先日、いつものゲレンデで、仲間とスタンドアップに乗ってブイをまわっていた夕方、1台のジェットスキーが海から戻って来た。今の季節、真冬の平日にランナバウトで海に出ている人は少ない。「こんな日は誰も来ない」と高を括ってスロープを独占していた我々は、大慌てでスロープに置いていたビーチスタンドをどかし、ランナバウトを揚げるスペースを作った。
そのランナバウトは、夕日を背にやってきた。シルエットになった背後には、3~4本の釣り竿がキラキラと輝いている。スロープに近づいて来た姿を見て思わず微笑んでしまった。以前、シードゥFISH PROでイカを釣ってきた彼だった。
(そのときの記事「ジェットスキーでイカを釣る」)
「釣れましたか?」と聞く。大きなクーラーボックスと釣り竿が積まれたFISH PROが帰ってくると「釣れました?」と聞かずにはいられないのはどうしてだろうか。これが普通のランナバウトにロッドホルダーが付いていてもそんな質問しないのに……。やはり、FISH PROには「ホンモノ感」を感じるのかもしれない。
はにかみながら、クーラーボックスを開けて大きなタイやホウボウを見せてくれた。「思い通りの釣りができたけれど、手が冷たくてどうしようもないですね」と言うので、「今、FISH PROのオプションでグリップヒーターが販売されていますよ」と言うと、とても嬉しそうな顔をしてくれた。私の横でショップ店長が、「彼は、いつ出港しても必ず何か釣って帰ってくる」と感心していた。
ジェットスキーを洗っているところに行き「写真を撮らせてください」とお願いすると、ちょっと困ったような顔で「実はイカも釣ったんだけど、クーラーボックスのなかでスミがこぼれて……」と残念そうに言う。釣ったコウイカは「スミイカ」と言われるくらいスミを大量に吐く。ジップロックのような袋に入れてクーラーボックスのなかで隔離していたのに、袋の口が開いてしまい、せっかく釣ったタイやホウボウが真っ黒になったという。「とても今、写真を撮ってもらえない状態なんです……」と、残念そうにクーラーボックスを開けてくれた。彼の言う通り、真っ黒の水の中に赤いタイとホウボウがいた。
「タイを釣ったとき、本当にキレイな魚だなって思ったんですよ。キラキラしていて嬉しくなりました。スミで真っ黒になって残念……」と言いながら、水で軽くスミを洗い流してFISH PRO付属のクーラーボックスの蓋の上に置いてくれた。「このクーラーボックス、すごく便利で釣った魚の大きさがひと目で分かるんです」と、目盛りに合わせてタイを置いてくれる。
普通の定規と違って、FISH PROのクーラーボックスの目盛りは、右から左に向かって目盛りが伸びている。魚の尾を右端の0cmに合わせると、ちょうど頭の位置で大きさが分かるようになっているのだ。なるほどよく考えられていると、感心してしまった。
この日は、3本の竿を持って行き、タイもイカもホウボウも、餌木を使った手法で釣ってきたと教えてくれた。「コウイカが釣れたとき、餌木に乗る重量感がいいんですよ」と、嬉しそうに話してくれる。私の知り合いもそうだが、釣りが好きな人ほど「イカ釣り」を熱く語ってくれる気がする。しゃべりながらでも、とても手際よくジェットスキーと釣りの道具を洗っていき、全てが手馴れている。こういった所作のひとつひとつで、どれくらいジェットスキーに乗っているか分かると思った。
真冬の今、1人で海に出て、釣りたい魚を釣って戻ってくる。本当にFISH PROでのジェットライフを楽しんでいるのだと、私まで嬉しくなった。
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