カテゴリ
タグ
  1. TOP
  2. LIFE
  3. どっちが幸せ? ジェットスキーコラム(水上バイク)

もう、どうにも止まらない

嫌な気分を吹き飛ばすには、何かに夢中になるのが1番

自粛とステイホームの毎日で、気分が塞ぎがちな今日この頃です。 先日、季節はずれの社内大掃除大会が、突然始まった。誰が号令したわけでもなく、気が付けば頭にタオルを巻き、口には新型コロナ対策用のマスクをはめたまま、雑巾片手に、ゴシゴシゴシゴシ……。

発端は、この日、大量のファックスを送っていた編集部員の1人が、送信待ちのあいだ、たまたま機械の汚れが気になったことだった。「送り終えるまで少し時間があるし、待ってるうちにきれいにしようか」。
ところが、ファクシミリ機を磨き終えると、それを置いてある棚の汚れが気になりだした。あとは、転がる石のごとくだ。次はコピー機のガラス面の指紋がどうにも我慢できず、倉庫からガラスクリーナーを持ち出して拭き始めた。それが終わると、次のターゲットを求めるように、雑巾を片手に社内を磨き始めたのだ。

彼の行動を見ていた他のスタッフも、なぜか急にソワソワと机を片づけ始めて掃除に参戦。数時間後には天井の蛍光灯も全て取り外して1本ずつ磨き、ついでに蛍光灯の傘までピカピカにし始めた。
気が付かなければ、そのままでも不都合はないのに、一度気になり出したら最後、もうどうにも止まらない。

俺が一番イケてると思ったのに、なんか違う気がする……

普段は全くやる気の起きない社内の掃除でも、気になりだしたら止まらないのだから、自分の趣味となったら、もっといろいろと気になってくるのは当然のことだ。

思い出すのは、私が最初のジェットスキーを買ったときのこと。そのときは「ジェットスキーさえあればいい」と、それだけで満足だった。
特にそれが最新モデルのフラッグシップだったりしたら、まだ水辺に行っていないのに、自分が「一番イケてるジェット乗り」だと思うわけだ。

ウキウキワクワクと、ゲレンデデビューの日を指折り数えて待つ。そして、待望の休日がやって来た。ご自慢の愛艇とともに、いざ出陣。最初から浮かれっぱなしである。そして、ジェット乗りで賑わうゲレンデに到着した。

真っ先に目に付くのが、他人のジェットスキーだ。「おっ、あっちは旧モデルだな。俺のは新品ピカピカの今年モデル。おまけにフラッグシップだ。どう考えても、このなかで俺が一番イケてる」などと、勝手に優越感に浸りながらスロープへと向かう。
そこでまわりを見渡すと、ジェット乗りの“先輩”たちが、手際よくトレーラーごと水に浸けてジェットを降ろしている。
そうか、ああやって降ろせばいいんだ。

不思議?初心者でないことが、クルマの止め方だけで分かってしまう。

スロープの順番待ちをしている間に他のジェット乗りを観察すると、ピッカピカのステンレストレーラーを牽いたベテランっぽいジェット乗りが、トレーラーごとザブンと水に浸けて、さっとジェットスキーを水に浮かべて去っていく。その手際の良さにも感心したが、先輩ジェット乗りの姿を見て、何か心に引っかかるものがある。

あれ? なんかあの人、格好いいよね?
俺のほうが最新モデルのジェットなのに、なんであの人のほうが格好よく見えるんだろう。
車か? いやいや車だって俺のほうがいいのに乗ってると思うぞ。
あとは何だ? トレーラーか?
いいトレーラーに乗せていると、持ち主までよく見えるのか!?

そうこうするうちに、次から次へとまわりの人のことが気になってくる。
「あっちの人は、カタログで見た最新モデルのウェットスーツ着てる」
「そこの人は、ツーリングのときとスポーツライディングでシューズを変えてる」
どの人も、みんなデキるジェット乗りに見えてくる。
ところで俺は? 他の人からどう見えてる?

「あれ? なんかあの人、格好いいよね?」 2018年ジェットスキーワールドカップチャンピオン マーリン・ラファエル選手

趣味の世界というのは恐ろしいものだ

ジェットさえあれば、着ているものは何でもいいと思っていた私。原宿のセレクトショップで買ったサーフ用パンツに、海の香りが全くしないTシャツ、友達からもらったライフジャケットという出で立ちが急に恥ずかしくなってきた。
せっかくのニューモデルお披露目で上がっていたテンションが、みるみるうちに下がっていく。
来たばっかりだけど、帰りたい。

それまでは、全身をウエットスーツでコーディネートするなんて、プロライダーみたい。自分はまだ初心者なので、すごく抵抗があったけど、実はそうじゃない。趣味の世界だからこそ、思いっきり見栄を張って、隙のない格好をしなきゃいけなかったのだ。そして、ここではウエットスーツがもっとも普通の格好だったのだ。

歴史的大敗北を喫したゲレンデデビューのあとすぐに、ジェットショップに行って、上から下まで同じブランドのライディングギアで揃えたのは言うまでもない。
これが不思議なことに、揃えてしまえば、今度はそれ以外の格好でジェットに乗るのが恥ずかしくなってくるのだ。俺、格好悪く見えない? と。

「誰が見ているわけじゃない」と言いたいところだが、実はみんなコッソリまわりのことが気になっている。水辺では、服装を見れば、判断できることが多いのだ。ほとんど判ると言っても過言ではない。
だから、ある意味、何も知らなかったときのほうが幸せだったかもしれないですが……。

最初に、「どっちが幸せ?」と聞いておいて恐縮ですが、ジェットは長く続けられる楽しい趣味です。将来、仲間から、あのときの「お前のカッコウ」って言われない方が良いと思います。初めてジェットに連れて来たときの「コイツのカッコウ」ときたら…。みたいな武勇伝を聞かされるコトは未だに多いです。猛者になるのはヤメましょう。


【関連記事】
少年の日 A Boy's Day 
爆音の水上バイクが7台。ルーレット族? 緊急事態宣言発令中の4月30日 夕方のテレビニュースに……!!
コロナ時代のエンジェル
日本で初めて世界を獲ったフリースタイラー
ジェットスキーコラム 新型コロナウイルス対策  政府が言う「感染リスクがない運動」とは?
ジェットスキーコラム こんなご時世に言うのもなんですが……

ジェットスキー中古艇情報

月間アクセスランキング