皆さま、20歳のころは何をされていましたか?
ひとつのことに夢中になり、夢に向かって突き進む若者を、眩しくも、応援したくなることはありませんか?
今回、取り上げるのは、ジェットスポーツに青春を捧げている若者の話です。
彼の名は「片野丈一郎」。現在、将来に向けて資格を取るために勉強している学生であり、ジェットレース界では「中部地区の若手のホープ」と期待されている20歳の選手である。片野選手は、ジェットスキーの免許が取れる16歳になったと同時に取得し、その年のシーズンからレースに参戦している生粋のレーサーだ。片野選手の父・宣之氏も、現役のレーサーで、いわゆる「父子鷹」である。
片野選手が所属する「Bell Factory」では、「自分が乗るよりも、ジョー(丈一郎選手)のほうが勝てる」という宣之選手の英断により、昨年より、片野選手をエースライダーに据えた。それを、宣之選手が全面的にバックアップする態勢へと変えたのである。
片野選手が参戦している「プロスポーツGPクラス」は、現在、世界のスーパースターたちがこぞって参戦し、シノギを削っている。片野選手曰く「戦うクラスは非常に大事。誰も相手がいないクラスで勝っても意味がない」と言う。
このクラスは、SEA-DOO HXやヤマハTZ、カワサキX-2が出場できる。今まで、このクラスは2ストローク艇が全盛だったが、4ストロークのスパークのエンジンに、ターボチャージャーを装着したマシンでパワーを上げてきた。しかし、マシンが速くなりすぎて規制がかかり、現在では、4サイクル1,500ccエンジンに関しては、スタンドアップ(スキークラス)と同じレギュレーションで戦うことになっている。
結果的にいえば、出場マシンのスピードの差は、ほぼなくなっている。ただ、エンジンの特性は、モロに違いが出るから面白いクラスである。
マシンの特性として、2サイクルエンジンは、軽いのでホールショットを取りやすい。ターボチャージャー艇は、トップスピードが最も速い。4サイクル艇は、トルクフルで万遍なく戦える。どれを選ぶかは選手次第だ。ちなみに片野選手のマシンは、SEA-DOO HXをベースに、スパークターボエンジンを搭載したものと、今回、新たに製作しているのが、カワサキ1,500cc・4サイクルエンジンを搭載したSEA-DOO HXである。マシンはともに、国内屈指のコンストラクター・藤江功一氏が製作している。
「プロスポーツGPクラス」は、現在、世界的にも盛り上がっており、アメリカのスーパースター、クリス・マックルゲージや、ダスティン・ファージングなどが参戦する、混戦必至のクラスである。そんななか、昨年、タイ国で行われたキングスカップに片野選手が出場し、名だたるライダーのなかで、プロスポーツGPクラス総合5位に入賞した。ただし、ここから順位を上げることが至難の業である。実力、名前ともに、一歩も引かぬ選手ばかりだ。
今年の6月9日、愛知県の蒲郡市で開催された「aquabike第3戦」で、会場中が注目したマシンがあった。それが、片野選手のカワサキ1,500ccエンジンが搭載されたSEA-DOO HXである。とにかく速い。心躍るエンジンサウンドを響かせながら疾走する姿は、レース会場でも話題となっていた。
レース終了後、疲労困憊している片野選手に「マシンどうですか?」と聞いたところ、「滅茶苦茶速いけど、とにかく疲れる」という答え。エンジンが重いからか、フロントが沈みすぎて水を噛み過ぎる。フラつくし、余計な波を全部拾ってしまうのだという。「でも、これなら僕が頑張ればいいだけの話」。乗りやすくても遅いマシンよりも、勝負の土俵に上がれる速いマシンのほうが嬉しいのだという。
今シーズン、片野選手は「海外レースに全精力を注ぐ」といい、「目指すは世界」と、日々、練習に励んでいる。
(第2回は、「疲れる」という話題のマシンと、彼のライバルとなるスーパースターたちの話である)
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シリーズ20歳の夏 第4回「片野丈一郎・最大の理解者」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第5回「HXに対するこだわり」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第6回「HX試乗体験記」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第7回「津ベース潜入取材」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第8回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その1」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第9回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その2」はコチラをクリック
シリーズ20歳の夏 第10回「世界へのチャレンジ・ベルギー国 参戦記・その3」はコチラをクリック
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