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故障・水洗口のキャップを締め忘れただけなのに……。実録・ジェットスキーが壊れた話 (水上バイク)

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突然調子が悪くなった我が愛艇「SX-R」

思い当たる原因は、走行中、水洗口の蓋が開いていたことだけ……

それは突然の出来事でした。いつものように、私はスタンドアップのSX-Rで烏帽子岩までブッ飛ばしていました。そして、帰ってきたら、調子が悪くなっていたのです。
海では水面が荒れていて気付かなかったのですが、穏やかな川に戻ってからアクセルを握ると、何となく物足りない加速感。レスポンスも悪い……。アクセルを握ってから、少し遅れながら最高速に達する。最高速になると急に減速し、しばらくするとまた元のスピードに戻るの繰り返し。

何となく、船体に違和感を感じました。
ふと見ると、フードの左前から水しぶきが上がっていました。その場でエンジンを止めて確認すると、普段は閉まっているはずの水洗用のプラスチック製の黄色い蓋が、外れていました。「波の振動で外れたのかな?」。蓋を閉めて、もう1度走り出しました。それでも、一向に症状が改善しない。明らかに変です。加速のパンチ力が全然足りません。
陸に上げてフードを開けると、エンジンルームが異常に熱かった。こんなに熱くなることなんて、今までになかったことです。

そこで、普段からお世話になっている、コンストラクターの藤江功一氏に電話をして症状を話すと「水洗口から噴き出した水が、ダクトを通してエンジンルーム内に流れ込み、それをエアクリーナーが吸い込んでエンジンが焼き付いているかもしれない。もしくはマフラーが溶けて、穴が開いているかもしれない。あとはスロットルボディーの不調か、電気のトラブルではないか」と、いくつかの可能性を示唆してくれました。いずれにせよ、2~3日中に来て、見てくれるといわれました。その間、何もできないで悶々と過ごしていたのです。

フードを開けると出てくる水洗口のキャップ。普段は写真右のように閉まっているが、なぜかこの日は左のように蓋が開いていた。走行中ココから水が噴き出していた。本来は冷却ラインを通って排気系統を冷却するための水が、キャプが外れていたため、吹きこぼれてしまい冷却機能が不十分であったため、全ての不調が始まった。要は冷却水漏れが主な原因だったのだ。

私のSX-Rを見て、「あぁ、やっぱり原因はココですね」と一言

原因は、ゴムホースが裂けていたことだった

数日後、やって来た藤江氏が最初に確認したのがプラグでした。焼け具合を見て「問題なし」。次に、コード類がキチンと接続されているか確認しました。こちらも問題ありません。

さらにエアクリーナーをボックスごと取り外します。なんと、その裏側にあるマフラーのゴムホースが、破れて穴が開いていたのです。「新品のホースなんて用意していません!」と慌てる私を尻目に、藤江氏は自分の車に戻り、1本のホースを持ってきました。
「電話で症状を聞いたときから、ココが怪しいと思っていたんですよ」と一言。
ニコニコ笑いながら、あっという間に交換して修理完成。不治の病のようにあれほど悩んでいたのに、終わってみれば、なんともあっけない幕切れでした。

プラグの焼け具合を確認。ここには異常はなかった。

エアクリーナーを外して確認する。

SX-Rが壊れた原因は、マフラーの温度が異常に上がっていたこと

水洗キットの蓋が外れたまま走ると、本来は冷却ラインにまわるはずの水が吹き出て外にこぼれてしまい、十分にマフラーを冷やすことができなくなります。冷却されないマフラー内の排気温度は、800度近くにまで上がります。しかし、ゴム製のホースは130度で溶けてしまいます。
マフラー付近の浮力体の発泡スチロールが熱で溶けていたことからも、マフラーの温度がいかに上がっていたかを思い知らされました。

手で掴んでいる、ゴムホースを外すと、エアクリーナーの後ろ側の壁が熱で変色していた。

ゴムホースを外したところ。黒い発泡スチロールの浮力体が、熱で溶けて変形しているのが見える。

高温になり、溶けて裂けたゴムホース。ここから排気が漏れる。

エンジン不調の理由

ゴムホースが溶けて、穴が開いたところから排気が漏れます。その漏れた排気をエアクリーナーが吸い込み、再度、エンジン内部に入ります。冷却されていない高温の排気は、通常の空気に比べて酸素の量が圧倒的に少ないので、パワーダウンを起こします。それが走らない理由でした。

それでも、高速で走行しているときは、外から普通の空気もエンジンルームに送り込まれるので、比較的、問題なく走れます。でも、コーナリングなどで減速すると、マフラーから漏れた熱い排気を吸い込むので、アクセルを開けてもすぐに加速しない。
速度が上がり、外部の空気が入ってくるにつれて、速く走れるようになるということでした。

今回、エキゾーストマニホールド(排気部分)を通った水が、水洗キットから溢れ出たわけですが、全ての水が溢れ出てしまったわけではなく、溢れなかった残りの水は、通常通りエンジン内部のシリンダーヘッドに入ってウォーターボックスを通り、マフラーに抜けていきます。
冷却水の量が少なくなっても、エンジン内部とウォーターボックスまでは何とか大丈夫でしたが、その先から冷却水が不足してトラブルに見舞われたのです。

警告ランプが点灯しなかったのは、「少ない水でもかろうじてエンジンは冷却されていたから」。センサーがあるのはエキゾーストマニホールド付近であり、エキゾーストマニホールドを通ってから水が溢れ出たので、異常を感知しなかったのです。

写真左が新品のゴムホース。右が熱で変形し、穴が開いたゴムホース。太さも形も全く変わってしまっている。

藤江氏にホースを持ってもらった。向かって左が新品、右が変形したゴムホース。

こうして、数日間の私の悩みはあっけなく終わりました

それにしても、原因が分からない愛艇の不調は嫌でした。日常生活のなかで、頭痛や歯が痛い症状に似ています。いつも気になって、気がかりで……。ジェットのことを考えないようにしたいのに、歯痛のように頭から離れない。憂鬱な毎日でした。
だから、藤江氏に修理してもらい、その原因まであきらかになったら、目の前が急に明るくなった気がします。

現代のジェットは、そう簡単に壊れません。でも、誤った使い方をすれば、すぐに壊れてしまいます。もうこんな切ない思いはごめん被りたいものです。皆様、水洗キットの蓋はキチンと閉めましょう。

完全復活した我が愛艇。

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