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潜水艦と走った日 ジェットスキー(水上バイク) ツーリング

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今までに見たことがないトロトロの引き波の正体……

雨が降り出しそうな灰色の海に、突如現れた巨大な黒い塊

のどかな漁村沿い海を走っていると、白い煙の向こうに、突然、黒い物体が現れた。あれって、潜水艦!?
呉海上自衛隊基地が近くにあるのは知っていたが、まさかこんなところで潜水艦と遭遇するとは思わない。好奇心の趣くままに近づいていく。

潜水艦の煙突(ハッチ)の上が展望台のようになっており、そこから数名ほどの人が私をじっと見ている。そこには、国防の任を担っているという凛とした気概を感じた。

潜水艦と走った日

潜水艦は、水中航行可能な軍艦である。それが、今、私の真横を走っている。

最初は、蒸気なのか排気なのか分からない、白い湯気みたいなものしか見えなかった。その湯気が後ろのほうから、モワモワと上がっている。高い部分に操縦席のようなものが見えた。遠くから見たときは、土砂運搬船か何かだと思っていた。
それにしては、何かが決定的に変だった。

まず、エンジン音が聞こえない。すごく白い煙が立ち上っているのに、何も臭いがしない。
近づけば近づくほど、全てが異様だった。

真後ろから近づいているのに、引き波がない。正確にはあるのだが、普通の船とは全然違った。こんな引き波、今まで見たことがない。

近づくほど、全てが異様だった。理由は分からない。でも「何かが変!」だと思った。

吸い寄せられるように、潜水艦に近づいていった私

圧倒的に不気味だった。
「何かが変!」ということは分かるが、それが何か分からないから、余計に違和感がある。
ここだけ「外国? 知らない国?」。とにかく映画のワンシーンのようであった。

斜め横くらいから、「何か」がハッキリと「潜水艦」だと分かった。正体が分かったが、依然として頭の中は(????)な状態だ。

潜水艦から5mくらいしか離れていないのに、実感が湧かない。
よく見ると、煙突(ハッチ)の上が展望台のようになっており、その小さなデッキに3人ほど人が立っていて、私をジッと見ていた。もっと近寄って、「コンニチワ」と挨拶をすると、デッキの上から「コンニチワ」と挨拶を返してくれる。そして、「ナニゴト?」と聞かれた。
「水上バイクの撮影です!」と答えたら、笑顔で頷いてくれ「近づくと危ないから、離れてください」と、優しく言われたのだ。

その言葉で我に返った私は、仲間と取材艇を探した。かなり離れたところで、「こっちに来い!」と、大きなジェスチャーで私を呼んでいるのが見えた。

潜水艦を離れ、興奮して皆の待つ場所にアクセル全開で到着すると、「あんなに近寄ってはダメ!」「ずっと大声で呼んでいるのに、全くコッチを見ない!」「潜水艦の引き波は下(海中に向かって沈んでいく)に向かう。あんなに近づくと、ジェットごと沈んでしまう」「とにかくアブナイ!」と、矢継ぎ早に叱られた。

バックパックを背負って潜水艦に向かう私の姿は、自爆テロ以外の何ものでもなかったらしい

仲間たちは、だいぶ前からあれが「潜水艦」と気付いていた。それなのに、私がドンドン近づいていくので、本当にドキドキしたという。
客観的に見て、大きな防水リュックを背負い、ヘルメットを被った人物が、ジェットで近づいて行く姿は、まるで「自爆テロ」そのものだったと言われた。そう言われてみれば、潜水艦の自衛官たちは、眼を真ン丸にして近づいてくる私を見ていた。
そして、「撮影」と答えたときは、心なしか全員が安心したように見えた。

それなのに、反省をしなければならない当の私は「うわの空」だった。

何か「鉄の鯨」と走ったような気がした。思い出すと胸がワクワクして、頬が自然と緩んでくる。
潜水艦の艦橋にいた自衛官たちも、皆、とても感じが良かく、いい表情をしていた。

◆◆◆

この日、私が出会った潜水艦は、「ディーゼル・エレクトリック方式」といって、「ディーゼルエンジン」と「蓄電池」、「電動機兼発電機」という組み合わせで動いている。燃費がいいうえに、馬力はなんと約7,750馬力もあるという。
外装は、騒音軽減のため吸音タイルが貼られている。だから、船体の大きさに比べて航行中の音が異様に静かなのである。最初に私が感じた、ワケの分からない不気味さは、コレだったのだ。

潜航中は電力で駆動しているが、電力消耗による充電や艦内の換気のため、ときどき水の上に必要がある。浮上したら電力ではなく、ディーゼル機関で推進する。だから煙が出ていたのだ。私が見たモワモワした大量の湯気は、潜水艦の排気だった。

もし、また潜水艦に出合う機会に恵まれたら、今度は私の横か後ろに浮上してほしい、と、厚かましくも思ったのである
でも、とにかく“ソコ”に潜水艦はいたし、私は一緒に走ったのだ。

こんなに近くで走っている潜水艦を見る機会なんて、金輪際ないだろう。

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