この2年半の新型コロナの感染拡大により、本社機能や主要拠点が首都圏に集中することに対する脆弱性が改めて認知された。在宅勤務も定着してきた今、さまざまな企業が地方へと移転をしている。
2020年に人材派遣会社の大手「パソナグループ」が、兵庫県の淡路島に移転することを発表したことを覚えている人も多いだろう。パソナグループでは、昨年末時点で東京や大阪などから約350人の社員が淡路島に移り、現在は約700人が淡路島で勤務をしている。2年後の2024年には、約1200人が淡路島勤務となる見込みだという。
2021年に本社移転を行った企業は、全国で2258社。このうち、本社または本社機能を首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ移転した企業は351社に上る。特に北海道への企業の移転は、コロナ前の2019年には7社だったのが、昨年は33社と約5倍も増えている。
以前は地方移転によるメリットより、採用面や取引先との関係などのデメリットのほうが多いとされていた。しかしコロナによって首都圏一極集中のリスクが顕著化したことに加え、テレワークでも業務が可能であることが分かった企業も多い。首都圏にオフィスを構えるメリットが薄れたことも、地方移転に踏み切った要因のひとつだ。
特効薬が開発されたらまた変わってくるのかもしれないが、現段階で、私たちの意識に「密はダメ!」と植え付けられたことは間違いない。
コロナ以前は、「観光地は大勢の人で賑わっています」「多くの家族連れが楽しみました」と、人が集まることが、季節の風物詩、“ポジティブな現象”と解釈されて報道されていた。密になることが「悪」ではなかったのだ。
それが今は、人が集まること自体が「悪」となった。
わが社は東京にあるが、同じ都内の人と打ち合わせをする際、Web会議をすることがほとんどである。リアルで会う機会が減り、リモートで話すことがエチケットのような感覚になっている。
コロナ前の「トップ営業マン」と呼ばれる人たちは、頻繁に顧客に会いに行くのが常識だった。「1回1時間会うより、15分を4回会う」と言われるくらい、人と会って好感度や印象を上げていたのだ。
それが、今は「会うことが非常識」といわんばかりの風潮である。
私も含め、緊急事態宣言が解除されても「3密」を避けるという、新しい基準に知らないうちに馴染まされている。確かにこんな社会なら、家賃の高い都心にいる必要性は薄れる。打ち合わせがWeb会議ですむなら、どこに住んでいても関係ない。
いずれにせよ、わずか2年半で世の中が急激に変わってしまったのだ。
食についても大きく変化した。外食が減り、自炊やテイクアウト、フードデリバリーが増えた。食材やお店の購入基準も「ストックできる食材の購入」や「応援したい店・販売者の食材を購入」「オンラインで食品を購入」が多くなっている。
食事の仕方も、「オンラインでの飲み会やランチ」や「家族や友人と食べていてもシェアをしない」となってきている。
ずっと「コロナ」を意識させられ続けた結果、意識せずとも選択している「無意識での行動の変化」が、世の中が急劇に変わる最大の要因だと思う。
しかし、考えようによっては水上バイクユーザーにとっては「地方に行く」という選択肢もアリかもしれない。東京のヘドロや濁った水辺で水上バイクに乗るよりも、水がキレイで環境の良い地方に住んだほうがジェットライフは充実する。
東京から地方に行くと、いつも水のキレイさに驚かされる。「今日は雨上がりで、水が濁っているんです」と言われても、普段、東京湾で乗っている身としては「いえいえ、ものすごくキレイです」とうらやましくなる。
単純に、水はキレイなほうが嬉しいものだ。
コロナ禍の3密防止の観点から、アウトドアライフの評価が高まっている。空前のキャンプブームだと言われているが、今回、「アウトドアの楽しさ」を体験した人は、コロナ収束後もアウトドアで過ごすことに抵抗がないはずだ。
水上バイクもそうだが、大切な人と「屋外で共に過ごす時間を大事にする風潮」は、ますます高まっていくだろう。
常々、日本人は勤勉で「遊び下手」といわれていた。しかし、その価値観が変わって来たのかもしれない。コロナ前の社会より、自分自身が「楽しむ時間」を大切にするようになっている気がする。