ジェット業界を代表するヘルメットペイントの第一人者、Nagai Designs代表、長井 崇氏より、「渾身のヘルメットが出来た」と連絡があった。届いたヘルメットには「編集部で自由にお使いください」と書かれていた。
「同じデザインは2度と使わない」と公言する長井氏は、常に新しい手法を模索し、進化を続けている。
彼の新作ヘルメットは、17世紀前半、フランスで活躍した巨匠「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」が描いた「灯火の前のマクダラのマリア」をモチーフとしている。
新作ヘルメットのコンセプトは、「誰も使わない配色」である。長井氏曰く「通常なら、注文が来ない“色遣い”」で描いているという。華やかなモータースポーツにおいて、普通、艶のないカラーは使われない傾向にある。まして、ベージュをベースに「刻印塗装」をすることは、まずあり得ない。
長井氏は長年にわたってジェットスポーツ界でヘルメットペイントを手掛けているが、どれほどの多くの作品を制作しても、「まだ進化したい」という情熱が衰えない。進化に近道は存在しないが、現在は「モータースポーツでは使用されない配色で描く」というチャレンジをしている。
依頼されたヘルメットなら、こんな冒険はできない。「依頼されない」からこそ、自分が進化するためのチャレンジができるのだという。
長井氏は現在、59歳。まもなく還暦を迎える。氏にとって、このヘルメットが「還暦前の最後の作品」という。
昔から、ヘルメットに向かうときは、下書きもせずに無地の球体に向かい「気の向くまま」に描き出す。
描いているうちに何かがおぼろげに見えてくる。「行き当たりばったりで、自分でもどう仕上がるのか、最後まで分からない」と語る。
今回は、右側に「灯火の前のマクダラのマリア」を、反対側にはドクロを描いている。恐ろしく手間がかかった見事な作品である。この作品を作って、「まだまだやっていけるという自信を掴めた」と、長井氏は言う。
60歳を過ぎても夢がある人は「少年」。15歳でも、夢がなければ「老人」という誰かの言葉が好きだと話す。
暦が還り「新たな生」が始まる「永遠の少年」は、次にどんな驚きを我々に見せてくれるのか。長井氏のヘルメットアートへの情熱から生み出される作品がこれからも楽しみだ。
関連記事
格好いいヘルメットのデザインって何?
ジェットスキー(水上バイク)、ヘルメットはいるの?
花形のプロスキーGPクラス 2019年 ワールドファイナル
日本人ライダー「ジェットスキーワールドカップ 2019」ダイジェスト「Pro Ski Grand Prix」
ヘルメットペイントの第一人者 ナガイデザイン代表 長井崇氏 インタビュー
ヘルメットペイントの第一人者 ナガイデザイン代表 長井崇氏 インタビュー2