忘れもしない、あれは昨年の3月28日のことです。乗り終わって洗い終えた愛艇「SX-R」を移動させようとしたときに事件は起こりました。ジェットランチャーを持ち上げた瞬間、ジェットスキーが前に滑り落ち、ガタンとコンクリートにぶつかる音がしました。ジェットスキーとランチャーを繋ぐフックを、うっかり付け忘れてしまったのです。その場にいた人全員、「あー、やっちゃった」という目をしています。でもなぜか、私と目を合わせてくれません。
ただでさえ重い4ストロークスタンドアップですが、こんなときは特に重い……。マリーナにいた皆が集まって、持ち上げてくれました。見ると、コンクリートと接触した部分のゲルコートが剥がれて、白いFRPが剥き出しです。途方に暮れて「どうしたら良い?」と皆に聞くと、「プロに見てもらうのが1番」という答え。
大切なジェットスキーだし、このままだ放っておいたら、1日中、気になって他のことが手に付きそうにない。神経的に参ってしまいそうだ。そこで、ペイントのスペシャリスト、ヒロキックスデザインの佐々木宏樹氏に連絡をしたら、「すぐに見に行きますね」と駆け付けてくれました。
私の愛艇を見て一言。「このままでは乗れないですよ。FRPの地肌が白く剥き出しになっている部分から水が滲み込んできて、乗り続けたら、最終的には穴が開いて沈没するかもしれません。キチンと補修した方が良い」。傷つけたハルのフロント部分は、最も水圧がかかる場所。ここにヒビ割れがあると、ものすごい水圧がかかったときに割れるそうです。さらに、「今、見えている部分だけではなく、傷がついた周囲のゲルコートを剥いでみないと、本当の状態が分からない。恐らく、かなりクラックが入っているはず」と言います。
不注意をたくさん叱られたうえで、「全部、ヒロキックスデザインで直してください」とお願いをすると、彼は快諾してくれました。しかし、「エンジンルームを空にしないと修理ができない。エンジンだけでなく、ドライブシャフトやハンドルポールも取り外して、船体だけにして」と言われました。
もちろん、私にエンジンが降ろせるはずはありません。そこで、世界的コンストラクター・藤江功一氏にお願いし、全てお任せしました。(その様子は、コチラから見られます)
ドンガラにしたSX-Rの船体をヒロキックスデザインに渡すと、そこから、私にはオーバースペック思えるぐらいの懇切丁寧な作業の始まりです。その様子を、逐一、取材をさせていただきました。船体補修はメチャクチャ奥が深いです。「ヒロキックスデザインの仕事の良さは、10年後に違いが分かる」と佐々木氏は胸を張ります。
この補修工程の全てを、2月10日公開のワールドジェットスポーツマガジン3月号で掲載します。ぜひ読んで、船体補修の奥深さを知って下さい。
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