カテゴリ
タグ
  1. TOP
  2. BEGINNER
  3. ジェットスキー取扱説明書(新艇時) Part.5「慣らし運転」(5/7)

ジェットスキー取扱説明書(新艇時) Part.5「慣らし運転」(5/7)

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

5 自分でやる「慣らし運転」

「慣らし運転」は、絶対に必要なの?

WJS ジェットスキースキーの慣らし運転は、絶対にしなければならないのですか?
鈴木 やっておくべきです。

WJS 昔と違って、現代の精密機器だから、やらなくても大丈夫ではないのでしょうか?
鈴木 SX-Rのエンジンは、基本的にはSTX-12Fから変わっていないから大丈夫と言う人がいますけど、アレ、嘘です。私が、今、言えるだけでも、かなり改良されています。メーカーは絶えず改良を重ね、不具合が出ないように部品や素材の変更をしています。だから、昨年モデルのSTX-15Fと、今年モデルのエンジンが同じかどうかなんて、メーカーにしか分かりません。「慣らしをしなくても大丈夫」なんて、全部知り抜いている人しか言っちゃいけないし、全てを知っているメーカーが「慣らし」を推奨しているのですから、やらないとダメです。自分の大事なジェットスキースキーですから。

初めてガソリンを入れる。不思議だが、ある種の覚悟が必要だった。「初めて」は、何であれ嬉しくて不安。

「慣らし運転」のやり方

カワサキ推奨の慣らし方法
最初の5分間/2,500回転以下
次の1時間/4,000回転以下
次の30分間/6,000回転以下

WJS SX-Rを例に「慣らし運転」について教えて下さい。
鈴木 取扱説明書には回転数で書いてありますが、SX-Rにはタコメーターがありません。ランナバウトなら、「タコメーターでエンジンの回転数を確認して下さいね」って説明するんですけど、アクセルの握り方で調整してもらいます。「アクセル開度」と、我々は言っています。SX-Rはアクセルを全部握り込んだときの回転数が8,300回転ぐらいなので、4,000回転以下ならハーフスロットル。アクセルを半分以上握らない。6,000回転なら75%以上握らないということです。

WJS SX-Rの最高速が時速96kmといわれていますから、アクセルを半分あけても50km/hくらいのスピードは出してもいいんですね?
鈴木 そうです。ランナバウトなら60 km/hくらい。逆に言うと、そのくらいの速度で走っても、十分に面白いんですよ。そのスピードでコーナーをまわれと言われたら、なかなか難しいですからね。なかには、ツーリングしながら慣らしをしている人もいますよ。

アクセル開度の目安
最初の5分間/アイドリングのまま、アクセルを握らない(2,500回転以下)
次の1時間/半分以上アクセルを握らない(4,000回転以下)
次の30分間/75%以上、アクセルを握らない(6,000回転以下)

WJS ずっと同じ回転数で走るのですか?
鈴木 ちょっとニュアンス的になってしまうのですが、僕がよく言うのは、「一定の回転数のまま走り続けるのは、あまり良くない」です。例えば、ピッタリ2,000回転のままとか、3,000回転のまま走り続けていたら、お客さんは上手く慣らしをしていると思うかもしれません。でも、僕は良くないと思っています。

WJS 一定速度では、ダメなのですか?
鈴木 慣らし運転というのは、「擦り合わせ」を目的としています。ピストンは、上下に真っ直ぐに動いているわけではない。回りながらというか、歪みながらって言えば良いのかな? ピッタリ同じラインを通って上下しているわけではありません。ちょっと動いているんです。ピストンリングは、もっと動く。ずっと同じ回転数ではなく、このピストンとピストンリングに、いろいろな負荷をかけてあげる。それにより、ピストンがシリンダーに当たって「かじる」ことを防ぐための擦り合わせを行うのが「慣らし」という考え方です。

「慣らし」は絶対に必要!

「慣らし」の本来の目的は「擦り合わせ」。
指定の回転数以上は上げないけれど、それ以下のいろんな回転域で負荷をかけてあげる。

WJS 以前、スパークの慣らしをしたとき、ランチャーに括り付けて、アイドリングで1時間くらい放っておいたことがあります。素人的には、エンジンの回転数も一定なのでいいと思ったんですけど、それではダメなのですね?
鈴木 それは、手を抜いている大雑把な人のやり方です。愛着心も何もない……。その回転域だけなら確かに良いかもしれないで。けど、他の回転域を使ってないので、エンジン全体で考えたら、あまり良くはないですね。本来の目的は「擦り合わせ」なわけだから、指定の回転数以上は上げないけれど、それ以下のいろんな回転域で負荷をかけてあげる。これが一番の要諦だと思います。

WJS スタンドアップのSX-Rも同じですか?
鈴木 SX-Rも、4サイクルになってバルブがつきましたよね。インテーク側とエキゾースト側にそれぞれ付いていて、開いたり閉まったりと、このバルブもくるくる回って動くんです。ずっと同じ回転数で乗っていると、恐らく同じところの擦り合わせばかりになってしまう。だけど、ちょっと加速したら大きな負荷が加わるし、ゆっくり流していると、また違う負荷が加わる。だから、いろんな回転数を使ったほうがいいですよ、ということです。

WJS それなら、慣らし運転などしないで、最初から普通に乗れば良いと思うのですが?
鈴木 そうじゃない。一番初めというのは、キレイに見えてもアルミニウムの破片とか、いろんなものが入っていますから。

最初が肝心。「慣らし」にズルはナシだよ。どんどん愛着が沸いてくる。それが、ジェットライフにはとても重要。

慣らし運転のとき、気を付けることはなんですか?

もし異常があるようなら、すぐに陸に上げてください。
水の上だけでなく、陸上でもランチャーなどの上で点検するのも大事です。

WJS 効果的に慣らしをする方法はありますか?
鈴木 ズルはナシです。慣らしの基本は、まずアイドリング状態で、デッキに座りながら20~30mくらいの円を1周するような感じで走らせます。そのときに、右側の検水口から冷却水がちゃんと出ているかどうかを確認してください。エンジンをかけて走り出しても、すぐに検水は出ないんですが、少し経つと出てきます。それで、冷却水がちゃんとまわってることが確認できる。水が出ない場合は、すぐに陸に戻って上げないとエンジンが熱くなってしまう。これが一番大事です。

WJS たったそれだけの距離を走っただけで分かるのですか?
鈴木 調子が悪いかどうかは、すぐに分かります。次に確認するのが「音」です。エンジンの音を聞きながら、「異音がしていないか」と、フードに耳を近づける感じで音を聞いてあげる。人間でいえば、心臓の鼓動を聞くような感じですね。あと、SX-Rはガソリンのランプと警告ランプが付いているので、ここもちゃんと動いているか確認します。もし異常があるようなら、すぐに陸に上げてください。水の上だけでなく、陸上でもランチャーなどの上で点検するのも大事です。それで、「問題ない」となったら、初めて普通に慣らしをするわけですね。

WJS 慣らし運転のとき、気を付けることはありますか?
鈴木 波で跳ねてキャビテーションが起きたとき、一瞬、回転数が上がります。これが良くありません。

WJS エンジンを、空回りさせてはいけないということですか?
鈴木 そう。オートバイでいえば、ギア抜けですよね。タコメーターでは1万回転でも、実際には1万5千回転くらいまわっていますから、これは非常に良くない。

WJS 波のある場所だと、エンジンを空回りさせる危険があるから、なるべく平水面でしたほうがいいんですね?
鈴木 はい。回転数にあまりとらわれないで、「何かあっても、4,000回転に戻してください」ということです。ゆっくりやろうが、パンッとまわそうが、すぐに戻してあげれば大丈夫です。それでエンジンが壊れるようなら、クレームで直してあげますよ。

最初に水に降ろすときは、「進水式」をしましょう。シャンパンでお祝い。ジェットスキーに飲ませても、人は飲んじゃダメ! 

「慣らし」のときじゃないとやらないようなことって、たくさんあります。

「慣らし」は、新艇の一番最初にしかできない「特権」です。

WJS 鈴木店長のお話を伺っていると、「慣らしは楽しんでやったほうがいい」と思います。
鈴木 そうなんです。これは、本当に最初しかできないことだからね。「嫌だな、面倒だな」と思うのではなく、天気の良い、気分の良い日やれば、意外と面白いんですよ。それに「慣らし」のときじゃないとやらないようなことって、たくさんあります。

WJS 例えば、どういうことですか?
鈴木 低回転で走ったり、ゆっくり走っているときに急旋回したらどうなるのかなんて、慣らしのときにしかやらないですからね。そうした細かい検証をしていると、ガソリンなんて一瞬でなくなっちゃいますよ。

WJS 確かに、ただ漫然と走るのではなく、目的があったら、すぐに慣らしの時間が終わってしまいそうです。
鈴木 慣らしのときに感じてほしいのが、「本当に燃費が悪いかどうか」。皆さん、慣らしが終わると、全開でバンバン走るから、すぐにガソリンがなくなっちゃいます。自動車だって、1万回転でずっと走っていたら、ガソリンなんてすぐになくなりますからね。ジェットスキーだって、ゆっくり走っていれば、ガソリンはなかなかなくならなりませんよ。

WJS SX-Rの場合、慣らしにはどれくらいガソリン量が必要ですか?
鈴木 SX-Rは、満タンで23リットル入ります。私の経験上、だいたい、4,000回転で1時間走ったころにガソリンランプが点灯します。そこで給油したら20リットルのガソリン缶の8割ほど入ったので、16リットルぐらい足したことになります。ガソリンランプが点灯しても、タンクが空になったわけはないので正確には言えませんが、全部で約30リットル前後という感じだと思いますよ。

ジェットスキー中古艇情報

月間アクセスランキング