世界を股にかけて活躍するメカニック・ちゅーた先生の「ジェットスキーワールドカップ」奮闘記です。前回は、レース会場にマシンを運ぶ最中にチームトラックが事故を起こして大変なこと……。なんとかマシンを修理して、レース当日に間に合いました。全4ヒートで行われるレースの前半2ヒートも収録。
今回は、レースの後半・MOTO 3のレースの様子です。いくら準備をしても、何があるか分からないのがレースです……。
レース前、ウォーミングアップにマックが出ていった。すると、ワーワーわめきながら帰ってくる。
「チュウタ! マシンがおかしい!! ドライブラインが滑っているぞ!」。
エンジンフードを開けると、煙が上がっている?!?!
エキゾーストカプラーでも外れたのかと思って確認するが、大丈夫??
よく見ると、ドライブシャフトのカプラー圧入結合部が、エンジン熱と振動で飛び出し滑っている。鉄同士が擦れあい、激しい熱と煙を吐き出していた。それをマックに伝えると、怒りながら彼はウェットスーツを脱ぎ始めた。
そこで、すぐにマックに言った。
「すぐに準備してスタートグリッドに行け! そして2ミニッツホールド(※2分間のスタートの延期)をかけろ!」と。
「ドライブラブシャフトを今から変えられるわけねぇじゃねえか! 今からエンジンを降ろすのか!」と、マック。
「エンジンなんか降ろさなくても変えられる。ポンプを抜くだけだ! それと、お前のメカニックをこちらに呼び戻せ!」。
納得したマックは、一目散にスタートグリットに向かった。
ポンプを急いで外し、ドライブシャフトを抜き、手で触れないほど熱くなったカップリングを乾いたタオルで巻き上げて取り出し、スペア艇のカップリングを抜き出してはめ込む。 そのころにマックのメカニックが帰ってきたので、ポンプを再度組み上げ直させる。
合間に、エンジンルームの確認をして、直ったころには全てのライダーがグリッドに並び、スタート前の準備中だった~。
何とかスタートに間に合い、レース開始!
またまた、インコースのトップはファージング。アウトコースのトップはマックだった。
後続にいるはずのセトゥラがいない??
何と、アウトコースでスタート後、チームメンバーのデヴンと衝突していた。マシンは、レスキューでけん引されている最中に船体前方が割れて、海中に沈んでしまった……。
デヴンは足首を複雑骨折していて、そのまま病院へ。セトゥラも足を激しく打ち付けているようだった。
昼休憩中に、海底に沈んでいたセトゥラのマシンをレスキューチームに引き上げてもらう。セトゥラのスペア艇は、搬送中の事故で壊れた艇のために、たくさんの部品が取られている。今さら戻すのは不可能だった。
#32のライダーには申し訳ないが、メインライダーのセトゥラのためにマシンを降りてもらうことになった。海底に沈んでいたマシンのポンプを抜き取って#32の艇に取り付け、細かいセットアップを変更してセトゥラ用にした。
結局、このレースは、そのままトップはファージング、2位がマックという順で終わった。
そして、最終のMOTO 4に向かうのだ~。
中田正樹(なかだ・まさき)
【Profile】
元JJSFフリースタイル全日本チャンピオン。クリス・マックルゲージのメカニックを務め、2004年、2006年と、ワールドファイナルでのマックルゲージの優勝に大きく貢献した。2007年までアメリカのマックレーシングに在籍。現在は、フリーのコンストラクターとして、日本を拠点に世界中を飛び回る日々を送っている。ニックネームは「ちゅうた」、「ちゅーやん」。
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