カテゴリ
タグ
  1. TOP
  2. LIFE
  3. ヘルメットペイントの第一人者 ナガイデザイン代表 長井崇氏 インタビュー 2/2 ジェットスキー(水上バイク)

ヘルメットペイントの第一人者 ナガイデザイン代表 長井崇氏 インタビュー 2/2 ジェットスキー(水上バイク)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
友人が来たら帰らないというほど居心地のいい室内。

スポンサードする基準は「本物」かどうか。それだけです

WJS 長井さんは、ヘルメットペイントのサポートもされていますよね。サポートライダーはどうやって決めているのですか?
長井 ホームページにスポンサーの基準っていうのがあるんですけど、「自分の主観でやります」って入れています。だって、「偉大な、正真正銘の本物レーサー」である竹ちゃんとケヴィン(・レイタラー)のヘルメットをサポートしてきたからね。そこいらにいるゼッケン1番なんていらないでしょ。逆に、「本物」だと思ったら、2位でも10位でもやります。

WJS チャンピオンになったら塗ってもらえるわけではないのですね?
長井 俺がスポンサードしているライダーは、俺の中で「本物」だけ。本物かどうか、それだけです。ちょっと勝ったからって「スポンサーしてくれますよね?」って言われても、それは違うでしょって。誰と戦って、どんな走りをしてきたかが重要なんです。「勝ったからお願いします」っていうのは、俺のコンセプトとは違います。

WJS 結果ではなく、戦い方や過程なのですね。
長井 普通のスポンサーなら、結果さえ出せば良いのでしょうけど、それは嫌なんです。自分がいいなって思えるライダー。自分をファンにさせてくれるライダー。ファン心理で「被ってほしい」って思えるライダーです。

自分が「被ってほしい」と思えるライダーにしかサポートはしない。

仕事じゃない。自分のセンスとアートを高めたいだけ。だから、納得いくまで時間をかけられる

WJS 現在、何人のライダーのヘルメットをサポートで塗っているのですか?
長井 両手で足ります。でも、1回スポンサーを始めたら、何があろうと、俺が塗れるときだったらずっとやる。一生、俺が塗れるのは塗ろうと思っている。

WJS 1年間で、何個くらい塗っているのですか?
長井 オーダーが来ても、1カ月に1~2個しか塗れないからね。本当に数個。年間で12個は塗ってないですよ。

WJS レース会場でも、すごくインパクトがあるヘルメットだから、もっとたくさん塗っているだと思っていました。1個仕上げるのに、どれくらいの日数がかかるのですか?
長井 最終仕上げまでに1カ月はかかりますね。自分の本業の仕事が終わってから、夜やってるから、そんなにホイホイとはできません。

WJS 長井さんは、ご自分のことを「素人」と言いますよね。あれはどうしてですか?
長井 「素人」っていうのも、レベルが低いという意味じゃない。「プロじゃない」っていうのは、これで食っていないってことです。本当にビジネスにするなら、年に100個や200個は塗らないといけないですよね。俺なんて年間12個も塗らず、しかも、そのうち半分はタダで塗っているわけだから、それで食えるわけがない(笑)。

WJS ワールドファイナルなど海外のレースに行くと、世界のトップライダーたちは、名のあるペイントメーカーの格好いいヘルメットを被っています。そのなかでも、長井さんのデザインは、頭ひとつ抜けていると思います。
長井 自信があって言うんじゃないけど、「本当のプロ」は、俺には勝てないと思います。なぜかといったら、「俺は仕事じゃない」から。自分のセンスとアートを高めたいだけです。だから、納得いくまで時間をかけられる。無限に時間を使えるアマチュアには、プロは絶対に敵わないんじゃないかな。

WJS そういう意味での「素人」と「プロ」ということですね。
長井 そうです。俺は、本気で「アート」として追及したいだけ。それを、俺が本物だと認めたライダーに渡す。ありがたいことに、最近はクチコミで俺を知ってくれている人が出てきました。車の世界で有名なF3000の選手からのオーダーも来ています。

WJS これだけ手間がかかっているなら、「ヘルメットペイント、1個20万円~」といわれても、高いとは思わないですよね?
長井 最初は12万円だったの。それを2014年に今の金額に値上げしたんですよ。なんでかっていうと、断る理由。値段を高くしておけば断られるって思って。10何万円だと来るんですよ。

WJS それでも欲しいと思ったらオーダーできるんですよね? その場合、納品までどれくらいかかるのですか?
長井 もし、今日オーダーをもらっても、サポートしているライダーを優先するから、最低でも半年は待ってもらわないとダメですよね。極端な話、2年後でもいいからってオーダーをもらっています。けど、2年後のほうが絶対に今よりも俺のレベルが上がっているから、頼んでくれた人に「目にものを見せよう」って気になりますよね。

WJS 「2年待つ」って言われたら、なかなか断れないですよね。
長井 いいものを塗りたいっていうのを追求しているからね。何ができるか分からない。できたものが「ナガイデザイン」だと思ってる。

冒頭で紹介した艶消しブラックのヘルメットが展示スペースで飾られている。ギターやバッグも、オーダーがあればペイントしてくれる。

頭の先からつま先まで「ナガイデザイン」が夢だった

WJS 2015年に、クエーキーセンスとナガイデザインがコラボレーションしたウェットスーツが発売されました。あのときは、どういう経緯で実現したのですか?
長井 2013年のJJSF最終戦で大阪の二色の浜に行ったとき、クエーキーセンスのブースがありました。ワールドファイナルのメインスポンサーを何度もしているのは知っていたし、海外の会社だと思っていました。そのとき、知人にトップの中野さんと紅矢さんを紹介してもらったんです。以前から紅矢さんのことは知っていたのですが、初対面だったので「ナガイデザインといって、ヘルメットを塗っています」って言ったら、「知ってます。何を今さら」って、「前からファンでした」って言っていただいたのが嬉しかったですね。

WJS お互いに知っていたのに、会うのは初めてだったんですね?
長井 そうなんです。そのとき自分から、「クエーキーセンスのヘルメットを塗らせてください」って頼んだのがきっかけです。

WJS そこで、ウェットスーツのデザインの話になったのですか?
長井 ヘルメットを塗っている以上、いつかは頭の先から足の先まで、自分でデザインしてみたいと思っていました。その夢をクエーキーセンスさんが叶えてくれました。

WJS デザインはすぐに決まったのですか?
長井 私、アナログ人間なんですよ。スマホも使えないんで。メールでデータを送ってもらって、パソコンから取り出して、さてどうしようかなって……。メリハリというか、スキャンしやすいということで、墨でデザイン画を描いて送ったんですよ。送ったあとに打ち合わせがあるんだろうなって思っていたら、いきなり「できました」って。シルクスクリーンで、私のデザインをウェットスーツに描いてくれていた。それで、「これを誰に着せるんだろう」って思ってたら、「ケヴィンに着せるから」って。

WJS いきなり、世界のトップライダーが着ることになったのですね。
長井 「いや、それまずいよね」って。海外のトップライダーのなかでも、世界チャンピオンのケヴィンに着せるって……。それともうひとつ。売れる・売れないっていう保証がどこにもない。いいかどうかを、客観的に見られないわけですよ。発売前なんて、寝られませんでした。

WJS 長井さんは、新しいことに挑戦するのに躊躇がないですよね?
長井 僕はしがらみもないし、この業界のことも分からない。面白そうだ、自分がデザインできるならやってみたいっていうだけです。2014年のケヴィンは、俺が新潟で塗ったヘルメットを被り、墨でデザインを描いたクエーキーセンスのウェットスーツをワールドファイナルで着用して世界チャンピオンになった。その写真を見て、本当に「カッケーよなー」ってシビレました。完全に、第三者になっちゃうんですよね。

WJS あれで、完全に「世界のナガイデザイン」になりましたよね。
長井 よく言うんだけど、「俺はメイドイン新潟」。この町から出ないけど、ここにいたって世界には行ける。そのためには、今、自分のできる一番いいものを、常に出していかないといけないなって思っています。

2015年のケヴィン・レイタラー選手。長井氏がペイントしたヘルメットを被り、氏がデザインしたウェットスーツを着て世界チャンピオンとなった。

ジェットスキー中古艇情報

月間アクセスランキング