡大橋」→明石海峡大橋を一望できるレストラン「Geragera(ゲラゲラ、神戸市)」でランチをして帰るという定番コースである。
このレストランの目の前がプライベートビーチで、店内にはテラス席もある。事前に予約しておけば、ウェットスーツのままでもOKという、ジェット乗りには非常にありがたい場所なのだ。
操船も慣れてきた。”いい顔”してる!
運河では、ウェイクボードの真っ最中。邪魔にならないように間隔を広くとって引き波を与えないように走行する。こういった「譲り合いの精神」が大事だ。
初めてのツーリング、ちょっと緊張してます。いい顔!
ジェット、気持ちいい~! 何がそんなに楽しいのか? 知りたきゃ、アナタも「ジェットに乗るしか」ない。
海からしか見られない景色もある。やってみなきゃ、永遠に分からないトキメキが、ここにある。
なぜか違和感?神戸港に到着したら、とても目を引く大きな船がいた。外国船のわりには、雰囲気がイマイチ!? ここの港では、クイーンエリザベスや飛鳥のような豪華客船ばかり見てきので、半端なく違和感がする。別に中国籍に恨みはないが、どこか“変なデザイン”だと思った。あとから調べたら、「新鍳真(しんがんじん)」という、神戸と上海を結ぶ国際フェリーだった。
「ダサい!」なんて思ってスミマセン。
悪口ではなく、個人的な感想を言わせてもらえれば、この1隻がいることで、神戸港の“港の風景”としての素敵さが削られている気がした。再度、スミマセン。だって、トイレにウォシュレットがナイ感じがする!弾ける笑顔!
『神戸とうどんを結ぶ「ジャンボフェリー」』の「こんぴら2」号。行先は「うどん県高松市」だそうだ。「こんぴら2号」も素敵とはいえないが、先ほどより嫌悪感が起きないのは、私が日本人のせいなのか? この港には、いろいろな場所から船が来るのだな~と、しみじみ思った。それに、ウォシュレットも完備されていそうだ!
上機嫌な2人。意外とスピードを出して走るYOUNG隊。
この日は、YOUNG隊のサポートで出動した「ダーさん」。ベテランの風格。
出発から約30分後、神戸港に到着。ここで六甲山とポートタワーをバックに、定番の「記念撮影」。六甲山、ポートタワー、オリエンタルホテル。「神戸」といえば、真っ先に思い浮かぶ景色がここだ。さすがに上陸はできないが、写真を撮るスポットとしては最高である。
「秋の風、ヘタレが叫ぶ、陸の上」。神戸ハーバーランドで、若いスタッフたちが4艇、撮影のために、“ベテラン勢”のジェットと離れたところで水に浮いていた。すると突然、陸上にいた一般人から「どっかいけ!」と、いきなり怒鳴られたのだ。
YOUNG隊は、そこで浮いていただけで何もしていない。スピードを出したわけでも、危険走行をしていたわけでもない。これは、昨今の「水上バイク」に対する「ヘイト感」を痛烈に感じる出来事であった。
腹立たしいのは、若いスタッフだけに怒鳴ったことだ。少々、見てくれの”悪い”編集部A君のジェットに”怒鳴る”人はいない。反抗的な態度を”しなさそう”な”人にだけ”叫ぶ”情けない”人種だったのだ。
言うべきときに叫ばず、危害の”及ばない”ときにだけ”発言”するのは、インターネットのコメントと同じだ。
「水上バイクに対して、文句が言いたかっただけ!」「もし、僕たちが“すごんだら”何にも言い返してこなそうなオジさんでした」と、4艇のYOUNG隊の報告を聞いて、彼らの方が数倍オトナだと感心した。
今、「水上バイク」を非難する人の根底にあるのは「正義感」だとは思うが、言い返さない若者にするのは格好悪い。その“正義感”は、あなた方が”目の敵”にする”正真正銘”の「輩」に発揮してぼしいものである。
こうやって「本誌に掲載する」→「馬鹿が群がる」→「侵入・乗り入れ禁止」という「負の方程式」が過去にも何度かあった。しかし本誌は、これからもジェットの楽しさを伝えていくつもりだ。そこで、皆さんに「大切なお願い」がある。
「馬鹿が群がる」の時点で「スマホで録画」をしてほしいのだ。そういう映像がメディアに流れると「水上バイク=悪」という風潮になりやすいが、それは違う。
『水上バイクに”乗って“危険な振る舞”いをする「“輩”=悪」』という現実を、徹底させたいと思っている。「“悪い振舞い”をすると罰せられる」という風潮に変えたい。これ以上「優良ジェット乗り」が、非難されることがあってはならないと考えている。
この日、たまたま川崎重工神戸工場で、新しい潜水艦の進水式が行われる予定となっていた。我々が通ったときは、準備の真っ最中。
工場には、見たことがないほどの警備員の数。「何ごと⁉」。艦には紅白の幕がかかり、風船が準備されていた。
潜水艦の進水式なんて、一生で一度見られるかどうかのものだ。我々が通過した後に盛大に行われた進水式には、防衛省の幹部職員や、川崎重工の橋本康彦社長ら約120人もの人々が出席したという。
時間さえ許せば見てみたかったが、昼食の時間が決まっている。後ろ髪を引かれる思いで、神戸港を後にした我々だった。
川崎重工神戸工場前。この日、偶然にも潜水艦の進水式の直前だった。新しい潜水艦「はくげい」の全長は84メートル、排水量が約3000トンと日本最大級。真後ろからだと、長さは判断できないが、“スゴイ”ことだけは理解できた。建造費は約720億円で、装備の取り付けなどを終えた後、2023年3月に防衛省に引き渡される予定という。
陸上の警備は厳重だったが、海からの訪問者は想定外だったのだろう。こんなに近くまで寄って写真を撮っていても、何も言われなった。ツーリングの翌日、新聞記事を見て「実はオオゴト」だったことに驚いた。
実は私、潜水艦と並走して走ったことがある。半分から上部が水面から上がった状態で走っていた。流線型の滑らかな形をしていて、船とは思えぬようなヌメヌメした引き波だった。近づいたら展望台に乗っていた人から敬礼されて恐縮した。その後「離れろ」というジェスチャーをされたので、飛んで逃げた!ジェットに乗っていると色々な出会いがあるのだ。
後ろに見えるのが六甲山。雄大な六甲山脈を背負って走るようなこの景色が好きだ。神戸は、海と山に挟まれた素敵な街なのだ。
神戸港から、一路、明石海峡大橋へと急ぐ。なぜだか、この瞬間だけは「人生の悩み」など皆無である。感じるコトは「生きている・素敵!」以上!神戸の街並みと、六甲の山々を何度も振り返りながら見てしまう。
神戸港第一防波堤東灯台。大都市の港の出入り口にあるとは思えないくらい、雰囲気のある灯台。
さりげなくYOUNG隊をサポートして走る、元全日本チャンピオンの新生さん(写真手前)。奥の彼女がすごいのか? ジェットの性能がすごいのか? 集団から、全く遅れないYOUNG隊。
若者には、ちょっと格好いいところを見せておかないとね!
3年前の台風から休園し、廃墟化している「須磨海づり公園」。えっ? 「楽しい!!」。分かったよ!
明石海峡大橋。橋の向こうは淡路島。この眺めが好きだ。
他人の大漁は、自分の大漁と同じ意味! 取材艇を操船中の斉藤鉄人は、他の船がハマチを釣っているのを見て、ガマンできず「マイ竿」を取り出した。鉄人をはじめ「釣り師」には、他の船が釣れているのであれば、自分も必ず釣れるという持論がある。困ることは「時間限定」ということだ。「魚が、お腹が減っている時間」は永遠ではない。
レストランの予約時間まで! と、すぐにハマチを釣り上げた鉄人。
淡路島側から、神戸を見る。淡路島よりも明らかに都会だ。
ケミカルタンカー「第六丸岡丸」。船の波しぶきを見ても、このあたりの海が荒れているのが分かる。これが明石海峡だ。
兵庫運河、須磨海岸を通り、明石海峡大橋へと向かう。予約していたお昼の時間までまだ早かったので、少し遠回りしてから「ゲストハウス・Geragera(ゲラゲラ)」に向かった。
ゲラゲラの前は、いつ行っても水面が穏やか。お店の前のプライベートビーチに、ジェットをアンカリングして上陸する。
ゲラゲラ店内の素敵な絵。ここに長居する人の気持ちが分かる。
「ゲラゲラ」は、「食事が美味い! 味が本格的! 居心地が良い!」と、3拍子揃っている。パルアップのお客さんがツーリングに来たとき、ここに座ると動かなくなることで有名だ。
このお洒落なレストランのオーナーは、可愛い女性だ。だから毎年、勘違いして「イキりたがる」ジェット乗りが、この水面を種馬のように走りまわる。その結果、「出入り禁止」になるのだという。
スタッフやお客さんによって撮られた「スマホで撮影した証拠写真」がパルアップに送られ、「もう2度と来させないように」と、鉄人に「依頼」が来るのだ。
ある種、強烈な「破門状」である。
出入り禁止になる人には、共通した特徴があるという。それは、普段は“良い人”と言われている人ということ。悲しい話である。皆さん、くれぐれもハメを外しすぎないよう、気をつけてください!
夕方、魚釣りを終えたベテラン組がパルアップに戻ると、若手スタッフたちは、自分のジェットをキレイに水洗いし、片付けの真っ最中だった。
ジェットをキレイに洗っている姿は、とても清々しい気にさせられる。 こうして、「パルアップの休日」は、静かに更けていくのであった。
ジェットのスピード感、非日常の「水の上を走る」という体験。大自然が相手なので、同じ景色は2度とない。
爽やかな風を感じて走る幸せ、すべてが最高!
1日が、あっという間に過ぎ去っていく! 子どものころのような、「楽しいだけ」の1日が過ごせる。ツーリングは体力を使うので、お腹が減る。
それよりも、とにかく楽しくて仕方がない。
「ジェット・ツーリング」を詳しく知りたくなったら、ジェットショップに行くといい。そこで相談して、一度、経験させてもらうしかない。本気で行きたいと思ったら、ショップは惜しみなく協力してくれる。
PAL-UP(パルアップ)
〒662-0934
兵庫県西宮市西宮浜1丁目46番
TEL.0798-26-7572
営業時間/9:00~19:00
年中無休
URL/https://www.pal-up.com/shopping3/index.html
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