ひと口に「オーバーホール」と言っても、ジェットの状態や、店によって金額はバラバラだ。今回は「SPLASH TOYS 鎌倉」が実際にお客さんに出した見積もりを紹介する。
正確な見積額を算出するためには、エンジンをバラして、内部を確認する。使えるパーツ、交換すべきパーツを全て把握し、新たに発注する部品の総額と、作業時間に対する工賃の予定額をお客様に提示する。
しかし、それはあくまで予測の「見積もり金額」であって、実際にかかる金額は作業を始めてみないと分からない。
例えるなら、医者がガンの手術で病巣を取り除いたら、その裏側にも転移していて、最初の予定とは違うオペが必要になるというようなものだ。
オーバーホールも同様で、作業を進めて行くうちに状況が変わるケースがある。
その際、「全てのパーツを取り換えなければならない」と判断を下すショップもあれば、「まだまだ使える」と判断をするショップもある。
また、工賃は作業時間から算出されるので、同じ作業でも、手慣れたショップならかかる時間は短い。
新艇の場合は、交換部品や作業時間の目安がメーカーから出されているので、それほど金額の差は出ない。
しかし、この1200GPのように販売から20年以上経過しているものは、ある意味、値段があってないようなものだ。
納得できるかどうかは、ショップとの信頼関係だけなのである。このあたりは、お客さんが自分に合うジェットショップを選ぶしかない。
見積書を作った。部品代だけで40万円もかかることが分かった。そこに工賃をプラスすると、60万円を超える金額になる。伝えると「作業を進めてください」と要望があったので、城戸店長はオーバーホール作業を開始したのだ。
ヤマハとカワサキ艇の場合、かなり古いパーツでも、メーカーが“頑張って”在庫を持ってくれている。だから、意外と絶版機種でも純正パーツが入手しやすいという。
その後、作業を進めると、新たに、取り換えなければならない部品が出てきた。何度か連絡をしているうちに、突然、「持ち主」が音信不通になった。全く連絡が取れなくなってしまったのだ。
仕方がないのでオーバーホールだけは完了させて待っていた。したし、引き取りに来ない。作業前に手付金として預かっていた20万円だけしかお金はもらえず、1200GPだけがショップに残ってしまった。
それ以降、ショップ裏手の屋外でジェットカバーをかけて、ずっと置きっぱなしにしていたところ、いつの間にかカバーの一部が風でめくれ上がっていた。気が付けば、写真のようにデッキに木が生えていたそうである。
カラーリングの変更に際し、岡田さんの要望は、「ゼッケン“100”を入れる」ことと、「ボディを青色にする」だけだった。そこから、城戸店長がデザインを考え、イラストを描き起こした。
仕上がりの色はもちろん、ステッカーの位置、レーシングヤマハのストロボラインまで、詳細に描かれている。城戸店長の頭の中に、明確なイメージがあった証拠である。
店長は、以前、SEA-DOO XPでスポーツクラスに参戦していた元レーサーである。当時のレーサーは、皆、強烈にアメリカのレースシーンに憧れていた。だから、あえて超メジャーだった「リバ・ヤマハのカラーリングとは変えたい」と思っていたという。
ベースの青色は、城戸店長とヒロキックスデザインの佐々木氏が、さまざまな青色を調色し、最終的にこの色に決定した。ヒロキックスデザインお得意の、細かなラメが入ったキャンディフレーク仕様だ。
「当時のリバ・ヤマハとは変えたい」と言っていたが、アメリカのレースシーンが頭の中に染みこんでいるのだろう。メーカーファクトリーチーム、レーシングヤマハでクリス・マックルゲージが乗っていたマシンと非常に似ていてとてもレーシーな仕上がりとなっている。
上写真の「レーシングヤマハ」のマシンは、世界中のジェットユーザーの憧れだった。ブルーの色は若干違うが、今回、城戸店長が描いたスケッチと非常に似ている。パッと見たら、このカラーリングを参考にしたと思ってしまうだろう。
今考えると、アメリカでジェットスポーツが最も光り輝いていた時代、それが1990年代だ。
バドワイザーが冠スポンサーになったり、全米中にテレビ中継され、選手には高額な賞金とスポンサーマネーが与えられた。マシンのカラーリングも、この時代が最高だったような気がする。
1997年のワールドファイナルを最後に、ヤマハからカワサキに移籍することを発表したクリス・マックルゲージ。着ていたヤマハのヘルメットやウェットスーツをその場で脱ぎ、観客席に投げ込んだ。彼の後ろに写っているのが、ランナバウト1200クラスに参戦していたYAMAHA 1200GPだ。
「ヤマハ、バイバイ」「カワサキ、コンニチワ」
アメリカのスーパースター、クリス・マックルゲージは、所属チームであるレーシングヤマハとして最後の戦いを終えた直後、身に着けていたヤマハのライディングギアを、全て観客席に投げ込んだ。そして、新たに来季からの契約を交わした、チームカワサキのピットシャツをその場で着たのだ。
1200GPに試乗させてもらったが、「SPLASH TOYS 鎌倉」によってオーバーホールされたエンジンは、とても爽やかに走る。
今回、23年ぶりに1200GPに試乗させてもらった。乗る前、水に浮いている船体を見て、小さくて驚いた。私の記憶の中の1200GPは、もっと大きかった気がする。
現代風カラーに生まれ変わった1200GP。その、カッコ良さに惚れ惚れする。それにしても、1200GPって、こんなに小さかったっけ? 記憶の中の1200GPは、もっと大きかったような……。
23年ぶりに1200GPというジェットに乗った。「SPLASH TOYS 鎌倉」によってオーバーホールされたエンジンは、とても爽やかに走る。さすがに現代のジェットと比べて、「いきなりドッカーン!」という加速は感じられないが、遅いとも思わない。「爽やかに走る」、とても楽しい時間だった。
今のオーナーが、他のランナバウトも持っているのに、この1200GPばかりに乗っているのも納得できる。
単純に、乗っていて、とても楽しいのだ。20年以上も前のマシンなのに、壊れる気配が微塵もない。走り続けながら、改めて「ノーマルってすごい」と感じていた。
ジェットにはいろいろな楽しみ方があるが、乗って楽しいのは、間違いなく「小さなジェット」である。
今から23年も前に発売された1200GPに乗って「ジェットの良さとは、何なのか?」と、今さらながら考えさせられた。
近年のランナバウトは、「純粋に走る喜び」というよりは、「モア・パワー」ばかりが先行してマシンの開発が行われてきたような気がする。
スタンドアップが良い例だ。「ジェットに乗る楽しさ」は、小さなマシンほど体感できる。それを、改めて感じさせてくれた今回の試乗だった。
メーターまわりの雰囲気も良い感じ。ヤル気にさせられるデザインだ。
〒248-0023
神奈川県鎌倉市極楽寺2-2
TEL. 0467-33-4496
営業時間/10:00~19:00
URL/https://www.navida.ne.jp/snavi/100240_1.html
プロジェットショップ「SPLASH TOYS 鎌倉」から歩いていける、素敵なビーチ。
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