上の写真は、ジェットスキーツーリングで東京から横浜へ向かう途中、誰と走っても、必ず一度は立ち止まる場所だ。
横浜へ向かう場合のルートとして、荒れる東京湾を避けて、羽田沖から京浜工業地帯を抜ける京浜運河を通ることが多い。ここは重工業地帯を走る運河で、輸送用の大型船も走るので川幅も驚くほど広い。視界に写るのは、無機質で少し錆びた重厚感ある鉄の建物や、ごみ処理場、炎が噴き出す高炉など、スチームパンクの世界のような建造物ばかりだ。
実はこの場所、夜になると横浜港からナイトクルーズ船が出ているくらい人気のルートだ。夜にはSF映画に出てくるような少し退廃的な夜景が楽しめるが、昼は薄暗くて殺伐としている。
朝イチで東京を出発し、京浜運河を西へ西へと走って来た我々の前に、突然、真正面に「みなとみらい」の高層ビル群が現れる。近未来都市「YOKOHAMA」の姿だ。グループの先頭を走っていたジェットスキーが、必ず立ち止まってしまう場所なのだ。
「立ち止まる」といっても、ほんの少しの時間だけ。また、すぐに走り出す。それくらいの短い時間だけ「止まる」。
「YOKOHAMA」のイメージは十人十色、人それぞれだ。
でも、「この場所」こそが、すべてのジェット乗りにとって有無を言わせぬ「YOKOHAMA」なのだと思う。
それまで走ってきた工業地帯とは全く違う、垢ぬけた「YOKOHAMA」に驚き、感激し、少し緊張しながら横浜港へと入っていく。大層な場所だ。
私にとって、この場所から、みなとみらいの高層ビル群に向かって走ることだけが「横浜に向かう」ということなのだ。
ここからベイクォーターや、赤い靴履いていた女の子の童謡でおなじみの山下公園やランドマークタワー、赤レンガ倉庫といった、誰もが知る横浜の「名所」に向かうことになる。
しかし、私にとっての「大都市・横浜」を感じるのは、ジェットスキーで一度止まる「この場所」しかない。そして、「この場所」が、私が最も好きな「YOKOHAMA」なのだ。