6月16日(金)~18日(日)の3日間、宝達志水町・今浜地内(石川県・宝達志水町千里浜なぎさドライブウエイ)において、「ALL JAPAN JET SPORTS SERIES 2023 4st STAGE」と「AQUA BIKE 全日本選手権シリーズ(国土交通大臣杯)」の2カテゴリーのレースが開催された。
今年は特に安定しない天気が続くが、今大会期間中も土・日曜日ともに暴風雨。土曜日はイベントスケジュールをこなせたが、日曜日は安全に配慮しMOTO 1が終わった段階で、その後のレースの中止が告げられた。そのため、各クラスとも1ヒートのみの「一発勝負」となった。
ここでは、「Pro Ski GP」「Expert Ski GP」「A SKI SLTD」「A SKI-X SLTD」「Pro-Am Women Ski STK」のスキークラスカテゴリーを紹介する。
今大会の水面は、荒れ狂うラフウォーターである。
昔からレース関係者の中で盛んに言われているのが「荒れたらヒデ(倉橋 秀幸選手)」という言葉だ。ある種、格言のようにもなっている。
スキークラスの場合は特に、水面コンディションが悪いほど、マシンよりもライダーのスキルが勝敗を左右する。普通にアクセルを握れば、「前」ではなく「真上」に飛び上がるような水面では、マシンの速さがそれほどのアドバンテージにならないからだ。
言い方は悪いが、ラフウォーターのレースでは、マシンがそこまで速くなくても、選手に実力があれば結果を残す確率が高くなる。
前回大会で小原 聡将選手は、マシンをプロフォース2.0から「プロフォース3.0」に乗り換え、完全優勝を果たしている。今大会も、群を抜いて速くて強かった。
今大会、「Pro Ski GP」のエントリー数が多く、土曜日に予選が行われた。予選では、水面が荒れていたため、予定よりも競技時間を短縮したにもかかわらず、小原選手がほぼ全員を周回遅れにするほどの独走態勢であった。
「マシンとライダー」の両方が揃った小原選手に、今、国内で勝てる相手は“誰もいない”と本気で感じさせてくれる走りである。
小原選手は、日曜日の決勝でも終始トップを独走し、半数近い選手を周回遅れにしていた。ホワイトフラッグが振られた最後の1周も、余裕でトップを走っていた。
多分、最終ラップのゴール直前、最終コーナーで倉橋選手に抜かれる瞬間まで、小原選手は自分の勝利を確信していたはずだ。
ギャラリーも、レース序盤から終盤の最終ラップまで、小原選手の15メートルほど後方を走り、虎視眈々とトップを狙う倉橋選手が見えていたが、抜くことはなく、このままの順位でレースが終わると思っていた人が大半だろう。
しかし、編集部は「倉橋選手が、必ずどこかで仕掛けてくる」という予感があった。
倉橋選手は昔から「4強」と呼ばれる実力者である。そして、勝利への“嗅覚”は尋常ではない。
小原選手とは付かず離れずの距離感を保ち、“息を殺して”その時を待つ倉橋選手の姿は、不気味ですらあった。
そして、“その瞬間”がやって来たとき、迷いなく小原選手に襲い掛かり、抜き去っていった。
当の小原選手は「2位の倉橋選手に、全く気が付かなかった」と、レース終了後に語っている。
今回、これだけ水面が荒れると、マシンのトップスピードは関係なくなる。純粋にライダーのライディングスキルのみの勝負となるのだ。
トップスピードで小原選手に劣る倉橋選手には、互角の勝負ができるチャンスでもあった。
そして、仕掛けたのがラスト1周の最後のコーナーだったことが「倉橋 秀幸」というライダーの本当の強さの証でもある。
このレースで、小原選手が倉橋選手の存在に気が付いたのは、この「抜かれた瞬間」であった。倉橋選手を認識してからアクセルを開けても、スピードに乗った倉橋選手には追い付けない。
負いかけようと思ったときには、すでにチェッカーフラッグを受けていたのだ。
レース後、普段は温厚な小原選手のチーム監督が「あれは、トシのチョンボだった。ヒデに気づかないなんて……」と、少し怒っていたのが印象的であった。それほど、誰が見ても「小原 聡将」が勝つべきレースだったのだ。
そして、このMOTO 1のレース終了後に、荒天によるMOTO 2の中止が発表された。
MOTO 1で2位となった小原選手は、MOTO2で勝てば、「総合優勝」できると思っていたはずである。
自然が相手の競技だけに、「次がある」と思ってはいけない。勝てるときに、確実に勝利することが、重要だと思い知らされたレースである。
ギャラリーの立場からひと言言わせていただければ、もう一度、倉橋選手と小原選手のガチバトルを見たいと心から思ったのである。
今回、荒れた千里浜の海で、スゴイ戦いを見せてもらった。
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 倉橋 秀幸 |
2位 | 小原 聡将(SKU46H Racing) |
3位 | 松浦 章人( KHK レーシング) |
4位 | 海老原 祥吾(SKU46H Racing) |
5位 | 山本 陽平(Team YRF) |
6位 | 桜井 直樹(#1 POUND ONE) |
7位 | 平阪 勇助(KILLER Racing) |
8位 | 日高 瑞夫 |
9位 | 釘崎 勇真(Team Shindy) |
10位 | 斉藤 貴彦(UNLIMITED) |
11位 | 竹田 憲二 |
12位 | 服部 和生(UNLIMITED) |
13位 | 山中 祐太郎(ZERO) |
14位 | 片山 司(ZERO) |
15位 | 佐藤 颯志(#1 POUND ONE) |
16位 | 山﨑 友裕(超Ponkan Racing) |
「ココしかない場所で抜く」といった劇的な勝ち方をしたのに、ゴール後も平然としていた倉橋選手。彼にしてみれば、この状況下で勝つことは「普通」なのだろう。これが「プロフェッショナルの矜持」だと教えられたような気がした。
息を殺すかのように静かに小原選手に迫り、最後の最後に勝負を仕掛けた。
荒れた水面でも、万全のスタートを切った。
水面が荒れると、他艇との間隔が極めて近くなってしまう。
小原選手の愛娘(写真左)と、彼女を抱っこしているのがウィメンクラスで活躍中の蒲田 六花選手のお母さん。
ベテランで実力者の松浦章人選手がレースに復帰した。復帰戦が大荒れのレースとなったのは、松浦選手には良かったのかもしれない。実力の証明となるからだ。
写真の最前列左側が松浦 選手。名門「KHKレーシング」の仲間たちと。
他の選手が守りに入るなか、終始イケイケで攻めた走りを見せて勝利した陣川 雄大選手。
陣川選手と愛娘(写真左)と、藤江氏(右)。
マシンを抑えるホルダーも大変だった。
ミスをしても、アクセルを開け続ける果敢なライディングも素晴らしい。
陣川選手とチーム「RACING TEAM JSPT」。彼の義父と実母もレースに出ているレーサー一家。
ベテランで、ライディングスキルの高い塩田 智晴選手が2位。
常日ごろから練習を欠かさない塩田選手が、ラフウォーターの水面で上位入賞するのは当然の結果だ。
今シーズン、Expert Ski GPクラスで表彰台に上がり続けている志水 秀行選手。「攻めの走り」で、ギャラリーを沸かせてくれた。
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 陣川 雄大(RACING TEAM JSPT) |
2位 | 塩田 智晴(TEAM T5R) |
3位 | 志水 秀行(マリンメカニック) |
4位 | 増子 隆吉(UNLIMITED) |
5位 | 田中 エミ(55HEAVEN) |
6位 | 古川 薫(TEAM T5R) |
7位 | 上坂 和成(TEAM seaZracing) |
8位 | 金子 真珠(CLEVER W C T) |
9位 | 上田 真利奈(TEAM 武蔵) |
10位 | 増子 隆二(UNLIMITED) |
11位 | 高橋 肇(TEAM seaZracing) |
12位 | 平 晃一(F51) |
Expert Ski GP クラスのスタート。金子 真珠選手(写真手前)をフォーカスした。
ホルダーも、集中力が大切だ!
大波が来るとスタートできない。
このころになると、スターティンググリッドにいる全ての人々から、「早くスタートさせろ」という無言の圧力を感じる。
ようやくスタート!
このクラスは全12艇の戦いとなる。波のため、左右のマシンが近い。
「前」に行きたいのに「上」に飛ぶ。
総合4位の増子 隆吉選手。黒いイナズマ!
前回の猪苗代大会で勝った田中 エミ選手(ゼッケン55)は総合5位、琵琶湖大会で勝った上田 真理奈選手(ゼッケン17)は総合9位と苦戦した。
田中 エミ選手の応援に来ていた、2021年のPro SKI GPクラス全日本チャンピオン・佐々木 宏樹氏。
このクラスの優勝候補でもある佐藤 舞旺選手だが、今大会は大波の中を攻めまくって自爆し、予選落ちとなった。若者らしくて素敵である。
レース会場で軽快に3輪電気バイクに乗る佐藤選手。
この電気バイクは125ccの原動機付バイクと同じ扱い。元550クラスのチャンピオンだった京都の自転車屋さんが、プロモーションのため会場に持ち込んでいた。取材班も試乗したが、「これからは電気の時代」と思わせてくれる快適な原付バイクだった。
スタートで、容赦なく波に襲われる佐藤 和輔選手。
今大会は、走りに余裕が感じられた。
このクラスは18名がエントリーの激戦区。佐藤選手は予選から安定して速かった。
前回大会に続いて、今大会も2位となった戸賀瀬 満選手。
名門チーム伝統の「黒船」。走っているだけで威圧感があってカッコいい!
順位 | ライダー名(チーム名) |
---|---|
1位 | 佐藤 和輔(SKU46H Racing) |
2位 | 戸賀瀬 満(TEAM T5R) |
3位 | 三宅 貴之(Racing MOTOINE) |
4位 | 鳳山 世紀(5tec) |
5位 | 齋藤 恵利子(Team EAST JAPAN) |
6位 | 平 晃一(F51) |
7位 | 阿部 文樹(Team EAST JAPAN) |
8位 | 横山 亜土夢(AUTO SWAP.F.R) |
9位 | 中島 正晴(FORCE Racing) |
10位 | 杉森 守(Racing MOTOINE) |
11位 | 下園 光司(Racing MOTOINE) |
12位 | 楠本 正人 |
笑顔がステキな齋藤 恵利子選手(写真左)は総合5位。
齋藤選手のマシンを整備するライダー兼コンストラクターの藤井 亮平選手。
期待の若手ライダー・横山 亜土夢選手は総合8位。大波の洗礼を受けた。第4戦を終えた段階で、このクラスのポイントリーダーだ。
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