何となく知っているようで、実はよく分からない部品の代表格「プラグ」。電気的に火花(スパーク)を発生させる方式のものは「スパークプラグ(以下、プラグ)」と呼ばれ、ジェットスキーに付いているのもこのタイプである。
ガソリンエンジンは、燃料と空気を混ぜた混合気をタイミングよく燃焼させて、動力を発生させている。ところが、ガソリンは高温の中でも自分では着火しにくく、タイミングよく燃焼させるには、「火」を着けてやる必要がある。ここで火花を飛ばし、点火するのが「スパークプラグ」の役割だ。
交換をしないでいると、エンジンの調子が悪くなり、本来の性能を発揮できなくなる。それでも交換しないでいると、エンジン故障の原因に繋がることもある。
プラグは、エンジン真上のシリンダーヘッドに付いている。1気筒(ピストン1個)につき1本ずつ、3気筒なら3本、4気筒なら4本プラグが付いている。各気筒のプラグは、前側から1番、2番、3番、4番……と呼ぶ。
エンジンは、ガソリンと空気(混合気)をピストンで圧縮し、爆発させて動く仕組み。しかしガソリンは、圧縮しただけでは燃えない。なので、先端の電極が火花を飛ばし、ガソリンに火を点ける。要するに、プラグが燃焼・爆発のきっかけを作るのだ。材質は、金属とアルミナ磁器(強度と断電性などを備えた素材)。
電気の供給源はバッテリー。電圧は12V。そのままでは電圧が弱すぎて火花が飛ばないので、電装部品で10,000〜30,000Vに上げる。それからプラグに電気を流し、火花を飛ばす。
プラグの先端は「電極」になっている。電気が「中心電極」に来ると、隙間(火花ギャップ)を飛んで、「接地電極」に着地しようとする。このときに火花が飛ぶ。
プラグが本来の性能を発揮するのは、新品状態のとき。走れば走るほどプラグ先端の電極が減る。そうなると、火花がちゃんと飛ばなくなる。つまり正常な燃焼・爆発ができずに、エンジン不調の原因になる。燃費も悪くなる。
プラグは、最低でも1シーズンに1回は交換する必要がある。その際、全気筒分(3気筒なら3本)を取り換える。
プラグは「トルクレンチ」という専用工具を使って、メーカーの規定トルク(締め付けの強さ)で取り付ける。自分でやる場合は要注意。脱着時に力いっぱい工具を回したら絶対ダメ。プラグが折れて、ヘッドにネジの部分が残ってしまうからだ。
特に4ストローク艇のプラグは、細くて折れやすい。もし折れたら素人では直せない。高額な修理代がかかるので、プロショップに依頼したほうが安心だ。
プラグは、混合気が爆発した熱を直接受ける。だから、エンジンが動いているとき、超高温になるのだ。プラグの温度は、通常でも500〜800℃。瞬間で2,000℃にもなる。熱くなりすぎるとプラグとピストンが溶けてエンジンが壊れてしまう。そのため、プラグは「熱を外に逃がす構造」になっている。
プラグが火花を飛ばすには、電極が濡れていたり、冷えすぎてもダメ。水中でライターに火を点けられないのと同じだ。ガソリンやオイルが付着しても、瞬時に蒸発するぐらい高い温度が必要なので、適度な高温状態を維持できるように作られている。
プラグは、放熱具合によって何種類かある。放熱具合は「熱価」といい、熱価は数字で表す。数字が大きくなるほど放熱しやすい。高熱型のエンジンは、「8番」より「9番」のほうが適している。通常は、メーカー推奨熱価のプラグが付いている。
C→ネジの太さ10mm(Bだと14mm、Dだと12mm)
R→抵抗入り(他の電子部品への悪影響を防ぐ)
8→熱価(放熱具合)
E→ネジの長さ14mm(Sだと10mm)
B→上部のターミナルが一体成形型
電極部分に、高価なイリジウム合金を使った高品質プラグのこと(純正品は安価なニッケル合金)。電極が減りにくく、耐久性に優れているのが特徴。長期間にわたって、新品時の性能を発揮できる。
価格は1本1,600円ぐらい。純正品の約2倍だが、自動車の場合は3〜5年もノーメンテで使えるらしい。ジェットスキーでそんな使い方をしたら、ネジが固着して外せなくなる可能性大。なので、純正品と同じように1年に1回は、点検または交換したほうが良い。
熱価の異なるプラグに交換し、エンジン性能を最大限に引き出すプラグチューン。今回、シードゥSPARKのプラグを換えて、最高速を計測した。
今回、最も速いトップスピードを記録したのは、新品の純正8番とイリジウムプラグ8番。プラグ交換だけで、今までより約1km/hも速くなったのには驚いた。これぞプラグチューンである。イリジウムプラグは、耐久性に優れているので、良好なエンジン状態が長く続くと思われる。
2番目は、それまで付いていた古い純正8番。劣化したプラグはエンジン本来の性能を引き出せないことを証明する結果となった。
最下位は、純正とは異なる熱価の7番と9番。最高回転数は古い純正8番を上回ったが、最高速は伸びなかった。
やはり、純正ノーマル艇には、メーカー推奨熱価の純正プラグが最も適しているのだ。
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